28℃


 朝、目覚めると外は眩しいぐらいの晴天だった。こりゃ離島日和だな!と、僕はすこぶる上機嫌になる。一方、Kさんは昨夜足の裏に貼り付けた樹液シートの効果を確かめていた。「うわ!なんだこりゃ。ドロドロになってる!」と、かなり驚いた様子。
 「でも、足の疲れが取れたのかどうかは、ちょっとよく分かんないなぁ…」
 「だから言ったじゃん。それはべつに湿布とかじゃないんだから、足の疲労には効かないかも、って」
 「う〜ん、今日はあんまり歩きたくないなぁ…レンタカーで石垣島を周ろうか」
 …いよいよ来たか!Kさんお得意のノンストップなサメドライブが!
 「え゛ぇ〜!!せっかくこんな良い天気なのに!どうせなら離島に行きたいよ〜!」
 「…でも…波照間には去年行ったし、西表も2年連続で行っちゃったし…」
 Kが一度こうなってしまうと、意思を変えることはまず無い。僕がどんなに「オマエは老人か?!」だの「人間、楽をしちゃあロクなことは無いぞ!」だのと罵ろうが叱咤しようが、彼の石垣島ドライブを阻止出来ず。…ハァ、ちょっと先が思い遣られますなぁ…

 腹が減っていたので、朝食にありつこうと民宿を出て、市街地を少し散歩がてら歩いてみる。が、まだどの店も開いて居らず、結局『石垣グランドホテル』の中にあるレストランの朝食バイキングで手を打つことになった。思えば、今まで幾度と無くこのホテルの前を通っていたのだが、施設内に足を踏み入れるのは今回が初めて。ちょっとドキドキしながら入ってみると、ホテルの従業員らしき女性に混ざって、学生服姿の女子が数人、料理の給仕を手伝っていた。通学前のアルバイトだろうか?いや、もうすでに学校は始まっている時刻だし…これは課外授業の一環か何かなんだろうか?
 とにかく、僕らは店内の様子を見渡しつつ手近のテーブルに座ろうとすると、従業員の女性が「あ、お客様、申し訳ありませんが、料金は前払いとなっております…」と声を掛けてきた。ありゃりゃ、そうなんですか。で、お幾らなんでしょうか?「1,200円になります」ゲゲッ!1,200円?!朝からそりゃまた随分と豪勢な…一瞬固まってしまう僕らだったが、ここまで来て「思ってたより高いので止めます」とも言えず、会計を済ませる。よ〜し!こうなったら元を取ってやるぞ〜!食って食って食いまくるんだ〜!
 …と意気込んでみたものの、朝っぱらからそうがっついてバリバリ食えるはずも無い。結局、何となく割高感の残る朝食を終え、ちょっと食後の一服を…って、あれ?灰皿が見当たらない。「ひょっとして、ここって禁煙なんですか?」と問う僕らに、「はい、そうです」というあっさりとした返事を返してくる従業員。嗚呼、喫煙家には何かと風当たりの強いご時世ですなぁ…
 

早朝の離島桟橋。
今日はなかなか天気も良さそうです。
果たして、今日はどこへ行くことになるのやら…

  

民宿のベランダには大量の泡盛の空き瓶。
石垣島と言えばやっぱ八重泉だねぇ。
…あ、請福派を敵に回す発言か?

  

『根原荘』は交番の隣りに在ります。
これで防犯も万全だ!
…って、この交番っていつも無人なんですけど…

  

730交差点。
石垣に来ると、一日に何度もこの交差点を行き来します。
僕らが一番“石垣島”を感じる場所のひとつ。

  

まだ人通りも疎らなあやぱにモール。
ほとんどの店が開店前の時間ですからね。
市場や露店ぐらいしか営ってません。

  

『日本最南端 駄菓子屋 みやま』。
沖縄限定菓子がうずたかく積み上げられていて圧巻。
最南端…確かにそうかも知れない…

  

このアーチ、いつ見てもチープで素敵です。
「おーりとーり」と“通り”を掛けたセンスもNiceです。
オヤジライクなネーミングにクラッと来ますね。

  

『石垣グランドホテル』で豪華な朝食バイキング♪
…内容のワリに値段が高すぎ、って気もするんだが…
欲張って皿に盛っても朝からそれほど食えないし…

    

 そんなこんなで朝食を済ませ、毎度お世話になっている『石垣島レンタカー』で車を借りる。もうこれだけ何度も利用していれば、さすがに店の人も僕らのことを憶えていて、「あら、お客さん達、初めてじゃないよねぇ?」なんていきなりタメ口(ぐち)。つられてこちらもすっかりタメ口。「じゃあ、大体のことは分かってるわよね?」などと諸説明も端折られ、あっという間にレンタカーを与えられてしまった。これは喜ぶべきなのかどうなのか。地図すら渡してもらえなかったし。まぁ、べつに必要無いのでべつにイイんですけどね。
 じゃあ、石垣島周遊に出発!!「K、絶対サメドライブはするなよ!したら殺す!」と釘を刺すのも忘れずに。ハッキリ言って幾ら釘を刺したところでさっぱり効果は無いんだが…これぞまさしく“糠に釘”状態ではある。でも、ひとこと言っておかないと。
 市街から冨崎へと向かう車中で、僕とKは明日移動する宮古島のことをあれこれと話した。
 「あれほど宮古を毛嫌いしていたKが、どうして宮古に行く気になったんだ?」
 「え?う〜ん…なんとなく」
 「(コイツの答えはいつも“なんとなく”なんだよなぁ…)それにしても、ホントにKは宮古を嫌ってたからねぇ」
 「べつに嫌ってたわけじゃないよ。たださぁ、あんまり良い印象が無いんだよなぁ、“砂山ビーチ”は綺麗だったけど」
 Kが宮古を敬遠していた理由を大まかに分けると、1.座敷でのんびり出来る飲み屋が少ない。2.島独特の風情が弱い。3.道が分かりづらい。という3点になるらしい。2と3はともかく、1の理由はKさんの認識不足なのではないか、と思うんだけど…
  そんな話をしながら西海岸沿いを走っていると、ちょうど“冨崎”の辺りに差し掛かったところで、視界に海が開けた。僕らは程好いところに在った中華料理屋の駐車場に車を停めて、しばらく海を眺める。昨日は曇っていたので海の色は今ひとつだったが、天気が良いとやっぱり青さが眩しい。「う〜ん、イイねぇ…」などと呟きながら、ただぼんやりと海を見る。
 「よし!行け行けどんどん、って感じ!」と、すっかりハイテンションになっている僕は、空かさず中華料理屋の向かい側に在る“冨崎観音堂”に目を移し、「あの観音堂にも行ってみよう!」と盛り上がる。が、Kは「…え?行くの?…あまり気が進まないんですけど…」と極めてクールな反応。何だよぉ〜、人がせっかく盛り上がってるというのに。結局、僕らは観音堂を素通りし、ドライブを続けることにした。
 

Kの「時計回りの法則」は治らないようだ。
何故か常に西海岸からスタートするKの運転。
たまには白保方面から回れないのか?!

  

冨崎辺りの海。
かなり綺麗だったので停まって見物。
八重山の海はやっぱり晴れの時が一番綺麗だねぇ。

  

『冨崎観音堂』に続く参道。
せっかくだから寄ってみたかったのに…
Kさんはこういうのに全く興味無いようです。

  

  「“御神崎”に行ってみようか」とKが言う。御神崎かぁ…以前行ったのはもう何年前になるだろうか。あのときは日没直前のタイミングだったので、夕景がなかなか綺麗だったっけ。昼の(厳密に言うと午前10時の)御神崎はどんな塩梅なんだろう。
 崎枝から岬に向かう脇道に入る。ここからの道程が意外と長い。途中、うっかりするとヘンな細い農道に入り込んでしまい、「ホントにこの道で良いのか?」と不安になったりもする。何しろ感覚だけを頼りに無闇やたらと道を誤ることの多いKさんなので、このときもお約束どおり畦道の先でにっちもさっちも行かない状況に追い込まれたりする。「…どうしてキミは毎度毎度険しい道へと入っちゃうんだ?」と僕が厭味を垂れようが、Kは「ハハハハ」と軽く笑い飛ばすばかり。
 そんな調子で若干の回り道をしながらも、ようやく御神崎の灯台の下まで辿り着いた。灯台の周辺は緑地公園のようになっていて、僕らが訪れたときには観光客の姿は無く、緑地を整備している地元業者の人が数名しか居なかった。灯台鑑賞もそこそこに、僕らは遊歩道を伝って岬の突端へと進んでみる。と、そこには真っ青で広々とした海原がド〜ンと広がっていた。実に気持ち良い!「やっぱりこうでなくちゃな!」と意味も無く納得し、緑地の中をウロウロする。空の青、海の藍、芝の緑、まったくもって爽快な気分。「♪海よ〜俺の海よぉ〜」とつい口ずさんでしまうのが加山雄三の歌だったりするのが玉に傷ではあるけれど…
 


“御神崎”へと向かいます。
結構距離があるんですよね、灯台に辿り着くまで。
途中、狭い道もあったりして。

  

御神崎の灯台が見えてきた。
以前ここに来たのは夕暮れ時だったなぁ。
周り中カップルだらけで居心地の悪かったこと。

  

白亜の灯台、って感じですよね。
もっとも、ほとんどの灯台が白いような気もしますが。
石垣島の沖には赤い灯台も在ったっけ。

  


灯台の脇に伸びる遊歩道。
この先に御神崎が広がります。
で、左下の画像に続く。

 


これが御神崎とその眺望。
今回の旅行はちょっと雲が多かったんだけど、
このときはかなりイイ天気。海も綺麗です。

  

水難事故に遭った方々を供養する菩薩像。
綺麗なばかりじゃない、海の怖さ。
ついつい忘れてしまうけれど。

  

岬の突端に拝所のような岩場が。
香炉などが置かれてました。
…しかし、辿り着くのが結構大変そう。

  

海は怖い。けれどやっぱり美しい。
しばらく見入ってしまいました。
波の音も響いてきて、何だか満ち足りた気分に。

  

しつこいようですが、海。


 

くどいようですが、海。


 

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