気温差18℃の世界
 

 2002年12月10日の東京は、明け方に摂氏0℃近くまで気温が下がり、前日に降った雪もほとんど溶けずに残ったままだった。鈍色の雲が空を覆い、今にもまた雪が降り出しそうな雰囲気。午前中には2℃まで気温は上昇したが、この天気のせいもあってそれよりもずっと寒く感じられた。
 …だが!羽田から飛行機に乗り那覇空港に到着すると、そこはいきなり摂氏20℃。機内から一歩外へ出た途端、ムワッとした生温かい空気に包まれた。僕と同時に飛行機を降りた乗客は一斉に「あったか〜い!」「やっぱり違うねぇ、沖縄は」などと、東京とのあまりの気候の違いに驚きの声を上げた。そりゃそうだよなぁ、何しろ数時間前までは残雪の東京に居たわけだから…僕だって思わず笑っちゃったもんね、この気温差には。
 
 前回の沖縄旅行が酷く内省的に過ぎるものだったので、今回は気分をガラリと変えて「何も考えないでひたすら青い海を見よう!」という、ある意味とっても健全な沖縄の旅をすることにした。で、あれこれ考えて、久しぶりに宮古島に行くことに決めた。宮古島のあの凄味さえ感じさせるような真っ青な海を、目が青く染まるぐらいに見まくってやろう。あ、伊良部島にも下地島にも行ってみよう。大神島は…う〜ん、それはまた別の機会に。大神島は今回の主旨とちょっと毛色が違う場所って気がするし。
 幸い、明日辺りまでは天気もまずまずのようだ。僕は宮古島の青い海を思い浮かべながら、とりあえず空きっ腹を満たすことにする。まだ宮古行きの便まで時間に余裕があったので、那覇空港内に在る『空港食堂』に入り、ちょっと気になる“ポーク玉子そば”なるメニューを選んでみた。この食堂は空港1階の端に在って、うっかりすると見落としてしまいそうな境遇に置かれている。そのせいだろうか比較的空いていて、空港の職員さん達の姿も多く見られる。結構穴場な食堂かもしれない。
 やや待たされた後、“ポーク玉子そば”が運ばれて来た。…まぁ、確かにそばの上にポークと卵焼きが乗っているので、その名の通りの食べ物ではあるんだけど…そばとポーク玉子の相性が良いのかどうかは、ちょっと微妙かもなぁ〜。
 そうこうしているうちに午後3時になる。僕は宮古行きの飛行機に乗り、一路宮古島へ。あの目が醒めるような鮮やかな海の色ともうすぐ会えると思うと、無性にワクワクしてくるよなぁ。
 

東京は雪景色でした。
気温は摂氏2℃。冬の朝です。
吐く息も真っ白です。

   

しかし!沖縄は20℃!…まるで別世界。
着ていた上着が邪魔になって困りました。
この気温差には身体もビックリです。

  

那覇空港の死角(?)に在る『空港食堂』。
場所が良くないせいか、比較的いつも空いてます。
僕は最近よく利用してます、この店。

  

空港関係の職員の姿が多いのもここの特徴。
値段もまぁまぁ手頃だしね。
料理がなかなか出て来ないのが気になるけど。

  

“ポーク玉子そば”。
ポーク玉子は好きだけど、これはちょっと微妙な…
そばとポーク玉子のコラボレーションは少々無理っぽい?

  

 約45分のフライトで宮古島に到着。宮古島に上陸するのは、これで4回目。とは言っても、この前(2001年7月)ここに来たときは“多良間島”に行く経由地としてちょっと寄った程度だったから、ちゃんと島を周るのは2000年の11月以来…およそ2年振りだ。初めて宮古を訪れたのは、かれこれもう7年以上前のこと。そのとき何よりも感動したのは、やっぱり宮古の海の色だった。とくに“砂山ビーチ”と“池間大橋”そして“前浜ビーチ”で見た海の色たるや、感動と言うよりは衝撃に近かった。「どうしてこんな色に見えるんだろう?」と不思議に思えるほど真っ青で眩しいぐらいに輝く海原に、大袈裟では無く本当に息を呑んだ。八重山で見る少し柔らかい海の色とは違う、コバルトブルーやエメラルドグリーンのくっきりとした色味の宮古の海に、僕はただただ絶句するばかりだった。
 …と、まぁ昔話はこのへんにして、まずはレンタカーを借りよう。空港内の案内カウンターでレンタカーを借りたい旨を告げると、たまたま軽自動車が1台空港の駐車場に待機しているとのことで、僕はさっそくそれを借りることにした。さぁ、いよいよ宮古島彷徨の始まりだ〜!
 
 平良市街を通って、真っ先に向かったのは“平良港”。明日はカーフェリーで伊良部島に渡ろうと思ったので、時間などを確認するためだ。車で伊良部に渡る場合、ひょっとするとフェリーの予約をしておいたほうがいいのかな?と思い、僕はレンタカーの車検証を探す。…あれ?車検証が無いんですけど…車内をくまなく探ったけれど、車検証が見つからない。おいおい、大丈夫なのか?レンタカーに車検証を積んでないのって…こういうのも沖縄らしい大らかさの現れ?まぁ、仕方無いか。
 港に着いて、乗船ターミナルの窓口に行く。事務服姿のアンマーに声を掛けてみる。
 「すみません。カーフェリーに車と一緒に乗りたいんですけど…」
 「はい、これからだと5時50分の船になりますけど」
 「あ、今日じゃなくて、明日のフェリーの予約をしたいんですよね」
 「ああ、そうですか。でも、とくに予約しなくても大丈夫ですよ。出発時間の20分前までに来ていただければ」
 「え〜っと…明日港に来てみたら定数オーバーで乗れない、なんてことは無いですか?」
 「ええ、今の時期ですとまず大丈夫だと思いますよ〜」
 「(ちょっと心配…)あ、それとですね、僕今レンタカーなんですけど、どうもレンタカーに車検証が入ってないみたいなんですよ。車検証が無くてもカーフェリーに乗れますかねぇ?」
 「ええ、大丈夫ですよ。車のナンバーさえ分かればそれで問題ありませんからね」
 …普通、カーフェリーに乗る手続きをするときには大概必要とされる車検証。それが要らないとは…これもまた島ならではの大らかさなのか?まぁ、それはそれで今はありがたいけどね。
 
 このまま宿に行くには少し早いと思い、港から何となく久松地区方面に車を走らせると、“久松五勇士の碑”という看板が目に留まった。久松五勇士…日露戦争のときに、粟国の青年が那覇から宮古に行商のために船で向かう途中に敵艦隊を発見し、宮古の警察に通報。が、宮古には当時無線などの通信網が無かったため、命を受けた久松の漁師5人が200Km弱離れた石垣島の発電所まで、決死の覚悟で15時間かけてサバニで渡り、これを電報で伝えた…というエピソード。荒れる先島の海を小さなサバニで航行するなんて、甚だ無茶な行動なのでは?と思うけれど、当時の状況がそれを強行させたのかもしれない。しかも、これだけ皆が頑張ったのに、調書作成やら手続きやら何やらに時間が掛かっていたせいで、この一報が大本営に届いたときにはもうすでに敵艦隊のことは他の船からの通報で認知済みだった、という…僕だったら「なんだよぉ〜、せっかくこんな大変な思いまでして石垣に行ったのに〜!!」と落胆するやら憤慨するやら、って感じだったろうなぁ。
 …とまぁ、宮古島定番の観光スポット巡りはこれぐらいにしておこうか。とにかく明日は伊良部&下地、そして宮古のビーチをめいっぱい周って周って周りまくってやるのだ〜!
 なぜ“明日限定”なのか。明後日まで居る予定なので、本来ならべつに明後日でも構わないんだけど、どうも天気予報だと明後日あたりから天気が大きく崩れるらしいのだ。なので、海の青さを堪能できそうなのは実質明日1日だけ、ということになりそうだったのでね。

 平良市街にある『ペンション・スター』。2晩ここで宿泊することにした。市の中心部に建つビルの4階に在って地の利が良いのと、駐車場に余裕があるのが決め手となった。1階にはA&Wもある(結局今回は一度も利用しなかったけど)。4階のフロントに行くと、ペンションのご主人が「あ〜、ようこそ〜」と日焼けした笑顔で迎えてくれた。手続きと簡単な施設利用時の注意事項の確認などを済ませ、僕は一旦部屋に入る。部屋はなかなか綺麗で居心地は良い。暫しの間、部屋の中でボケ〜ッとしていたが、夕飯でも食いに行こうと街に出ることにした。
 

宮古島が見えて来た!
この島に来るのは01年の7月以来。
…多良間でエライ目に遭ったとき以来です。

  


宮古の青い海が目に沁みる〜。
僕にとって宮古とは、この独特の海の青さ。
今回は海三昧で行くぞ!

  

空港から一路“平良市街”へ。
宮古の幹線道路はかなり綺麗に整備されてる。
この道路はさらに拡張されるみたいでした。

  

夕暮れ近い“平良港”。
明日は伊良部・下地に渡る予定です。
…天気が良ければ、だけど。

  

宮古の観光名所のひとつ。
実ははじめて来ました、ここに。
あんまり興味なかったんです。ゴメンね、五勇士。

  

日露戦争のときの「敵艦見ゆ」のエピソード。
サバニで石垣島まで渡った5人の漁師たち。
寝耳に水って感じだったろうねぇ、彼らにしてみたら。

   

僕が泊まったのはこの宿。
ロビー(?)には毎晩訪問客が訪れて…
プチ宴会が開催されてました。

  


ちょっとしたビジネスホテルっぽい室内。
街の中心部にも近いので何かと便利。
1階にはA&Wも在るし。

  

部屋のベランダからは街が一望の下。
海や伊良部島も僅かながら見えます。
それにしても平良の街はコンクリート物件率が高いです。

    

 『ペンション・スター』は下里の公設市場のすぐ近くに在る。そこから市役所などが在る“マクラム通り”方面に歩いて行くと、たぶん平良市のメインストリートのひとつだろうと思われる“西里通り”に差し掛かった。この通りにはみやげ物屋や飲食店、ファーストフードやコンビニなどが並んでいる。が、まだ夜の早い時間帯なのに人通りは意外と少ない。地元の中高生と観光客の姿が目立つぐらいで、さほど活気がある感じはしない。…そう言えば、宮古島に観光で訪れる人って、晩ご飯をどこで食べたりしてるんだろう?ホテルの夜食で済ましちゃうのか、それともやっぱり西里辺りに出て飲み食いするのか。僕のようにひとりで宮古に来ている人は、一体どうしてるんでしょうねぇ、夜食。と言うのも、どうも宮古は本島や石垣島と比べると、ひとりで気軽に入れる店が少ないような気がするんだよなぁ。賑やかな居酒屋にひとりで入るのは抵抗があるし、洒落たレストランも性に合わないし…で、結局『古謝そば本店』など無難な店を選んじゃったりするんだけど。
 この夜も、あちこちウロウロと手頃な店を探しつつ通りをほっつき歩いたのだが、何てことは無い、一昨年も利用した『たいよう』といううなぎ料理屋に入って、これまた一昨年と同じような膳物の料理を注文してしまうわけね。べつにそれはそれでイイんですけどね。
 それから、これまたついつい立ち寄ってしまうのが『麻姑山書店』という古本屋。蔵書20万冊(←店主の但し書きによると)を誇る店の中はまるで迷路のように本棚が所狭しと配置され、さらにその棚に収まり切らない書籍が通路に山積となっていて、人が通るのもやっと、という状態。まさに本に埋もれている感じだ。「崩落注意!本を取るときはレジに言ってください」などという注意書きが貼られてるし。おまけに、これだけびっしりと本棚に取り囲まれてしまうと、さすがに店主の居るレジから死角になる箇所が出来てしまう。となれば気になるのが万引き。というわけで「万引きする者はすぐに学校に通報する!」というような警告文も貼ってあったりする。書籍雑誌のみならず、中古CDや中古ビデオなどもあって、もう店内はこれらの物で溢れ返りそうな勢いだ。
 以前、僕はここで藤原新也の『南島街道』など、思わぬ掘り出し物と遭遇した。それ以来、宮古に来ると必ず立ち寄っている。普通の書店ではなかなかお目に掛かれない郷土資料などを見つけるのが楽しみなんだよねぇ。
 で、この日は『門中拝所巡りの手引き』と『南海の宮古島』という2冊を購入した。どちらも良かったんだけど、とくに面白かったのが『南海の宮古島』。これは社団法人・宮古観光協会なる団体が編纂した宮古島観光案内書なんだけど、発行されたのが昭和53年ということもあって、現存していない観光ホテルの広告が載っていたり(例『宮古観光ホテル』『ホテル日乃丸』)もするが、そこいらのガイドブックには記されていないようなレアな史跡・景勝地の情報も細かく示してあって、なかなか面白い。観光協会の人が自ら「日本列島最後の秘境、宮古島」なんて書いてしまうあたり、時代が見えて来たりもするしね。
 
 しばらく市街地をブラブラして宿に戻ると、フロントの前のちょっとしたスペースにテーブルが置かれていて、そこに中高年の男女5〜6人が座って談笑していた。彼らの手元にはタッパに詰められた料理やつまみの類と、缶ビールが並んでいる。どうやらささやかな宴会のようなことをしているらしかった。
 「おかえりなさい」と、彼らの中のひとりが僕に言った。よく見るとここのご主人だった。他のメンバーは、宿泊客なのかはたまた地元の人々なのか、ちょっと判断がつかない。僕は「ただいま〜」と返事をし、宴席の皆さんに軽く挨拶をしながら部屋に戻った。
 部屋の中でさっき買った2冊の本を何となく読む。フロントでのプチ宴会の声が微かに聞こえて来るが、とくに気になるほどでは無かった。いつの間にか読書に夢中になっていて、ふと気づくと日付はとっくに変わってしまっていた。ヤバい、明日は早く起きて伊良部島に行かなくちゃいけないんだ。そろそろ寝ないとね。どうやら知らぬ間に宴会も終わっていたようで、館内は静まり返っている。僕は無人になったフロントに出て、そこに在る自動販売機で缶ビールを買い、それをちびりちびりと飲みながら明日の空模様に思いを馳せる。
 何しろ、明日の天気が今回の旅行の鍵を握る。絶対晴れてくれよ〜!と祈りつつ、おやすみなさい。
 

“西里通り”の宵の口。
たぶんメインストリートのひとつだと思うんだけど…
相変わらずちょっと寂しい(^_^;)

   

ヤケに手造り感が炸裂したネオンサイン。
一体何の店なのかもよく分からなかった。
“ライブ&ダンス”…楽しそうではあるけれど…

   

散々迷った挙句、結局この『たいよう』に。
一昨年の宮古旅行のときもここで食べたっけ。
ひとりで食事する場所を選ぶのに一苦労する。

  

…で、そのときも確か同じような料理を食べたような…
イイんだ、べつに。
まぁまぁ美味かったし。

  

『麻姑山書店』はスゴイ古本屋。
店の外側は樹木に埋もれてるし。
店内に入るとさらにスゴイことに…

   

本に埋もれてる!この写真はまだマシな箇所で…
お客が店内を歩くことさえままならない感じ。
おまけに脱力しそうな中古CDやビデオまであるし。

   


『サンエー オリタ食品館』。
夜10時を回っているのに店内は買い物客で大盛況!
駐車場だって満車状態です。

  

うっかり忘れてたけど、今は12月。
クリスマスらしい装飾があちこちに。
でも、こうも暖かいとピンと来ないよなぁ。

  

先程の『麻姑山書店』で購入した古書2冊。
併せて確か800円ぐらいだったかな?
とくに『南海の宮古島』はかなり古い観光資料で面白いぞ!

  

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