色とりどり | |
いよいよ、6日間の沖縄〜八重山旅行も、今日で終わってしまう。 それにしても、今回の旅行は充実していたんだか、そうでもなかったんだか、どうもイマイチ分かりづらい気がする。 3日目の、“波照間島”と“『安里屋』の夜”は、かなり個人的には充実していたと思うのだが… それ以外の日は、ほとんどレンタカーに乗っているばかりだったような… でもまぁ、とにかくノンビリ出来ただけでも、やっぱり来てよかったなぁ…ということにしておこう。 最終日、とは言っても、昼の飛行機で帰ることになっているから、あまり遠出は出来ないし、あっちこっち欲張って動くことも出来ない。 となると、行き先はやっぱり―― 僕らはホテルをチェックアウトして、暗黙のうちに牧志の『公設市場』へと向かった。 もはや僕らの“市場詣で”は、欠かすことの出来ない恒例行事になっていると言っていい。土産物を買ったり、ちょっと買い食いをしたり、ただ眺めて歩くだけでもなかなか楽しい。 まだ店が開き切らない、朝の国際通りをノロノロとほっつき歩きながら、僕らは“市場本通り”を目指す。 |
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![]() 「厚さに自信あり!」と意気込まれても… 食いづらいだけって気もするんだが… 英語&インチ表示が沖縄っぽいですけどね。 |
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毎度のことながら、この『公設市場』周辺はとても人が多くて活気がある。 まだ午前10時前だと言うのにも関わらず、老若男女・観光客・地元の人一切合財入り乱れての盛況だ。 お客さんが多いということは、当然そこにある店も活気付いているということ。商店街はこうでなくちゃネ。 僕とKは、いつものようにキョロキョロとしながらアーケードを、市場へと進んで行った。 『公設市場』の中は、これまたいつものようにゴチャゴチャと人や商品が溢れていて、見ているだけでワクワクしてくる。 はじめてここに来たときは、おばちゃんたちの呼び込みに圧倒されて、ついたいして欲しくもない物を売りつけられたりしたもんだった。が、最近じゃあもうすっかりアンマー&オバァの「おにいさん、安くしとくから買ってって〜!」攻撃にも慣れて、スイ〜ッとかわすのも板に付いてきた感じ。 Kは、ある魚屋で、伊勢エビとワタリガニをお土産に買うことにしたようだった。Kと僕が店先に近づくと、さっそく獲物を狙うようにおばちゃんがササッと寄って来た。 「はい、何にしましょうか?この伊勢エビなんていいよ〜。活きがいいからねぇ」 「…じゃあ、この伊勢エビを3匹と…」 さらにおばちゃんは僕に向かって、「そちらのおにいさんは?何にするの〜?」と訊ねてきた。 僕は魚を買う気がサラサラなかったのだが、Kが伊勢エビの値段を訊きもしないで買っているのが少し気になったので、 「この伊勢エビって、一匹いくらなの?」と質問。 おばちゃんから返ってきた答え(詳しい値段を忘れてしまったんだけど)を聞いたところで、その値段が高いのか安いのか、普段伊勢エビを買うことなんて絶対にない僕には、正直言ってさっぱり分からなかったのだが、 「ふ〜ん…」と言って、ちょっと考えるような顔をして見せた。 僕が個人的に推測するに、こういう市場で地元の主婦が「今晩のおかずに、ちょっと伊勢エビを…」なんて言って買うことなど、まぁそうそうないはずだ。“ミーバイ”や“グルクン”ならいざ知らず、モノが伊勢エビとなると、そうそう気軽に買えるものじゃない。 となると、当然伊勢エビの販売ターゲットは観光客、ということになるのではないか? 僕はどうしても、「こういう市場は観光客に高い値段を吹っ掛けているのでは?」という猜疑心を持ってしまうので、「値切らなきゃ損だ!」という見解に行き着くことになってしまう。 そんな僕をKは、「あのなぁ、アジアの僻地の怪しい市場か何かと勘違いしてるんじゃないの?」と苦笑する。確かにKの言う通りかもしれない。でも、ついつい「ベンキョウしてや〜!」という、いつにない強気の姿勢が表出してしまうのだ。 素直に言い値で商品を購入しようとするKの横で、腕組みしながら考え込んでいると、おばちゃんが電卓を持ち出してきて、ポチポチポチッと計算した数字を僕らに提示してきた。 「これで、消費税はサービスするしぃ〜」 …本当に安くなっているのかどうか、よく分からなかったんだけど、おばちゃんを信じてうなずく僕。 「よかったな、K。安くしてくれたみたいだよ」とKに言い残して、僕はその場を離れた。だって、鼻っから買う気なんてなかったんだも〜ん。 僕が入り口付近のベンチで、煙草を吸いながら一休みしていると、Kがこっちに向かってきた。どうやら買い物が済んだようだ。 「…ニイサン、あくどいね。買う気もなかったくせに…」 「なに言ってんだよ。感謝しろよ、安く買えたのは俺様のおかげだぞ。ああいうのは“駆け引き”って言うの。これこそ“市場で買い物”の醍醐味じゃないか」 「…何か、ささきは市場に来ると性格が悪くなるような気がするんだけど…」 「気のせい気のせい。さ、用事が済んだら次に行こう!」 「……」 それから僕らは“市場本通り”から“市場中央通り”を経て“サンライズなは”に出た。途中、シーサー専門店みたいな店に入ってシーサーを買ったりしながら、さらに“平和通り”から“桜坂”のほうへ足を伸ばしてみた。 |
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![]() 2階に何があると言うのか? 一見するとただの倉庫のような… 何気に段ボールが落ちそうだし。 |
![]() 奥にある紅いセンベイ、よく見かける。 でも、食べたことない… 一体どんな味がするんだろう? |
![]() 沖縄特有の魚屋さんの光景。 左のアオブダイ、刺身しか食べたことないけど。 他の食べ方でもイケるのかなぁ? |
![]() アバサー、ひっくり返ってるし(^_^;) しかし、ホントに鮮やかな色。 本土の魚屋じゃまず見られない。 |
![]() 働いている女性が目立ちます。 もちろん、男もいるんだけどね… “市場”=“女性”って印象は確かに強い。 |
![]() 伊勢エビを購入中のK。 値切るのが苦手なヤツなのだ。 僕はついつい値切っちゃうんだけど。楽しいから。 |
![]() お馴染みのこの容器。 『クイクイ』はちょっと抵抗があったので、こちらに。 かなり甘かった。果汁100%じゃないのね。 |
![]() やっぱり市場にはオバァ&アンマー。 モヤシのヒゲを丁寧に取っていました。 これでチャンプルーの食感がだいぶ違うんだよね〜。 |
僕らは“桜坂”には、まず滅多に来ることはない。 以前、飲み屋を探してこの辺りをウロチョロしたことがあったが、どこの店も偉く間口が狭くて、赤〜い照明の中で崩れ落ちそうな化粧をしたおばさん(おばあちゃん?)が、アンニュイな雰囲気で通りを見ていたりして、何となく怖かった。 観光客がフラッと入れるような感じとは程遠い、何やら退廃的なムードたっぷり、ってな印象が残った。 でも、ここには『桜坂シネコン琉映』とかいう映画館もあるし、僕らが思うほど怪しいところではないのかもしれない。 僕らは公園を見つけた。 「こんなところに公園があったんだねぇ、知らなかったよ」 「へぇ〜、…滅多に来ないし、来たとしてもいつも夜だったしね。暗くて公園のことなんてぜんぜん気がつかなかったね」 はじめて遭遇したところには、とりあえず足を踏み入れてみる。これが僕らの鉄則である。と言うわけで、さっそく公園の中に入ってみることにした。 この公園、『希望ヶ丘公園』というらしい。“桜坂中通り”と“国際通り”に挟まれたところ、以前あった『国際ショッピングセンター』のちょうど裏手にあたる場所だ。 僕らが公園に入ると、いきなりホームレス風の男性5〜6人が円になって、泡盛を飲んでいた。 …果たして、彼らが本当にホームレスの人たちなのかどうかは定かではないが、こんな平日の午前中から、しかも公園で酒盛りをしているということは、少なくともサラリーマンではないだろう。 あまりジロジロと見るのは失礼だし、かと言ってあからさまに見て見ぬふりをするのも何だし…などと思いつつ、さりげな〜く彼らの横を通り過ぎた。僕らの余計な気遣いなどまったくお構いなく、5〜6人の酒盛り隊はとくに語り合うでもなく、静かに泡盛を飲んでいた。 「…やっぱり、あれも不景気の影響なのかな?昔はあんまり見掛けなかったよね、ああいう光景って…」 確かにそうだったような気がする。僕は今まで沖縄で、こういったホームレス状態になっている人を見たことがなかった。何しろ、本土に比べると“家族”とか“友人・知人”とか、とにかく横のつながりの強い土地柄だ。いくら不況だとは言っても、住むところもない、という状況にはならないんだろうなぁ…と漠然と思っていたんだけど… 「…あ、でも、沖縄の人とは限らないよね。余所からこっちに来てるってこともあり得るもんな」 僕は、札幌の大通り公園で、全国各地から来たホームレスが急増している、という話を思い出した。 札幌は、夏場でも比較的涼しいので食べ物が腐りにくく、食料不足に悩まされずに済むからいい。というような理由で、あっちこっちから人が流入しているらしい―― 「でもさ、今じゃ決して他人事じゃないよね、ああいう状況ってさぁ…」 「そうだよねぇ、“明日は我が身”ってねぇ…」 「……何だか、すごくヘビーな気分になってきちゃったねぇ…」 「……うん。もうやめよう。こんな話…」 公園の中には、さっきの酒盛り隊以外に人影がまったくない。大概、この手の都市型の公園にはいろんな人がいたりするもんなんだけど… 公園デビューを狙う子供連れの主婦も、営業の外回り中にサボってる会社員も、日向ぼっこするお年寄りも、唐突に写生してたりする人も、ぜ〜んぜんいない。 人気のない公園というのも、少しホッとする反面、何だか寂しい。 僕らは公園の中を一巡りして、そのまま“国際通り”のほうに出た。 国際通りの賑わいの中を歩きながら、「人生いろいろ…」などと、島倉千代子になってしまう僕。 でも、そうして国際通りをほっつき歩いているうちに、すっかり気持ちももとどおり。僕らは再びみやげ物屋をひやかしたりしながら、空港に向かう時間まで“国際通り散策”を堪能した。 |
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![]() “桜坂”方面から『希望ヶ丘公園』へ。 ホームレスの人も結構いました。 朝から泡盛飲んでました…酒盛り状態で。 |
![]() こんな公園があるなんて、初めて知った。 国際通りのすぐ裏なのに… まだ知らないことがいっぱいあるんだろうなぁ。 |
![]() 少し高台になっているので景色がバツグン。 那覇の街が見渡せます。 喧騒も遠退いて、ちょっとホッとしたり。 |
![]() 都会のエアポケット、といった感じ。 でも、公園で憩ってる人影はあまりない。 場所が場所だからかなぁ? |
![]() 昔、『国際ショッピングセンター』があった場所。 もう跡形もありません。 …一体、何が出来るんだろう? |
![]() 堂々と路上でくつろぐネコ。 僕らが近づいても落ち着いたもの。 「あっち行けよ、バカ」って顔はしてたけど。 |
那覇空港に着く。出発の時間までまだ少し余裕があったので、僕らはチェックインする前に、空港内をあっちこっち見て回った。 …しかし、こうして振り返ってみると、僕らの沖縄での行動というと、「レンタカーに乗ってる」か、「ウロチョロと徘徊する」か、そのどちらかにすべて集約することが出来る。果たしてこれでいいんだろうか―― 「何かこう…もっと目的とか、そういうの持ったほうがいいのかなぁ…」 「え?あったじゃん、今回の旅行には」 「…万国津梁館?」 「そう。つまんなかったけど」 「(オマエが言ってどーする!)そうですよねぇ…Kさんははっきりとした目的を持ってましたからねぇ…」 「波照間島にも行ったしさ」 …波照間島かぁ…何だか、ものすごく遠い昔の話のような気がする… 「『安里屋』の夜も、いろんな意味ですごかったしね」 「確かにね。…でも、6日間も居たのに、行ったところって数えるほどしかなかったような気がするんだけど…」 「そ、そう?」 「かと言って、死ぬほどノンビリした〜!っていう気もしないしさ…」 「う〜ん…そうかもしれない…何でだろうなぁ?」 「…アンタが原因だろ〜が!来る日も来る日もサメドライブしまくりやがって!」 結局、毎年これに毛が生えたような旅行しかしていないのだけど、それでも懲りずに同じようなことを繰り返す僕ら。 これは、沖縄の持つ魔力なのか、はたまた僕らがただのバカなだけなのか。――たぶん後者。 …まぁ、いいだろう。そろそろ飛行機の搭乗手続きをしようか… 手続きカウンターに移動し、係りの人にチケットを見せると、その人が一瞬「?」という表情を浮かべて、こう言った。 「あの〜、まだ出発時間までかなり時間がありますけど…」 えっ?何言ってんだこの係員。12時55分の飛行機だぞ。もう30分弱しか時間はないじゃないか…………って、あ!!! 「これ…“12時55分発”じゃなくて、“14時55分発”じゃんか!」 「ええ〜っ?!……ホントだ!」 僕らは思いっきり勘違いをしていた。一体どうしてそんな勘違いをしてしまったのかさっぱり分からなかったが、なぜか出発時間を2時間も見まちがっていたのだ。 …一気に全身の力が抜けるのが、はっきりと感じ取れた。呆気に取られポカ〜ンとした係員の前で、僕らは無意味な薄ら笑いを浮かべるばかりだった。 |
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