ひねもす


 “渡口の浜”に着く頃、また俄(にわ)かに雲が増えはじめた。更には小雨までパラつき出す。おまけに海を渡って来る風は意外なほど強く、少々冷たかった。僕らはいまひとつ冴えない海の色をぼんやりと見ながら、どちらからとも無く溜め息を吐(つ)いた。
 「もっと天気が良かったらなぁ…」Kはかなりガッカリしている様子だった。そりゃあ無理も無い。ただでさえ「せっかく来たんだから青く輝く海が見たい!」と思うのが人情ってもの。その上Kにとっては8年ぶりの渡口の浜だ。その残念さ加減たるや、きっと相当のものだったろうと思う。
 風が強いせいもあって雲の流れがかなり速く、ほんの10数分ばかり浜辺をフラフラと歩いている間にも、サ〜ッと陽が照ってみたり急に雨が降って来たり、目まぐるしく天気が変わる。それはそれで“南国チックな天気”と解釈出来なくも無いのだが…
 そんな天候の中、海に入っている人は結構多かった。家族連れや若者グループなど、20人近くの人が居て、そのほとんどが海に入って泳いだり水遊びしたりしていた。要するに、このとき渡口の浜で泳いでいなかったのは、僕ら二人だけ。やれ「晴れた海がイイ!」だの「青い海が見たい!」だのと言うわりに、僕らはちっとも海で泳ごうとしない。基本中の基本である「海→泳ぐ→日光浴」という行動パターンを一切無視している邪道な海水浴客。って言うか、海水浴してないわけだから“海水浴客”とは呼べないな。…海鑑賞客?
 僕らは渡口の浜の東側からビーチに入り、そのまま西側に在る売店の前辺りまで砂浜をチンタラと移動。売店で飲み物や“ムーチー”を買い、それを飲み食いしながら、来た道を戻る。結局僕らが渡口の浜でしたことと言ったら、時折垣間見える太陽とそれに釣られて一瞬眩しく輝く海をチラチラと眺めながら、波打ち際を往復しただけ。せっかく島に来て、海を目の前にしていながら、一歩たりとも海に浸かろうとしない我々。こんなにせっせと海に通っているってのにね…
 

伊良部島に戻って来ました。
そして“渡口の浜”を目指します。
今回は迷わず辿り着けそうです。

  

“渡口の浜”です。
泳いでる人も居ますねぇ。
…10月ですよ、一応。

  

もっと天気が良ければなぁ〜。
さぞかし綺麗な海が拝めただろうに…
風がちょっと冷たくて、何となく秋の気配。

  

とは言え、曇っていてもこの海の色。
本土の海じゃ考えられない海の色。
やっぱり宮古周辺の海はちょっと違う。

  

陽が照ると砂浜も海もパッと輝き出す。
で、夏の陽気に逆戻り。
急に汗が噴き出して来たりしてね。

  

ビーチの傍に在る売店で購入した“ムーチー”。
鮮やか過ぎるピンク色についつい手が伸びました。
これ、餅というよりは甘い大和糊みたいな感じ(^_^;)

  

 渡口の浜を後にして、僕らは『牧山展望台』へ。ここにも渡り鳥・サシバを模った展望台が在る。先ほど行った“フナウサギバナタ”のサシバ型展望台よりも、こちらのほうが歴史が古い(1981年に完成)。そのせいもあるんだろうが、フナウサギバナタのサシバと比較すると、こちらのほうは…サシバというよりは首の短い白鳥って感じ…しかも、スワンボートとか幼児用のおまるとか、そういう類の…製作した方々には申し訳無いんですけども。
 しかし、この展望台からの眺望はなかなか素晴らしく、僕らは暫しその眺めに見入る。空は相変わらず曇りがちの天気だったが、それでも海の色は目に染むような青さで、何だか心がジンとする。

 「そろそろ宮古に戻ろうか…」と言うことで、馬鹿二人組は佐良浜港へと戻る。何しろ、今日の夕方の飛行機で本島・那覇に移動する予定だったので(って言うかKさんがいつの間にかそう決めていた)、あまりのんびりもして居られない。
 昼過ぎの佐良浜集落は、学校帰りと思しき子供たちを中心に人の姿や車の行き来も増えていた。今朝ここを通ったときには、人の姿はほとんど見られなかったのだが。子供たちは元気に駆けずり回りながら、そのままコンビニに飛び込んで行く。このコンビニ(ファミリーマート)、2002年の12月にはまだオープン前だったのだが、今やすっかり島の暮らしに溶け込んでいるようだった。店の駐車場には次々と地元の車が訪れて、思いのほか繁盛している様子だった。
 「そう言えば、この店はこの前の台風の被害を受けなかったのかなぁ?」
 「どうなんだろうね。でも、島の人は結構重宝したんじゃないの?食料も雑貨も揃ってるし」
 この小さな島にコンビニなんて必要なのか?と僕は正直言って思っていたが、やはり何物であっても「無いよりは、在るに超したことはない」のかも知れない。島の人たちが便利な暮らしを求めるのは当然のことなのだし。
 僕はもう、離島にコンビニが出来ようがパチンコ屋が出来ようが豪華リゾートが出来ようが、それに一々くよくよするのは止そうと思う。石垣島の離島桟橋が改修されてしまうとか、西表島の月ヶ浜のリゾート開発のこととか、そういったものが地元の人の負担にならない限り、部外者の僕らがとやかく言えることじゃない。
 煩悶としながら沖縄を歩くより、すべてをそのまま自然に受け止める。変わって行くもの・変わらないもの、そこにある状態をただ在るが侭に。…ひょっとすると、今僕の見ている“沖縄”は、やがて記憶の中にしか存在しない場所になってしまうのかも知れない。が、それでいいのだ、きっと。ちょっとせつないけど。

 佐良浜港にフェリーが到着した。僕らはそれに乗り込み、伊良部・下地の両島を後にする。
 


『牧山展望台』へ伸びる道。
成すがままに雑草が生え放題。
少しはメンテしたほうが宜しかろうと思うのだが…

  

豊見氏親さんの石碑。
巨大ザメに纏わる伝説で一躍島の神様に。
サメドライブする人もついでに退治してほしい。

  

『牧山展望台』。
これもサシバをイメージした展望台。
フナウサギバナタの後だけに、ちょっと脱力系な匂いが…

  

内部も結構草臥(くたび)れている感じです。
夜に来ると怖そうです。
辺りに灯りらしきものも無いみたいだし。

  

しかし、眺望はバツグン!
宮古島もしっかり確認出来ます。
それにしても、やっぱりこの海の色はスゴイ。

  

展望台周辺の林。茶色い部分が目立ちます。
台風で葉が飛ばされ、潮をかぶり、この有り様。
頑張れ、島の緑!

  

佐良浜集落に戻ります。
朝に比べると、ちょっと活気付いて来てます。
交通量も若干増えて来たし。

  

1年前はまだオープン前だったファミマ。
今やすっかり島の暮らしに馴染んでいる感じ。
客もかなり多かった。

  

パチスロの店も在ったりして。
どれぐらい繁盛してるのかは不明ですけど。
お客はほとんど知り合いばっかりだろうねぇ。

  

ガソリンスタンドの看板は壊れたままの状態。
ちなみにTOKIOがCMに出てる会社ですね。
沢田研二のじゃないですよ、TOKIO。

  

フェリーに乗って宮古島に帰ります。
何だかあっと言う間の伊良部&下地島訪問でした。
もう少しゆっくりしたかったんだけどねぇ。

  

さよなら、伊良部島、下地島。
次回にここを訪れるのはいつのことになるのやら…
そのときはスカッと晴れててくれよ〜!

  

表紙へ            前へ              次へ