エデン


 朝、ホテルを出て何となくコザ周辺をグルグルと周ってみる。ちょうど通勤ラッシュの時間だったようで、市内の幹線道路はやや渋滞していた。今日は月曜日、一週間の始まりだ。そんな中、こうして宛ても無く街を車でうろついている自分が、若干後ろめたくも感じる。
 適当に走っていると、『沖縄こどもの国』を示す案内板が目に留まった。ちょっと見に行ってみようか。
 『沖縄こどもの国』…いつだったかここに隣接していた『アイランドパーク』という遊園地が閉鎖されてしまい、ただでさえ減少傾向にあった集客数がさらに厳しい状況になってしまって、『こどもの国』自体の存続も危ぶまれているらしい。沖縄県下唯一の動物園が、このままではいつか消滅してしまうかも知れない。…ここ最近、日本のあちこちで遊園地や動物園の閉園が相次いでいる。とくに老舗と呼ばれる施設がどんどん無くなっている。不況、娯楽の多様化、価値観の変化…テーマパークを取り巻く状況はとても厳しい。
 『沖縄こどもの国』は現在一部工事中で、正門が閉鎖されていた。表示に従って進んで行くと、“東ゲート”という小さな入り口に辿り着いた。まだ開園時間では無かったので園内には入れなかったが、フェンス越しに中の様子を見ることが出来た。開園前なので当然人の姿は無い。…頑張って欲しいよね。いろいろと対策を練ってはいるらしいけど、それが上手く効を奏すと良いねぇ。
 今日も、天気は昨日に引き続いてどんよりとした曇り空。小雨まで降っている。さらに風もあって、何だか肌寒い。誰も居ない動物園。…朝からすっかり物寂しい気分になってしまう。…まぁ、それもまた良し。
 この東ゲートの界隈には墓地も在った。崖の上に並ぶ家型、破風型の墓、年季の入った立派な亀甲墓。そんな墓のひとつをふと見ると、納骨口の前で、まだ生まれてからそれほど経っていないと思われる小さな仔犬が三匹、身を寄せ合ってちょこんと座っていた。捨て犬なのか、それとも母犬を待っているのか。僕はその場から離れられなくなって、少し距離を置いてしばらく仔犬たちを見る。仔犬たちのそばにクッキーか何かの進物の空き缶が置いてあったので、誰かがエサや飲み物を与えているのかも知れない。か細い声を鼻から鳴らしている仔犬を見ていると、何だかこっちまでとてつもなく心細い気持ちになってきた。…何か食べ物でも持っていればなぁ。
 …しかし、ずっとこうしているわけにもいかない。後ろ髪引かれる思いで、僕はその場から離れた。ちゃんと生きていかれると良いなぁ。
 車に乗り走り出すと、まったく出来過ぎなタイミングでUF.Oの歌う『童神』がラジオから流れて来た。これは反則だろ〜!泣いちゃうじゃんか〜!どうするんだ、朝からこんな気分になっちゃって…
 

『沖縄こどもの国』のゲート前。
まだ開園前なので閉まってます。
今はここが唯一機能している入り口だとか…

  

経営不振でかなり深刻な状況らしい。
沖縄に限らず遊園地関係はどこも厳しいみたいだよね。
擬人化鼠のテーマパークは好調だけどさ。

  

朝の沖縄市眺望。
今日も時折小雨のぱらつく鈍色の空模様。
何だか肌寒い。

   

墓で身を寄せ合う仔犬三匹。
捨て犬なのか、はたまた野良なのか。
無事生きて行かれるとイイなぁ。

  

『こどもの国』東ゲート周辺には墓が多い。
かつてはグソーだったのかも知れず。
辺りの静けさに心細くもなる。

  

“ポーク&目玉焼きバーガー”。コンビニで購入。
寂しくたって腹は減る。
寂しくたってポーク玉子♪

   

 那覇に行こうと思ったのだが、そのまま南部に向かってしまうことにした。どうせ那覇にはまた帰り際に寄ることになるだろうし。
 糸満に行ってみよう、と思ったのは、単に『白銀堂』の前を通り掛かったから。今まで何度もこの街を通り掛かっていたものの、何となく素通りしていた。いや、厳密に言うと、以前一度だけ漁港の方まで車で行ってみたのだが、手頃な駐車場が見つけられず、結局そのまま通り過ぎざるを得なかった、ということがあって、それ以来どうも足が向かなかったのだ。
 国道331号線から“糸満漁港”の方へと入り、しばらく漁港の周辺をグルグルと周ってみると、公設市場の裏手に公営駐車場が見つかったので、そこに車を停めた。駐車場を管理しているおじさんに「いってらっしゃい」と笑顔で見送られながら、市場の方へ歩を進める。
 まず、歓楽街が現れた。昨日歩いた石川市街を彷彿とさせる…もっと言ってしまえば、沖縄の社交街と呼ばれる場所すべてに通じるような、どこかうら寂しい印象の昼間の歓楽街だ。飾り気の無いコンクリート壁に囲まれた路地を歩いていると、何だか深々(しんしん)とした心持ちになって来る。スナック、バー、サロン…どの店も間口は狭く、その敷居は余所者にはあまりに高い。  それにしても、石川といい糸満といい、これほどたくさんの呑み屋が在るということは、それだけ需要もある、ってことなんだろうか?恐らく、こういった店を利用する客というのは、一旦肌に合った店を決めてしまうと常連になってしまって、他の店に行ったりすることは少ないだろうと思う。糸満漁港周辺にどれだけの酒飲みが居るのかは分からないが、この呑み屋の数はちょっと多すぎるような気がするんだけど…
 そんなことをぼんやり考えながら、やがて中央市場の在るアーケードに差し掛かった。海人(うみんちゅ)の街・糸満の市場だから魚介類がメインの魚市場のような感じなんだろう、と勝手に想像していたのだが、そういった雰囲気なのは市場の入り口付近に在る『あんまー魚市場』ぐらいで、市場そのものは普通の市場だった。中途半端な時間だったせいか、買い物客はそれほど多くは無い。が、ムチャクチャ閑散としているわけでもなく、程好く活気がある、といった状態。アーケードの中に車を乗り付けて買い物をしていく人の姿も頻繁に見られた。
 
 市場界隈から、そのまま漁港の方へと進んでみる。漁はすでに終わったのか、漁港にはほとんど人影が無かった。“糸満漁協”の建物の片隅で、漁師らしきおじさんが7〜8人集まって世間話をしている程度。すっかり弛緩した漁港を脇目に、周辺の街並みをそぞろ歩く。
 それにしても、今日は何だかとても肌寒い。実際の気温は20℃近くあったのだが、吹き荒ぶ潮風がかなり冷たくて、時折霧のような細かい雨と混じって吹き付けてくる。こんな天気だからか、漁港周辺にはまったくと言っていいぐらい人気(ひとけ)が無い。寒いし寂しいしで、だんだんと物悲しい気持ちになってきてしまった。…沖縄に来て、俺は一体何をやってるんだ?とも思ったりする。昨日といい今日といい、わざわざ寂しげな場所に行き、その寂しさに打ちひしがれる、その繰り返し。まさに自虐。一度こういう精神状態になってしまうと、どうもなかなかそこから抜け出せない自分を騙し慰め、いつしか自己満足している。まったく馬鹿な話。
 …まぁいいや。たまにはこんな“沖縄一泊二日”もいいだろう。って、昨日も同じようなこと言ってたような…あ〜!もう堂堂巡り!とりあえず、漁港界隈から移動することにしよう。
 


糸満の中心部に程近い場所にあった。
まさに長屋状態の呑み屋集合物件。
この場末感がたまらない。

  

同じドアが等間隔でズラリと並ぶ。
佇まいから染み出す時間の推移。
切なくもあり、力強くもあり。

  


それにしても、町には必ず在る社交街。
呑み屋の需要がそんなに多いのか?
昼間に開いている店の少なさには驚きます。

    

沖縄らしい鉄筋コンクリートの建物。
壁にシャチハタの印みたいな赤い文字が…
“蔵”って書いてある。…蔵?

  

糸満の中央市場。
それほど広くは無いけど、結構活気はありました。
食堂も何故か満席だったし。

  


“ママの店”ってのが不釣合いでグ〜。
売るのもアンマー、買うのもアンマー。
市場は女性のパワーで溢れている。

  

何だかフリーマーケットみたいな市場の中の様子。
食品のみならず婦人服まで売ってる。
梁の上にも段ボールが…

  

市場の脇にあるくつろぎスポット(?)。
アパートと店舗に囲まれた庭のような場所。
左側のドアが1箇所開いてる。覗いてみると…

  

こんなコーナーが在りました。
「やってきた!」と宣言するほどのことじゃ…
確かに環境にはやさしいとは思うけど。

  

ちょっとコインランドリー風な回収機コーナー。
どれだけ稼動しているんだろうか?
せっかく「やってきた!」んだから活用してほしいよね。

  

リサイクルショップだろうと思う。
やけに扇風機が多いのが気になります。
ひょっとして扇風機屋なのか?

  

…というような感じの“糸満市中央市場”。
手前右には“あんまー魚市場”も在ります。
どちらかと言うと地元の人向けの市場なのかなぁ。

  

糸満と言えば、うみんちゅ(漁師)。
一見ヤ○ザ風のおじさんがたむろしていました。
「落石注意」って…山じゃあるまいし。

  

“糸満漁港”は結構大きな港。
今は漁も終わって静まり返ってますけど。
派手な大漁旗、見たかったなぁ。

  

この漁港の沖であの“糸満ハーリー”が開催される。
でも、あの祭りってGWに開催されるんだよねぇ。
旅費は高いし混んでるしで、観に行くには難あり…

  

…犬。
何だかちょっと寂しいなぁ。
人っ子ひとり通ってないし…(^_^;)

  

食堂の中には何人かお客さんが居た。
妙にカラフルなセーター&パンチパーマな人多し。
このファッションセンスはどうかと思うのだが…

    

おっ!ハーリーで使うサバニだ!
駐車場の脇に積んでありました。
う〜ん、やっぱり派手だねぇ。

  

『糸満プレイランドボウル』というボーリング場。
海っぺりにド〜ンと建っております。
平日の昼間のせいか、お客の姿は無かった様子。

  

そのすぐ脇に在るパチンコ屋。
ここにはそこそこお客が居ました。
目の前は海。オーシャンビューなパチンコ屋。

  

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