あとはおぼろ
 
 僕にとって“横浜”というと、まず思い浮かぶのが大岡川沿いの界隈(京急日ノ出町駅、黄金町駅、JR桜木町駅に掛けての一帯)だ。
 子供の頃にはよく『野毛山動物園』へ家族と一緒に訪れ、学生の頃には“イセザキモール”や“馬車道”の辺りを用も無いのにほっつき歩いた。川沿いの道は春になると見事な満開の桜並木となって、川面に散る花びらを眺めに来たりもした。薄汚れた暗い川面に浮かぶ花びら。その中で魚釣りをする日雇労働者風の初老の男たち。辻に立つ売春婦。メリーさん(※)との遭遇。通り交うデカい外車と闊歩するヤクザ衆。やがて僕は桜の花そっちのけで、周囲でうごめく人々に関心を奪われる。
 …いわゆる“横浜”のイメージって、たぶん「オシャレな街」とか「ロマンチックなスポット」という感じなんだろうけど、僕はどうしても“横浜=やさぐれた街”というイメージが真っ先に浮かんでしまう。
 もちろん、オシャレな街・横浜も魅力的だと思うし、カップルがデートスポットとして横浜を歩く気持ちもよ〜く分かる。だけど、この混沌とした大岡川周辺のパワーにはちょっとやそっとのことでは太刀打ちできないような気がする。
 風俗の世界に身を置く人たち(合法・非合法のどちらも)、外国人、ヤクザ、ホームレス、労務者、そして街で暮らす人々。それぞれがそれぞれの領域で、交わったり拒絶したりしながら生きているということ。
 人々が行き交う洒落たショッピングモールやほのぼのとした商店街から一歩裏道に入れば、そこにはピンク色の照明の中で客の手を引くタイ人の女性たちが居て、さらに一歩通りを越せば、会社帰りのサラリーマンたちが家路につこうとバスを待つ姿がある。とても不思議だとも思うし、ごく当たり前なのかも、とも思えるこんな光景に、僕はたまらなく惹かれる。
 赤線地帯の初音町、韓国料理と風俗店のひしめく福富町、曙町、居酒屋の宝庫・野毛、それらを繋ぐ伊勢佐木町。
 淡谷のり子が『別れのブルース』を、美空ひばりが『悲しき口笛』を、青江三奈が『伊勢佐木町ブルース』を、いしだあゆみが『ブルーライト・ヨコハマ』を…あ、そうか。僕が心を奪われているのは“昭和の陰の部分”なのかもしれない。
 …って、もう21世紀だし。そろそろ僕も平成の世の中にシフトしていかなくちゃいけないのかもねぇ。でも、“平成”ってどんな時代なんだろう?


 ※メリーさん…横浜・伊勢佐木町〜馬車道で戦後から“洋妾”として生きた女性。僕が約10年前に出くわしたときにはもうすでに70歳は超えていたと思う。とても小柄で、白髪に顔を白粉で塗り、全身白尽くめの衣装で『高島屋』の紙袋を持っていた。以前『横浜高島屋』で働いていた知り合いの女の子曰く、「いつも筆ペンを買いに来てたよ。お気に入りのメーカーの筆ペンがあって、それ以外は絶対使わないんだって」とのこと。映画『遥かな時代の階段を』で坂本スミ子がメリーさんを演じてますが、実際のメリーさんはもっと細身で目に力のあるお婆さんでした。
   

大岡川。黒く淀んだ川。
でもそこが良かったりする。
向こうに見えるのは“長者橋”。
今までに幾度となく通った橋。

  

奥のほうにランドマークタワーが見える。
この川沿いはホントに雑多な世界。
ソープランドなんかも軒を連ねてるし。
不審人物も多いし(^_^;)

  

『かもめ座』は結構古い映画館。
昔はポルノ映画もよく上映してたけど…
今は一般映画だけなのかな?
あ、僕は見ませんでしたよ、ポルノ映画は。

  

ボロボロの船が碇泊してる。
以前に比べると不法碇泊はだいぶ減ってるような…
夏場はときどき臭います、この川。
ちなみにタマちゃんはここには居ません。今のところ。

  

川と電車のガードに挟まれた長屋のような建物。
どこか“戦後”を思わせる佇まい。
ここではその戦後から脈々と続いている、
とある商売が…

  

全部が全部そうだというわけじゃないけど…
多くの“店”がそういう商売をしてる。
陽が暮れ出すとその正体が分かります。
今はひっそりとしてますけどね。

  

小百合・舞子・三好・金…
屋号なのかも分からないようなテントが並ぶ。
これも全部そういう商売を営む店。
間口の狭さが妙に生々しいなぁ。

  

英語の下にタイ語の表記。
ここで働く女性の多くは外国人(アジア系)。
かつてここでエイズ患者が出たことがあった。
売る側も買う側もハイリスクだったりする。

  

「みんなで協力して明るい商店街にしましょう」
…って、そりゃ無理だと思うなぁ(^_^;)
“飲食街”と書いてあるけど、
それが目的の人ってまず居ないのでは?

  


陽が暮れるとこうなります。
よくこういう所を“ピンク街”なんていうでしょ?
でも、ここはホントにピンクの照明で光ってる!
「チョットオニイサン、寄ッテッテヨ。オニイサン好キ〜」

  

これは黄金町にある映画館。
このカッコよさはある意味感動的。
内部もなかなか雰囲気たっぷり!
これはまさしく昭和のテイスト。

  

すぐそこに“みなとみらい21”がある。
とは思えないようなこの猥雑なリバーサイド。
これが僕の中の横浜のイメージ。
僕にとって横浜は昭和の街なのかも。

  

伊勢佐木町の“イセザキモール”。
黄金町寄りには韓国雑貨や古本屋などが目立つ。
桜木町寄りにはちょっと小洒落た店がある。
それぞれに微妙に雰囲気が違ってる。

  


灯りのともりはじめたモール。
ピアノの形をした青江三奈の歌碑もあります。
もちろん刻まれているのは『伊勢佐木町ブルース』。
ちなみに作詞は川内康範(ex月光仮面)です。

  


モールの中にある『マツザカヤ』の前。
“ゆず”はここから活動をスタートさせたんだよね。
デビュー前後は数百人が殺到したそうな。
『夏色』は僕も好きです。

  

有名な『野毛おでん』。
明治時代から営業している老舗中の老舗。
僕も一度だけ入ったことがあります。
「おでんがこんなに美味いなんて!」と驚嘆したなぁ。

  

これまた明治から続く牛鍋の老舗。
文明開化と共に創業した、といってもOKでしょう。
ここにも一度だけ入ったことがある。美味かった!
フクちゃんも食べてるし。

  

野毛には居酒屋がたくさん!
わりと入りやすい店が多いのがうれしい。
どこもカウンター中心の狭い店だけどね。
沖縄料理の店だってあるのです。

  

これは『都橋商店街』にある飲み屋街。
これまた狭い店がズラリと並んでます。
川沿いに建つ長屋のような細長いビルの2階。
常連じゃないととても入れなさそうな感じ。

  

階段を降りると、1階部分の商店街に出る。
これまた長屋風に様々な店が並ぶ。
この辺りも戦後の名残を感じさせる界隈。
なんともディープな商店街です。

  

その『都橋商店街』のビルを川から見る。
ゆるやかな曲線を描く飲み屋街の灯り。
扉の数だけ安らぎの空間と人生が詰まってる。
こんなに小さな世界の中にも。

   

もしも横浜を訪れる機会があったら、
ぜひ大岡川沿いも歩いてみてほしいなぁ。
歩けば歩くほど発見があるしね。
…ただし、お子様同伴はちょっとマズいかも。

  

おまけ、と言ってはなんですけども…
“みなとみらい21”地区もちょっとだけ。
『ランドマークタワー』ですね。
ちょっとバブリーな眺めとも思えますけど。

  

観覧車やらホテルやらをまとめて。
昔はこの辺りって造船所だったんだよねぇ。
今は見る影も無く変貌しちゃってるけど。
ここ10数年で…人間っていろんな意味でスゴイ!

  

この際、もひとつおまけ!の中華街。
雨が降って来ちゃった(すぐ止んだけど)。
たま〜に猛烈に食いたくなるね、中華料理って。
僕は広東料理が好きです。

  



色とりどりのネオンがひしめくメインストリート。
でも、夜は意外と空いてます。
昼間はお客さんでごった返してるけど。
中華街は昼の街なのか?

  

脇道にも隠れた(?)名店があります。
ちなみに僕のオススメは…
な〜んて偉そうに言えるほど店を知らないし(^_^;)
「2度と入りたくない店」だったら何軒かあるけど…

  

中華街なのに、アジア雑貨の店。
でもここは面白いものがあってイイ。
とくにインド系の雑貨はどれも珍妙。
確か曼荼羅とかも売ってたような…

  

はっきり言って中華街は店が多過ぎて、
かえって不便かもしれない。
どこの店がいいのか分からないしねぇ。
僕もさんざん迷った挙句…

  


で、結局入ったのは『鴻昌』。
この店は入りやすいし値段も安目だし結構美味い♪
とくに麺類には定評のある店です。
焼売(シュウマイ)とチャーシュー麺で1200円也。

   

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