C:4  マチグヮー界隈


 夕方5時を過ぎたおかげで、幾分暑さも和らいだ那覇。中途半端に寝てしまったせいでボ〜ッとした状態のまま、のそのそとマチグヮーへ歩いてみる。さすがにこの時刻ともなると、市場も商店街も大いに賑わっていた。やっぱりこの辺りは活気があって良いなぁ。観光のお客さんはもちろん、地元の人たちも買い物に訪れていて、恐らく市場が一番活気付く時間なんだろう。
 そんな商店街から外れて少し行くと、前方に床屋さんが見えた。…丁度頭髪も伸びてきた頃合だし、この床屋さんで散髪してもらおうかな。まずは店内の様子を窺う。人の善さそうな結構ダンディーなおじさんが白衣を着ている。ソファーにはソフト帽に眼鏡のオジィが座っていて、新聞を捲っていた。う〜む、散髪中のお客は居ないようなんだが…
 僕がその『理容ホワイト』という床屋さんのドアを押して店内に入ると、白衣のおじさんが「いらっしゃいませ」と見た目どおりのマイルドな声調で迎えてくれた。
 「さ、どうぞ」と散髪台に促される。僕はソフト帽&眼鏡のオジィの存在が気になり、「あ、でも先のお客さんが…」と躊躇する。「ああ、あちらは髪を切りに来てるのじゃ無いから」とおじさんは微笑む。「休憩に来てるだけ」
 なるほど、僕が散髪を始めてもらっても、オジィは新聞を読んだりテレビを見たり、すっかりくつろいでいる様子だ。「何だか長閑(のどか)だなぁ」などと思っていると、今度はガッチリした体の強面のおじさんがドカドカと店内に入ってきた。彼も先客のオジィ同様、ソファーに座って、新聞をパラパラと捲りテレビの相撲中継を見たりし始める。
 「雅山はどうだった?」 「ああ、負けたよ」 「ダメだなぁ」と、いきなり床屋の中で始まる相撲談義もどき。皆さん少なからず大相撲の関心が高いようだ。逆にあまり関心の無い僕は、その会話にまったくついていかれない。
 と、いきなり強面のおじさんが、空いている方の散髪台の前の引出しから剃刀を取り出し、鏡を覗き込みながらジョリジョリと自分の不精髭を剃り始めた。剃刀を探す素振りが無く手馴れた感じなのを見ると、恐らく普段もこうして自分で剃っているんだろう。店の剃刀で(^_^;)
 結局、オジィもおじさんも、テレビの相撲中継が終わるまでソファーに座ってあれやこれやとゆんたくし、中継が終わると同時に帰って行った。まるでテレビ観賞サロンのようだ…と思っていると、今度はまた別のおじさんがやって来て、ドアを開けるなり大きな声で 「今晩、何時頃来られる?」と、僕の散髪をしている店主に問い掛ける。
 「今日はちょっと遅くなるかもしれんよ。7時は過ぎるだろうねぇ」と答える店主。仲間同士の飲み会なのか、はたまた町会か何かの集まりなのか。と、そのおじさんが去るのと擦れ違うように、またまた別のおじさんが来店する。「いらっしゃいませ」と迎える店主。どうやら今度こそ散髪しに来たお客さんらしい。
 ところで、このご主人はどうやらかなり腕の立つ理容師さんのようだ。店内にはトロフィーや賞状が並んでいる。その仕事振りはすこぶる丁寧で、鋏捌きも剃刀の当たり具合も非常に細かい。その分、だいぶ時間は掛かっているんだけど。
 約1時間半の作業を終えて、僕が代金を払おうとすると、「どうぞ椅子に座ってゆっくり休んで行ってください。新聞もありますからお好きに読んでください」と言う。ちょっと面食らったが、その言葉に従うことにする。ソファーに座って新聞を捲ると、ご主人は次のお客さんの散髪を始めた。…こりゃ困ったぞ。店を出るタイミングがとても難しい。散髪を開始してしまったご主人に料金を払うタイミングを上手く見計らわないと、仕事の邪魔をしてしまう。僕はテレビを見る振りをしながら、ご主人の手が止まるチャンスを窺っていた。
 かれこれ20分ぐらいした頃、丁度ご主人の仕事が一段落したようだったので、僕は空かさず「あ、ありがとうございました」と言ってソファーを立った。
 「ああ、もうお帰りですか?ありがとうございます」 ゆったりとした口調で応えるご主人に代金を支払い、外に出た。
 

マチグヮーの周辺にはスージグヮーがたくさん。
市場の活気を忘れてしまうような細い路地。
凸凹とした舗装もむしろ心地良く。

  


夕飯の買い物の帰りかな?
オバァと女の子が路地を行く。
何だかちょっとジンと来るふたつの後ろ姿。

  

…とは書いてあるが、パチンコは見当たらず。
那覇には大型パチンコ店も結構在るしねぇ。
どんな店だったのか、ちょっと想像してみる。

  

『理容ホワイト』で散髪してもらいました。
余所者の僕でもとても親切にしてもらった。
またここで散髪してもらおう♪

  

市場で働くおじさんも多くやって来る床屋さん。
ご主人の宮城さんはとても穏やかそうな感じ。
ちょっとしたくつろぎの空間と化している(?)。

  


むつみ橋通りの入り口付近の露店。
三線などを販売してます。日曜日は特売日らしい。
しかし露店で三線買うのって勇気が要るよなぁ。

  

 散髪を終えて外に出ると、もうすっかり陽が暮れてしまっていた。一旦国際通りに出て、さらに沖映通りを久茂地川方面に歩いて『めん膳』という食堂で本日最初で最後の食事をする。ここでついに長年の念願であった(大袈裟です)ぜんざいを食べた。…想像どおりの味、って言うか、金時豆そのものの味、って言うか、もうちょっと甘味があってもイイんじゃないか?というような…まぁ、味の好みは人それぞれですのでね、一概には言えませんけども。
 そんなこんなで食事を終えて、途中でちょっとダイエーなんかを覗いたりして、また飽きもせずに市場界隈へ。いつの間にか市場も商店街ももうすっかりシャッターを降ろしてしまい、アーケードの中には通行人も居ない。店が閉まったアーケードの中はどこか仄暗く、ついさっきまでの賑わいが嘘のようだ。シャッターの前で寝転がるホームレスの人が数人、そして野良猫しか居ない市場。国際通りの喧噪も遠くなり、自分の足音しか聞こえなくなる。ここが那覇の都心の一部だということを忘れそうなほどの静けさ。…実際、街の喧噪を生んでいる中心は国際通りであって、そこを少し外れると途端に辺りは閑になる。社交街と呼ばれる一帯も、思いのほか静かだったりする。女性ひとりだと夜の裏道を歩くのも不安に感じるかもしれない。
 市場のアーケードを抜けて、開南通りに出る。開南通りには通行人も多く、少しホッとする。そのまま国道330号線に沿って与儀の交差点まで歩いたところで、急に雨が降り出した。ホントは楚辺、出来れば壷川の辺りまで歩こうかと思っていたのだが、雨脚が次第に強くなって来てしまったので、僕は夜の徘徊を断念し、タクシーを捕まえてホテルまで戻った。
 

沖映通りにある『めん膳』。
今年の7月にもこの店で食べました。
最近の僕のお気に入りのお店です。

  


トーフチャンプルー。ご飯と小盛りのそば付き。
個人的にはかなり好きな味です。
料理に時間が掛かるのが沖縄らしい(?)けど。

  

セルフサービスの麦茶と思しき飲料。
氷が入ってるので適度に冷たいんだけど、
それが溶けちゃってかなり薄味な液体に…

  

初ぜんざい♪
味は…う〜む、美味いのかなぁ、これ…
正直言ってぜんざいは口に合わないかも…

  

陽がすっかり暮れた国際通り。
「さぁ、夜はこれから!」という時刻ですね。
通りにはたくさんの人が溢れてるんだけど…

  

マチグヮー界隈に一歩入るとご覧のとおり。
人っ子ひとり歩いてません。
国際通りの喧噪が嘘のように静まり返ってる。

   

ホームレスの方たちが数名居ました。
確かにここは静かだし、ある意味居易い場所かも。
昼の暑さはどこで凌いでいるんだろうか?

  

それから野良猫も多かった。
昼間とはまったく違う表情のマチグヮー界隈。
何だか人恋しくなってみたり。

  

人が居ないからこそ気づくこともある。
壁、天井、床、排水溝…
狭い通路の複雑な繋がり具合だとか。

   


モノレールがもたらす恩恵。
それはこの界隈を劇的に変化させるに足る物なのか。
…やっぱり個人的には複雑な心境。

  


もしもマチグヮーが綺麗に整備されてしまったら…
僕はもうここには来ないだろうと思います。
画一的な商店街になって欲しくないなぁ。

 

とか何とか言うのは部外者の戯言ですけどね。
変わることで豊かになるのだったら、
それはむしろ喜ぶべきことなんだろうし。

  

開南通りに在った屋台風な食事処。
こういうところで食べるのも面白そうなんだけど…
ま、今回はパスってことで(^_^;)

  

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