仏の顔も


 早朝、例によって美崎町界隈をほっつき歩くことにする。昨晩(というか4時間前)の深酒が祟って、気分はすこぶる悪かったのだが、とりあえずホテルの外に出てみると、街はまだ仄暗く、夜の空気を引き摺っていた。
 何となく離島桟橋の方へ向かう。途中、美崎町の歓楽街には朝帰りの酔っ払いやお勤め帰りの飲食店関係者と思しき方達の姿がぽつぽつと見え、祭の後っぽい寂寥感と穏やかな雰囲気が入り混じった独特の雰囲気が漂っていて、何となく「いつもの美崎町の早朝」という感じがして少し嬉しくなる。
 離島桟橋には人っ子ひとり居らず、聞こえてくるのは護岸に寄せる波の「パチャッ、パチャッ」という音と、その波に揺られて船が時折立てる「ガコン」とか「キュッ」とかいう音ぐらい。この朝は風もほとんど無くて、僕はしばらく朝焼けの空と海をぼんやりと眺めた。
 そうしているうちにだいぶ空も明るくなってきたので、桟橋を離れて市街地に戻る。再び美崎町の路地を幾つかぶらぶら徘徊しながらホテルに帰ってみると、Kもすでに起きていて、映りの悪いテレビを見ていた。
 「お、また朝の散歩?」とK。
 「うん、まあね。桟橋に行っただけだけど。それより、今日はあんまりのんびりしていられないんだよね。8時台の飛行機に乗らなきゃいけないから」
 「どうする?もう空港に行っちゃおうか。そろそろ7時になるし」
 「そうだね、空港でコーヒーでも飲もうか」
 というわけで、僕らはすぐにホテルをチェックアウトし、通りでタクシーを拾って石垣空港に移動する。
 
 空港で搭乗手続きを済ませ、空港内のレストラン『ゆうな』でモーニングセットを注文し、出発時間までボ〜ッとする。二日酔いでは無かったけれど、お互いにまだ若干酒気帯びの状態で、どうも調子が出ない。もう昔みたいに暴飲は出来ないお年頃なんだろうなぁ…などと薄っすら年寄りチックな感慨に耽りながら、どうでもイイ話をダラダラしているうちに、出発の時刻。石垣島を後にして、那覇へ向かう。
 


早朝はハイビスカスもまだ半開き。
この花、寿命が一日だってご存知でしたか?
僕はワリと最近知りました(^_^;)

 

そして、路上に横たわる酔っ払い…
まぁ、風邪をひく心配は無さそうですけどね。
ここ美崎町ではワリとよく見かける光景。

 

まだ明け切らぬ離島桟橋付近。
人っ子ひとり歩いてません。
何だか「街を独り占め」気分。

 

石垣港も静けさに包まれています。
波の音と、船が護岸に当たる音しか聞こえない。
時間が止まったみたいです。

 

石垣港は、近々様変わりするかもしれない。
とりあえず、今の姿を少しでも残しておこう。
港の写真ばかり20枚も撮っちゃったりして…

 

せめて離島桟橋はこのまま残して欲しいけどね。
いろんな思い出がこの桟橋から始まったわけだし。
…飽くまでも個人的な事情ではありますが。

 


730交差点もまだ交通量はほとんど無し。
タクシーの運ちゃんに不審な目で見られてしまった。
…こんな時間にウロウロしてるヤツも珍しかろう。

 

美崎町の飲屋街。
ここにも路上に転がるビーチャー(酔っ払い)が居た。
今朝は路上ビーチャー率が結構高い。

 

それにしても雲ひとつない青空です。
今回の旅行はまぁまぁ天気に恵まれていて良かった。
おかげでかなり日焼けしましたが。

 


もう日焼けして喜んでるような歳じゃ無いんだけどなぁ。
肌がカサカサしちゃうし、後が大変で…
…ってこれは石垣市役所の写真ですね。

 

美崎町はやっぱり夜の街だと思う。
昼間のこの街はどこか寂しい佇まい。
この路地でも路上ビーチャーと遭遇!

 


市立図書館の赤瓦屋根が朝日に映える。
日が昇るにつれて、気温もグングン上昇。
朝っぱらからかなり暑いぞ。

 

僕らが泊まった『ホテル南西』。
石垣唯一の映画館の上に在ります。
『アイロボット』と『ヴァン・ヘルシング』が上映中。

  

ホテル前の歩道のタイル絵。
他にもいろんな絵柄のタイルが埋め込まれてました。
さすがに具志堅用高や夏川りみの絵は無かったけど。

 

石垣島を後にして、那覇空港へ移動します。
那覇に着いたら那覇市内をうろつく予定。
…ちょっとイヤ〜な予感がします…

 

 9時ちょっと過ぎに那覇空港に到着し、まずは“ゆいレール”に乗ることにした。今日の15時には空港に戻って来なくてはならないので、あまり遠出は出来ない。この短時間でレンタカーを借りるのも何だか面倒だし、酒気帯び運転で罰せられてしまう可能性も否定できないので、今日はゆいレール沿線をウロウロするプランをチョイスしよう、と。
 ゆいレールの一日乗車券を購入し、「ゆいレールで“ぶらり途中下車の旅”をしよう!」と軽く意気込んでみた僕らであったが、この時点で僕の胸中には或る不安が…
 ま、あまり気にせずとにかく出発。那覇空港駅で乗車し、赤嶺駅を通過し、小禄駅に差し掛かったときにKが「降りてみようか」というので、僕もそれに従った。
 小禄駅は『ジャスコ小禄店』とコンコースで繋がっていて、駅前広場めいた空間も在り、何となく“駅前っぽい雰囲気”がある。僕とKの共通の印象としては、「何処と無く福生駅の雰囲気に似てる!」という、何とも多摩地区ローカルなものだった。分かり難い例でごめんなさい。
 『ジャスコ小禄店』の店内に入ってみると、1階にはテナントの飲食店などが並んでいて、観光客向け(?)の沖縄土産コーナーも設けられていた。2階・3階は所謂普通の大型スーパーといった趣き。まだ開店直後だったせいか、お客の姿は疎(まば)らで、売場の準備が終わっていない店も見られた。
 ジャスコを出て、駅前周辺をうろついてみる。ジャスコを取り囲む界隈は、舗道も綺麗に整備されていて、真新しい洒落た感じの店も幾つか在った。エリアそのものは狭いのだが、ある意味「ゆいレールによって生まれた街」的な匂いはかなり強い(いや、小禄のジャスコはゆいレール開通前から在ったから、実は昔から開発されてる地域なのかもしれない。この辺りはあまり自信ない…)。
 このジャスコのすぐ近くに、『小禄金城公園』が在った。何となく公園内に入ってみる。この公園、それほど広くは無さそうだが、園内はきちんと整備されていて、なかなか快適そう。…だけど、この日は朝からガンガンに陽が照り付けていて、とにかく暑かった。公園管理事務所の脇にジュースの自動販売機があったので、僕らはそこで缶ジュースを買い、ベンチに腰掛けて一服。そして、小さな丘に向かって伸びる遊歩道を進んで行くと、雑木林の中に“金城の御嶽”という拝所が。
 御嶽は周囲を木に囲まれていて薄暗く、木立の隙間から陽光がちょうど拝所の中央部分に向かって真っ直ぐに差し込んでいて、何だかとても荘厳な空気に満ちていた。僕もKもその空気に圧倒されて、しばらく拝所を少し離れた場所からジッと見つめる。
 「…何かスゴイね。近寄り難い雰囲気だね…」 「そうだね…」
 ――そんな小禄金城公園を退出し、小禄駅に引き返し、再びゆいレールに乗車する。
 

ゆいレールの一日乗車券。
那覇の中心部をウロチョロしたい人にはオススメかな?
下手すると高くついちゃう可能性もあるけど。

 


ゆいレール・那覇空港駅のステンドグラス。
エイサー、ハーリー、爬龍船、ハイビスカス。
躍動感が漲っておりますね。

 

各駅の車内アナウンス&発車チャイムを収録したCD。
駅の売店で見つけて、思わず購入してしまいました。
『ちゅらSun』というタイトルも意味不明でイイ感じです。

 

小禄駅で下車してみました。
駅と『ジャスコ那覇店』がコンコースで直結されてます。
なかなか便利ですよね。

 

この小禄駅周辺が一番“駅前”っぽいかも。
何処と無く福生駅東口にも似た雰囲気が…
ローカルな例えでホントにごめんなさい(^_^;)

 

駅の近くにはA&Wやホテルもあるし、
洒落た飲食店も結構見かけました。
街路も整備されてて妙に綺麗だし。

 

駅から徒歩5分ちょっとのところに在る公園。
午前中だったせいか、人影は皆無。
とりあえず、園内に入ってみると…

 

中途半端に張り巡らされた水路(?)。
心なしか水が淀んでいるような…
でも、全体的にはきちんと整備されてましたよ。

 

遊歩道が丘の裏側に伸びています。
猛暑の中を歩いていたので、軽く眩暈が…
引き返そうかと思っていたそのとき――

  


御嶽と遭遇。“金城の御嶽”って彫ってある。
奥の方を見てみると…


 

拝所のちょうど中央に陽光が当たって、もの凄い崇高な空気が…
神聖な趣きに溢れていて、僕もKも近寄れませんでした。
何となく「怖畏」という言葉が頭に浮かびました。

 

 小禄駅の隣の駅・奥武山公園駅で下車してみよう。この駅は文字通り『奥武山運動公園』に隣接していて、公園には様々なスポーツに興じる人々が居て、なかなか活気があった。この糞暑い最中にジョギングをしている人まで居て、「それってかえって健康に悪いのでは…?」と訝しく思うこともあったりしたけど。
 草野球の試合、弓道の試合、テニスを楽しむ人…う〜む、なんて健康的な空間なんだ。普段ちっとも運動をしない僕のような人間にとって、この健康的な感じは罪悪感と焦燥感と隔絶感を激しく喚起させて、正直言ってあまり居心地が宜しく無いかも…なにしろ、こうして公園をウロウロしてるだけで、滝のような汗を流してしまう体たらくの僕ですのでね。不健康極まりない感じ。
 そんな運動不足の僕とKの体力の消耗を神様が気遣ってくれたのか、上空には大きな雲が掛かり陽射しが遮られ、心持ち涼しくなった。ほんの少しだけ余裕が出て来た僕らは、このまま隣り駅の壷川駅まで歩いて移動することにした(と言っても、距離はメチャクチャ短いんですけど)。
 途中、『沖宮(おきのぐう)』というこじんまりとした神社に立ち寄ったりしながら、壷川駅へ。ここでまたゆいレールに乗り込み、首里方面に進む。…首里方面…そう、首里である。Kさんがとくに意味も無く何度も繰り返し通うあの『首里城公園』の在る、首里である。ここ数年Kが足繁く通う場所・首里城。何が彼をそこまで首里城詣に駆り立てるのか。今年もKは首里城に行くかもしれない。僕がどんなに「もう行かなくてもイイんじゃないか?」と忠告しようとも、それを無視して城を目指すK。ああ、何だか嫌な予感。いいや、これはただの予感ではなく、確信めいた予測。
 …案の定、Kは県庁前駅も牧志駅も通過し、ひたすらに終点・首里駅を目標にしているかのようだ。「“ぶらり途中下車の旅”をしよう!」などと言っていたのも束の間、早くもKさんの“孤高のマンネリスト”の真骨頂を見る思い…怖いけど、Kに確かめてみようか。
 「Kさん、ひょっとしてまた首里城に行くつもりなのか?」
 「えっ!?…何で分かったの?」
 「(やっぱり…)分からないほうがおかしいと思うよ、キミの過去の行動パターンを知っていれば…べつに首里城公園には何の恨みも無いけれど、そろそろ首里城を卒業してみても宜しいんじゃないですか?」
 「だって、他に行くところが無いじゃん」
 去年も確かこんな遣り取りを交わした記憶が…
 「………もうイイよ。Kの好きなようにすれば?」
 僕は抵抗することも虚しくなり(これも毎年のことですが)、大きく溜息を吐く。もし今回も首里城に行くことになれば、これで5回目(僕は6回目)の首里城訪問となる。牧志市場やコザの街は別として、辺戸岬・美浜・おきなわワールド(旧名・琉球王国村)・道の駅許田…これらの訪問回数記録を塗り替え、一躍TOPに躍り出ることになる。確かに沖縄本島屈指の観光スポットであるのは間違い無いのだが、12回の沖縄旅行の約半分は必ず首里城へ行っている計算。これって世間一般の基準から言っても、どんなもんなんだろうか?
 

続いて、奥武山公園駅で下車。
駅舎から見えるこの看板。
『金城畜産』の看板ですね。

 

“奥武山運動公園”はかなりデカい。広い。
ここをちゃんと歩くのは7年前の“産業まつり”以来。
あのときは夜だったので、内部がよく解らなかったが。

 

弓道場では高校生の大会(?)が行なわれていた。
競技が競技だけに、ギャラリーも静かに観戦中。
ときどき拍手が起こったりする程度。

 

弓道ってなんかカッコイイよね。
僕も一時期憧れました。
が、弓道部がある学校って意外と少ないよね?

 

運動公園内に在る“沖宮(おきのぐう)”。
ここは“琉球七宮八社”のひとつなんだとか。
間に沖縄戦を挟んで、転々と遷座した経歴あり。

 

絵馬はほとんどが合格祈願。ここって学業の神なの?
天満宮(普天満宮は無関係)並みに合格祈願一色です。
菅原道真に願いは届くのでしょうか?

 

スタジアムの照明塔と空。
雲が形を変えながらゆっくりと動いて行きます。
何となく“夏らしい”空の佇まい。

 


壷川駅前に架かる“北明治橋”。
橋の袂に「奥武山、小島から現在まで」という解説板が。
奥武山って、昔は浮島だったんだって。勉強になるなぁ。

  

その橋の上から那覇港方面を見る。
国場川ってお世辞にも綺麗とは言えない川だよね。
場所によっては悪臭も…(^_^;)

  

壷川駅でまたまたゆいレールに乗り込みます。
この後、Kさんと僕の大喧嘩(?)が待っているなんて、
お釈迦様でも気が付くめぇ。

 

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