鴎外・カチューシャ・唖蝉坊
 

 上野という街は、東京にある主要な他の街とちょっと違う独特の空気に包まれた場所だと、僕は思う。たぶんそれは、この街が戦後のドヤ街、或いは闇市の匂いを残しているせいだろう(実際に今もドヤ街として機能しているのは、上野から少し離れた“山谷”と呼ばれる地域なんだけど)。上野駅を広小路改札口から出ると、“アメ横”“聚楽”“上野のれん街”などといった、昔とさして変わらない趣きを残した風景が目に飛び込んで来て、そのまま『上野公園』や“不忍池”の方向に進んで行けば、労務者風の人々、ホームレスの人々、階段で似顔絵を売る人、などがそれぞれの人生を背負(しょ)って座り込んでいる。古本屋、ピンク映画館、閑散としたデパート、くすんだ色の雑居ビル…時折擦れ違う今風な若者の姿がまったく不釣合いに見えてしまうほどに、上野の街はどこか時代から取り残されたような印象。

 …と、まぁ上野に関する個人的な思い入れはまた別の機会にでも。今回は“不忍池”の池畔に在る『台東区立 下町風俗資料館』のことを少しばかり。
 この資料館ではその名のとおり、明治〜大正時代の下町の暮らしにちなんだ資料が展示されている。まぁ、厳密に言うと中には「これって昭和の物なのでは…?」というような資料もあったりするのだが、とにかく館内に漂っているのは「懐かしい」というイメージの具現。当時の街並みや店舗などを再現したコーナーなども在って、思わず「なかなかやるじゃん、台東区!」と感心してしまう。そんな展示品の多くは地元の人達から寄贈された物のようで、下町に暮らす人々の地元への愛情を感じさせる。
 ちなみに入館料は大人・参百圓也。この類の施設ってちょっと「あざとい」ような気もするけど、一旦足を踏み入れてしまえば、有無を言わせぬ風情を体感できちゃうのも確か。思う壺ではあるけれど。
 資料館を出て、上野の街を再び歩き出すと、骨董市の露店群がさながら見世物小屋に見えてきて…ってのには、かなり無理があるかな(^_^;)
 

『上野公園』。正式名称『上野恩賜公園』。
動物園をはじめ、いろんな施設が詰まってます。
ここだけで一日は時間が潰せそうです。

  

“不忍池”の邉では骨董市が開催中。
こういうのって見てるだけで楽しいよねぇ。
…買うのはちょっと勇気が要るけど。

  


“不忍池”。葦が群生しております。
奥に見えるのは“弁天堂”。
鴨などの水鳥の姿も多く見られます。

  

この日は初夏を思わせる陽気。
遊歩道を歩く人の姿もどこか足取り軽く。
上野は楽しいよ〜。浅草も谷根千も近いしね。

    

『下町風俗資料館』1階。
大正時代の下町を再現した展示室。
なかなか趣き有り。

  


台東区立の資料館、かなり凝ってます。
さすが台東区!粋だねぇ。
洗濯物にも憎い演出。

  


井戸、たらい、洗濯板、如雨露。
井戸はともかく、他の物は僕の家にもあったなぁ。
子供の頃はたらいで行水したりしてね。

 

大正〜昭和初期頃の下町の写真パネル。
こういう町並みが歴史資料になっていくと言うのは…
町は変わっていくものなんだよね。

  

駄菓子屋さん。
この手の施設には必ず在るコーナー。
有無を言わさず懐古な気分に誘う強力な磁場。

  

僕の世代だとこういうのはオンタイムじゃないかも。
かと言って大正時代の商品でも無いし…
ちょっと怪しい時代考証(^_^;)

  


“銅壷(どうこ)屋”の職人の家、だそうです。
銅壷ってのは大まかに言うと銅器のこと。
写真手前にあるヤカンを乗せてある火鉢も銅壷。

  

お稲荷さんも在ります。
商売繁盛にはやっぱりお稲荷さん。
奈良時代から信仰されてきたみたいです。

  

こちらは“鼻緒屋”さん。
下駄屋じゃなくて鼻緒屋ってのが渋い。
今だったら差し詰め“靴紐屋”って感じ?

  

こちらは作業場。
奥に鼻緒がたくさんぶら下がってます。
鼻緒だって立派なファッションアイテム!

  


で、こっちは帳場。
招き猫…目立つなぁ。
そろばん弾いて明朗会計。

  

当時の職人・商人いろいろ。
“オイッチニの薬屋”ってのが気になる…
アコーディオンで歌いながら行商したらしい…

  

2階には資料や小物、生活用品などが展示。
これが結構面白い。
懐かしいアイテムもたくさん有ってね。

   

例えば、これはご覧のとおりミシンですね。
実はこういうの僕の家にも有りました。
…俺の家も資料館になれる?!

   

実際に使用されていた銭湯の番台。
座ってもOKってのが嬉しいよねぇ。
世の男性諸氏には憧れた方もおいででしょう(^_^;)

  

踏み台、そして体重計。
今じゃデジタル表示だからね、体重計。
ご丁寧に体脂肪率まで分かっちゃうし。

  

おっ、木造家屋。
ドアの飾り窓が洒落てるじゃないか。
牛乳受けも何気にイイ味出してます。

   

内部はこんな感じです。
う〜む、かなりレトロなテイストです。
細部を見てみますと…

  

あ、あの魔法瓶!(棚の右端)
あの炊飯器!有った有った、家にも!
ちなみに蛇口から水は出ませんでした。

  

足踏み式のミシン。これは今でも我が家に有る…
使ってはいないけどね。
脚付きテレビってのもすでに絶滅してそうな…

  


今、この手のラジオって密かに復活してるみたい。
ときどき通販とかで見掛けますし。
デザインとしてはちょっと洒落てると思う。

  

空襲に備えた演習の告知。
まるで映画のポスターのよう。
しかし、命に関わるヘビーな演習だよね、実際は。

  

クラブ美身クリーム…微妙な…
いつ頃の商品なんだろう?
「アレ止めに一番よくきく」みたいですけども。

    

大正〜昭和初期のモダンアートなポスター。
1927年の杉浦非水の作品です。
広告を美術の域に押し上げた先駆者。

  

カフェ下町。ベタなネーミングではある。
ドアの色硝子がかなりイイ感じです。
中はどんなかといいますと…

  


こんなふうになってます。
このときは修学旅行生も居て賑やか。
未知の遊具で遊んでいました。

  

これがその遊具。“国旗合わせ”。
ルールは極めてシンプル(でも説明は省略)。
初めて見た、こんなゲーム。

   


蓄音機から流れるのは大衆歌謡?ジャズ?
…って、実際には展示してあるだけです。
カフェでは洋酒も飲めるみたいですね。

  

『浅草凌雲閣』、通称“十二階”。
関東大震災で崩壊した伝説の高層建築。
『帝都物語』や乱歩作品にも登場。

  


懐かしの玩具コーナー。
実際に手に取って遊べます。
修学旅行生がお手玉をする光景。

  


“すりこぎトンボ”。あったねぇ、こういうの。
擦った振動で回して飛ばすヤツ。
ギコギコギコギコいわせてねぇ。

  

スマートボール、もしくはパチンコの原点。
ビー玉突付いて点数を競うゲーム。
スマートボールは浅草では今も現役。

  

輪投げ、剣玉、でんでん太鼓、万華鏡…
不思議と温かみのある玩具の数々。
僕は剣玉は苦手です。ムチャクチャ下手っぴ。

  

こういう人形って、何だか怖い。
念とかが篭ってそうで…
毛が伸びてくるとか…夜になると歩き出すとか…

  

「懐かしいわねぇ〜」と歓声を上げるお客さんたち。
「お手玉、昔は4つぐらい平気で出来たけど…」
「今は3つだって怪しいわよねぇ」

      

資料館から見下ろした不忍池。
上野はなかなか面白い街。
…というわけで、次ページへ続く。

   

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