Lost Highway
 

 途中、携帯電話での会話に夢中になりながら車を運転しているおばちゃんに危うく衝突されそうになったりしながらも、無事平良市街まで戻って来た。その間にすっかり陽も落ちて、昼間の暖かさがすっかり形(なり)を潜めてしまった。昨日の夜はそんな感じはしなかったが、さすがに12月、夜ともなれば少々冷えてくる。…とは言っても、長袖のシャツ1枚でも充分な程度の気温なんだけど。
 晩飯でも食べようと、そのまま市街地から空港の方向へ適当に車を走らせて行くと、『レストラン花龍』というわりとデカい中華料理店風な店が何となく目に留まり、そこに入ってみることにした。
 この店は『宮古観光物産センター』というみやげ物屋の敷地内に在って、駐車場もかなり広い。のだが、僕が入った時間がまだ比較的早い時間だったせいもあってか、店内はガラガラ。テーブル席の他に個室がいくつか在るなかなか立派なレストランのようだ。入り口のところに店内の案内図が掲示されていて、そこには“レガシーの間”やら“スバルの間”やらといったどこかで聞いたような名前が付けられた個室の配置図が描かれていた。オーナーがカーマニアなのかな?…などと入り口の前で店の様子を窺っていると、店員が僕の存在に気づいて「いらっしゃいませ〜」と声を掛けてきた。そう言われちゃ入らないわけにはいかないよなぁ。店員さんに促されたテーブル席には誰も居らず、お客は僕ひとりきりだった。広い店内で客ひとり、という状況は実に心細い。が、ここはひとつ気合で乗り切ろう。
 店員がオーダーを取りに来たので、僕は少し迷って“豆腐チャンプルー”を注文した。とにかく店構えが何となく中華風だったので、正直言って沖縄料理を頼むのは少々躊躇われる気もしたのだが、宮古に来てまだ郷土料理の類をまったく食べていなかったので、どうしてもそれらしい物を食べたかった。
 しばらく待った後やって来た豆腐チャンプルーは、なかなか美味かった。…値段は\700とちょっと高かったけどね。(後で知ったんだけど、このレストランは宮古では結構有名な店らしい。しかも、隠しメニュー(?)“ゴーヤー酢豚”なるものが評判らしい)
 テーブル席には僕しか居なかったけど、どうやら“VIVIOの間”と“インプレッサの間”には団体のお客さんが居たらしく、とくに“VIVIOの間”ではどうやら地元の若いお母さんたちの集いを行なっているようだった。ビールやら泡盛やらが次々に運ばれる座敷からは、子供たちの大声と、それを物ともしない若お母さん方のゆんたく&笑い声が響いて来る。…沖縄ってこういう酒席に子供同伴でやって来る人が多い。本土(東京)辺りの居酒屋などではまず見られることの無い子供の姿が、沖縄の大きな居酒屋などでは結構見受けられたりする。民謡酒場にも子供連れで飲みに来てたりとか、中には子供が遊ぶスペースを設けている居酒屋も在る。まぁ、これにはいろいろと事情もあったりするらしいが、ここではめんどくさいので割愛。さらに、(駐車場の状況から見て)彼女等のほとんどがマイカーでご来店している模様。と言うことは、このまま帰れば必然的に酒気帯び運転ということに…くわばらくわばら。
 

『公設市場』の近くに在った店。
発想としては『ほっかほか亭』的なネーミングか。
かなり遅い時間まで開いてました。

  


『レストラン花龍』の案内図。
“レガシーの間”や“フォレスターの間”…車種名だよね…
縁取りが雷紋。中華料理がメインの店なのかな?

     

かなり綺麗な店内。
冷房が効いててちょっと寒かった。
…12月なのに冷房ってのが(^_^;)

  

豆腐チャンプルーを頼んでみました。
あっさり味で結構美味かったです。
中華料理を注文しても良かったんだけどね。

  

 晩飯を終えてペンションに戻ると、夕べに引き続き、今夜もやはりフロント前では宿主を交えてのプチ宴会が催されていた。どうやら宿主の知り合いと宿泊しているお客さんの一部が入り混じっているようだ。う〜む、毎晩こんな状態なんでしょうか?それともたまたまこういう日が続いただけ?たぶん、こういう状況において、旅慣れた人や屈託の無い人は酒席の仲間に入れてもらったりするんだろうけど、僕はそういうのってちょっと苦手なもんで…挨拶をサラッと交わしてそそくさと自室に潜り込みました。何かねぇ、ダメなんだよなぁ。せっかく気楽にいきたいのに、こういう場所で中途半端な人間関係作っちゃうとかえって気を遣ったりしちゃわない?もしも「宮古に来たんだから○○に行かなきゃダメだよ」とか「明日時間があるんだったら××に連れて行ってあげる」なんて言われると、ホントはあまり関心が無くても「…じゃあ、行ってみようかなぁ…」などと心にも無いことを言ってしまったりとか。基本的に人から干渉されるのが大の苦手なので、ついつい避けてしまうんだよねぇ。元々団体行動が嫌いな一匹狼的気質(と言えば格好もつくが、とどのつまり人付き合いが下手なだけ)なので、群れるのを極力回避しちゃう。これでだいぶ損をしてるとは思うけれど、なかなかこの性分は治らない。そもそも治す気も無かったりするのだけれども。
 部屋に入ってテレビをつけると、ニュースでは“和歌山毒物カレー事件”の林某被告に死刑判決が下った、という一件が報道されていた。事件の全容がハッキリとしていないのに死刑ってのもどうなんだろう…なんて考えたり。大事なのは世論や心情じゃなくて、どうしてそんな犯罪が起こったのかをしっかり検証することなんだと思うんだけどなぁ…最近、死刑の持つ意味合いが軽くなって来てる気がするのは俺だけ?なんてことをうだうだと思っているうちにだんだんと眠くなってきたので、シャワーを浴びてベッドに入る。

 夜中の2時過ぎ、不意に目が覚めてしまった。外では小雨が降っているようだ。このまま寝てしまうのもつまらないので、ちょっとだけ夜中の街の空気を吸いに表に出てみることにした。
 ペンションから『公設市場』の横を通ると、そこは“いーざと”。島でも一番の歓楽街だ。さして広くない路地が入り組んだ“いーざと”の街を気の向くままに彷徨ってみれば、小雨そぼ降る中、フラフラと歩く千鳥足の酔っ払いたち、仕事を終えたホステスと思しき女性たち、そんな人たちを捕まえようと周回する何台ものタクシーなどが賑やかに行き交い、店の中からは客がカラオケをがなり立てる声やキャーキャーと囃す女性の声が漏れて聞こえて来る。そんな中を歩いている僕に、通りすがったわナンバーの車の車窓から「あの〜、すみません。『クラブ有楽町』ってお店を探してるんですけど、どこか分かります?」なんて訊ねて来る青年ふたり。たまたまそのちょっと前に『クラブ有楽町』という看板を見掛けていたので、「ああ、この道を真っ直ぐ行った左側に在りますよ」などと答えてみる。たぶん彼らは観光か仕事で宮古にやって来たんだろうけど、こんな時間に店に入ってもあんまりゆっくり出来ないんじゃ無いのか?と人事ながら少し懸念してみたりする。
 とにかく、本島の那覇の界隈しかり、石垣島の美崎町しかり、沖縄の歓楽街は夜が深くなればなるほど妖しい輝きを増す。得体の知れない“旅館”や“サロン”の類、カラフルに光る看板やネオン、はめを外す人々の喧騒…これはこれで個人的にはかなり好きな雰囲気だ。こういう中に自分がそっくり入り込んでしまうのはちょっとダメだけど、傍観者としてそぞろ歩くぶんにはなかなかどうして楽しかったりする。相変わらず小雨は降り続いていたものの、さほど気にならない程度だった。12月の宮古の夜は、特別寒くも無く、湿気もあまり無い。夜の自由な空気がとても心地良くて、僕は小一時間“いーざと”を徘徊した。
 
 そのままいーざとの街を抜けて、程近い“パイナガマビーチ”に寄ってみた。当然ビーチは真っ暗だったわけだが、港や久松方面の街灯りがほんの少しだけチラチラと光っていて、どんより曇った空も見て取れた。真夜中のビーチには犬の散歩にやって来た人やカップルなどの姿もあって(ってこんな時間に散歩やデートをしているのもどうかと思うけど)、それほど寂しい感じはしなかった。夜の海は、視覚が制限されるぶん波の音が際立って聞こえる。僕は設えられたベンチに腰掛けて、しばらくぼんやりと暗い海を見た。“見た”と言うよりは“聞いた”と言ったほうが正確かも知れない。暗い海から届く波の音を聞いているうちに、だんだん眠気がやって来たので、僕はビーチを後にしてペンションに戻ってもう一眠り。ベッドに潜り込むと、どうやら雨脚が強まっているようで、雨音が耳につく。ついでに風の音まで…明日はかなり天気が悪そうだなぁ。
 

午前3時の市内の様子。
車もあんまり走ってないし、静まり返ってます。
ちょっと深夜の散歩に出てみようか。

  

下里の社交街、通称“イーザト”の夜。
宮古最大にして最強のナイトスポット、だとか。
何処となく場末感漂う魅力的な空間。

  

この手のホテル・旅館も結構在りました。
果たして利用客がどれほど居るのかは分かんないけど。
こういう淫靡な感じ、わりと好きなんです(^_^;)

  

『バー億』。あやかりたい感じですね。
どうしてこういう店名にしたんだろう?
資産が億?借金が億?

  

ここは比較的入り易そうな割烹料理店。
おでん、ステーキ、らーめんやギョーザ…
これって割烹料理なんだろうか?

  


うわっ!心霊写真?!
…ではありません。夜の“パイナガマビーチ”です。
夜の海もなかなか静かでイイもんです。

  

沖縄のファミマってそんなに歴史があったのか〜。
僕はてっきりホットスパーの一人天下だったとばかり…
感謝のおまけがあぶらとり紙ってのは微妙だけど。

  

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