Lonely Butterfly


 僕らが(と言うよりKさんが)『みやこパラダイス』にやって来たのは、数日前に新聞で「『みやこパラダイス』壊滅状態、蝶々園の蝶が居なくなった」という記事を読んだからだ。そもそも僕はこういう植物園の類にはあまり興味が無いのだが、それに輪を掛けてKはこの手の施設に関心が無い人物である。その彼が「『みやこパラダイス』に行こう」と言い出した理由、それは、彼お得意の“とりあえず話題になっている場所には行ってみる”という、良く言えばトピックに敏感な、平たく言えばミーハーな動機に拠るものだった。

 パラダイスの駐車場に着く。駐車場はガラガラだった。って言うか、ひょっとするとここに停められた車のほとんどは従業員或いは関係者の車では…?と思いつつ、僕らはパラダイス内に入る。
 パラダイスの中は、とにかく静かだった。お客はひとりも居らず、僕らの貸し切り状態。そして、肝心の南国の植物たちはと言うと…ほとんど壊滅状態と言って良い状況だった。恐らく従業員の皆さんで台風後の応急処置はしているのだろうが、「とりあえず散らかったものだけは片付けておきました」というような、かなり為すが侭な状態。温室は剥き出しの骨組みにビニールやネットの残骸が纏わり付いているだけ、遊歩道の脇には元々そこに何が植えられていたのかも分からないプランターが無造作に置かれ、木々は葉も消え枝や幹が圧し折れているものも在る。何となく「禿山(はげやま)」という言葉が思い浮かんでくるような、そんな寂寥感&荒涼感溢れるパラダイスと化していて、完全復旧には程遠い印象だった。
 「ところで、例の蝶々園ってのは、一体どれなんだろう?」Kはそれがとても気になる様子だった。
 「…さあねぇ」と答える僕は、正直言ってあまりそのことに関心が無い(むしろ蝶々は苦手な生き物のひとつだし)。唯一気になることと言えば、果たして『みやこパラダイス』を飛び立った(或いは吹き飛ばされた?)蝶たちは、何処へ行ってしまったのか、ということぐらいか。…ひょっとして全滅とか?それとも宮古島周辺でのんびり生きているのか?もっと遠い別の場所に行ってしまったのか?
 空は曇天、風は冷たく、植物園は荒れ放題。しばらく歩いていると、だんだん寂しい気分になってくる。僕らは園内をほとんど無言のままぐるりと一巡りして、そのままパラダイスから立ち去る。
 「…そろそろ空港に行こうか」とKさんが言う。「え?もう?…まぁ、べつにイイですけど…」
 Kの心は、もうすでに宮古から沖縄本島へと移ってしまっているようである。何て言うか、こういうところが結構ドライな性質(たち)のKさん。興味を失ってしまえば、サクッと別離。何もそんなに急いで本島に戻らんでも…と思う僕の戸惑いなどまったく気にも留めず、Kはレンタカーを返却し、すぐさま宮古空港に向かう。
 早めに空港に着いたは良いが、次の便の出発時間まで一時間以上待たされるハメに。
 「何だよぉ!てっきり次の飛行機の出発時間に合わせて空港まで来たんだと思ってたのに!こんなだったら、どっかで飯でも食ってから来ても良かったじゃないか!」
 「う〜ん…じゃあ、とりあえず、空港の中の食堂か何かで飯でも食う?」
 「いや、だからそういうことじゃ無いんだけど…もうイイや、べつに…」
 結局、空港内の喫茶店で飛行機の搭乗時間までぼんやりとヒマ潰しをすることに。ところで、この喫茶店、ものスゴイ勢いで冷房が利き捲っている。それは「涼しい」という域を裕に超越し、最早「凍えてしまいそう」なほどだった。何しろ、10月の宮古島で思わずホットコーヒーを注文してしまったくらいだ。この激Coldな喫茶店内に飛行機の時間まで居座ることはとても不可能で、僕らはコーヒーを飲み終えると同時に店を出て、みやげ物屋などを見て周ったりして適当に時間を埋める。
 …無駄って感じだよね、こんなふうに空港内でウロウロしてるだけ、ってのも。ま、イイけどね。
 

『レストラン花龍』は休業中。
台風でかなりのダメージを受けてしまったみたい…
送迎バスのフロントグラスも木っ端微塵。

  

その『花龍』の隣りに在るみやげ物屋。
かなりデカい。品揃えも豊富。
たまにはみやげ物屋をじっくり見るのも楽しいね。

  

『みやこパラダイス』。
しかしアーチには『トロピカルフルーツパーク』の文字が…
ちょっと紛らわしいよね、これ。

  


…プランターがこんな状態で…
きっとこうするのが精一杯な状況なんだろうなぁ。
全体的にわりとこんな調子でした。

  

こんな状況だからなのか、
このときは入場無料でした。
…そりゃ、お金は取れないよねぇ、だってさぁ…

  

木はほとんどが立ち枯れてるし・・・
 
 
  

いろんなものがぶち壊れてるし…
 
 

  

ビニールハウスは鉄骨だけしか残ってないし…
 
  

  

あ、でもまだ残ってる植物もちゃんとありましたよ。
今頃はもう復旧してるんだろうか?
消えた蝶々は戻って来ないとは思うが…

  

宮古空港に掲げられた大壇幕。
復旧作業、ホントにごくろうさまでした。
いろいろな意味で記憶に残るであろう14号。

  

 午後7時半頃、那覇空港に到着。そのままゆいレールに乗って“県庁駅”で下車し、国際通りを歩いて『那覇グランドホテル』へ。ちなみにKにとってはこれが「ゆいレール初体験」となったわけだが、然(さ)して感慨は無いようだった。
 ホテルでチェックインを済ませ部屋に入るなり、ベッドにゴロンと横になるKさん。…マズい!このままでは彼は間違い無く熟睡モードに突入してしまう!というわけで、僕は「さあ、街に繰り出してみるか!」とKを叩き起こし、連れ立って国際通り界隈をそぞろ歩く。
 宵の口の国際通り。人も車もゴチャゴチャと入り乱れ、いつもながら賑やかな場所である。旧『国映館』から『地酒横丁』そして『Opa』を脇に見ながら市場本通りへ。平和通りやむつみ橋通りへとヨレヨレ折れたり曲がったり。恐らく、この界隈を歩いている人の多くは観光客なんだろうとは思うけれど、これだけの観光客がどっと集まって来る場所というのも、それはそれで貴重な気もする。地元の人達にしてみれば、国際通りと牧志公設市場周辺は“観光地”みたいなもの、と思われているのかも知れないし、確かにそのとおりではあるんだろうけどね。
 市場の辺りを一通り見て周り、そろそろ良い頃合いになって来たので、僕らはたまたま通り掛かった久茂地の『あかばなー』という店に入ることにした。店内には僕ら以外にはお客も居らず、なかなか落ち着いた雰囲気で飲食することが出来た。座敷に上がり、沖縄料理を突付きながら泡盛を飲む。…ほとんど毎晩こんなことを繰り返している僕ら。よくもまぁ飽きもせずに…と思ったりもするが、どうも沖縄に来ると、舌と身体がこれらを無意識のうちに欲してしまうらしい。「また沖縄料理?もうウンザリ!」とか思わないもんなぁ、不思議と。
 


Kさん、はじめてのゆいレール。
だがしかし、特に思い入れは無かったらしく。
まぁ、KさんらしいっちゃあKさんらしいけどね。

  

国際通りはとっぷり陽も暮れて。
やっぱり夜の街は楽しいねぇ。
あ、べつにヘンな意味じゃないけどね。

  

久茂地に在る『あかばな〜』。
国際通りの一本裏の道で営業中。
まったり出来る雰囲気でなかなかグ〜でした。

  


シマナーチャンプルー(だったと思う)。
結構マニアック(?)な料理が多いお店だったり。
昼間は定食もやってるみたいです。

  

白身魚の天ぷら。
何の魚だったかは…失念。島の魚だったのは確か。
すぬい(もずく)の天ぷらも美味かった!

  

ンムクジプットゥルー(だったと思う)。
ちょっと味噌系の味付けでした。
これ、結構腹に貯まる感じ。

  

ヒラヤーチー。
やっぱりこれはソースで食べるのが一般的?
それとも醤油?意外性をついてマヨネーズとか?

  

店オリジナルの泡盛を注文してみました。
理由:値段が安かったから(^_^;)
小さなボトルだったので、2本飲んじゃいました。

  

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