C:6  牧志〜久茂地


 とにかくくどいようだが、国際通り界隈にはホントに驚くほど墓が多い。住宅街の片隅に、ビルの脇に、マンションの裏に…目抜き通りを歩いているだけではとてもそんなふうには思えないこの周辺ではあるが、一歩路地を入ると思わぬところに墓が在ってビックリする。小さな墓、大きな墓、そのほとんどが年季の入った古めかしいものだったりする。
 これらの墓が一体いつ頃造られたものなのかは分からない。あの戦争でこの辺りは壊滅的な状態になったようだから、ひょっとすると戦後に建てられたものなのかもしれない。所謂霊園の類では無く、こうして賑やかな街の中に墓が点在しているというのは、ちょっと不思議な感じがする。こんもりと木が生い茂る場所には必ずと言って良いほど墓が在って、そこにはひっそりとした空気が漂っている。が、陰気な印象は無い。暮らしの場と寄り添うように静かに横たわる墓には、むしろ奇怪な安らぎめいた感慨さえ享ける…って、これは幾ら何でも言い過ぎかな?

 そんなふうにして国際通りからニューパラダイス通り、そして『緑ケ丘公園』の辺りへと歩く。その『緑ケ丘公園』の脇の路地を入って奥へと進んで行くと、民家の先に鬱蒼とした林が見えて来る。その林の下に『那覇大綱挽久茂地旗持練習場』と書かれた石標が立っている。
 那覇大綱挽(引)…ご存じの方も多かろうと思うが、これはかなり盛大なイベント。ギネスで世界一に認定された巨大な綱を引くこの祭りに30万人近い人がドッと群がるわけだ。で、その綱引と共に“旗頭行列”が行なわれる。旗頭の綱引における役割は…面倒なのでここでは割愛。とにかく、その旗頭というのがこれまたデカイのだ。高さ7〜8mもある巨大な旗を数10人の青年が持つことになる。
 で、恐らくこの『那覇大綱挽久茂地旗持練習場』は、その名のとおり旗持ちを練習するための場所なんだろうとは思うのだが…今もこの場所で練習をしているのかどうかはちょっと分からない。大体、周囲はかなり狭いし、地面には草がボーボーに生えまくっていて、とてもここで大きな旗を持つ練習をしているようには見えなかった。すぐ傍に拝所のようなものも在って、何となく「神聖な場所」というほうがしっくり来る感じだ。まぁ、綱引も旗頭も神事に因む行事だし、ある意味ここが神聖な空間に思えるのも至極当然なことなのかもしれないが。
 

国際通りとニューパラダイス通りの間にある林。
こういう所には必ずあるのがお墓。
ここには古そうな亀甲墓がドンと構えてます。

  

新築の都市型マンションのすぐ裏手。
ここにもやっぱり森が在って…
ちょっと森に入ってみると…

  

中は木も草もボーボーに生え放題。
ちょっとしたジャングル状態になってる。
で、そんな森の中に在ったのが…

  

やっぱり墓。しかも何基も。
これなんて、相当古そうな感じがする。
辺りには薮蚊などの虫が激しく飛び交ってる。

  

家型のお墓も在りました。
沖縄の墓はバリエーションも豊富ですよね。
破風、亀甲、風水…本土のような墓石も在ったり。

  


さて、那覇大綱挽久茂地旗持練習場へ。
ちょっと行き方が分かり難いんですけどね。
民家の間を抜けて奥へと進んで行くと…

  

ありました、那覇大綱挽久茂地旗持練習場。
『緑ケ丘公園』の片隅にポツンと立ってる石標。
ここで旗持の練習をするのかぁ…

   


…って、練習するにはあまりにも荒れてるような…
しかも、狭いですし。
練習場というより明らかに拝所という趣きです。

  


さて、そろそろ帰らないと。
今回はホントに個人的な旅行でした。
大体、沖縄に来て海に行かないのは初めてだし。

  

とある家の庭先にパパイヤの木が。
街の中でこういうのが生っちゃうのが南国らしい。
パパイヤの炒め料理は大好きです。

  

 那覇・国際通り界隈。実際のところ、たぶん多くの旅行者にとっては「お土産を買う場所」だったり「ご飯を食べたりお酒を飲んだりする場所」だったり「泊まる場所」だったりする街、というイメージで捉えられているような気がする。もちろんそれに間違いは無い。でも、僕がこの街に惹かれる理由は、それとは少し違う部分にある。ここが沖縄屈指の大都市なのは確かだし、いつも観光客でごった返して居るのも事実。人が集まる場所は時代と共にどんどん変化し洗練されていく。そんな時間の流れの中で、訥々と残っていくものが在るということ。それだっていつかは綺麗さっぱり消え去ってしまうかも知れないのだが。ただ、少なくとも今という時間を生きている僕の目の前に現れるそういった「残されたもの」を、僕は出来るだけ見つめていたい。保存だの保護だのと堅苦しい物言いでは無くて、もっともっと飄々と。「こんなものが残ってるんだぁ」というときめきと「あ〜、ここも無くなっちゃったのかぁ…」という切なさと一緒に、僕はこの那覇の街を歩いていたい。…なんてね。
 沖縄の綺麗な海や砂浜、古い家並み、眩しい花や草木の緑、もちろんそういうのも僕は大好きだけど、一番強烈に“沖縄”を感じるのは、薄汚れたコンクリート建築の家の向こうに広がる空や細い路地に滲む光陰を見るときなのかも知れない。沖縄の表層をつらつらと滑っているうちに、ふと気づく自分の存在。「俺って一体何なんだろう?」という空虚な自問の落とし所を探すように、デジカメのシャッターを無駄に押す。…那覇のスージグヮーが迷宮のように入り組んでいるのと同様、僕のこの自慰行為も切りの良い着地点はなかなか見つけ出せないままで終わってしまうのかも…それはかなり怖い。でも、楽しい。ってな感じの倒錯した快楽。
 

夕刻の久茂地交差点。
陽射しが無くなると幾らか涼しく感じられる。
そろそろ秋なんだろうねぇ。

  

ゆいレール『県庁前駅』から県庁方面を見る。
いつも帰るときはちょっと切ない。
このままここに居たいような気もするし。

  

とは言え、今日も今日とて東京に帰ります。
那覇空港に到着すれば気持ちも少し切り替わる。
逢いたくなれば、また来りゃイイさ。お金は掛かるけど。

  

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