(汎用久米島観光 その3)


 次に僕らが向かったのは“ヤジャー洞”だった。ここには主洞とは別に(恐らく風葬の名残だと思われる)人骨が転がる洞穴がある。それを見たときのKの反応は?というと、これが拍子抜けするぐらいにあっさりとしたものだった。でも、何だか少しホッとした。ここで「うわっ!人骨だ!」などと大騒ぎされても困るし。
 この骨は、たぶんかつて風葬された人の骨をこの洞穴に集めたものだろうと思う。この洞穴そのもので風葬が行なわれていたのかどうかは分からないけど…「人の骨がごっそりと積んである」と言うと、酷く愕々しいイメージを抱かれるかもしれないけど、実際に目にするとそれらはむしろ素っ気無いぐらいに静かに、そこにある。何となく「人って死ぬとこうなるんだね」と自然な気持ちで思えてくる。潔いような、ちょっとばかり寂しいような…
 …あ、肝心の主洞に入らなくちゃな。主洞の狭い入り口をくぐり抜けると、想像を遥かに凌ぐ広い鍾乳洞に出る。Kも僕も気分はすっかり“川口浩in水曜スペシャル”状態。猛烈な湿気と滑りやすい足元にドキドキしながら洞内をウロチョロと歩く。飾り気の無い洞内はまさに“秘境の洞窟に巨大ナマズを見た!!”とか何とかいう例の胡散臭い『水曜スペシャル』を彷彿とさせる。…ちょっとオーバーか?
 
 “ヤジャー洞”を後にして、『上江洲家住宅』、“五枝の松”、“おばけ坂”と立て続けに久米島の観光スポットを見て回った。とくに“おばけ坂”はKもかなり面白がっていた。車に乗ったままの状態で坂の途中で車を停め、ブレーキから足を離すと…ありゃりゃ、車が坂を下るどころか、勝手に上り坂を登って行く〜!「これ、結構面白いねぇ」と、Kは同じ動作を何度か繰り返した。僕らが坂を去るとき、入れ違いで訪れた他の車も僕らと同じ動作をしていた。う〜む、ひょっとするとこの坂は久米島で一番ホットなスポットになりつつあるのかもしれない(ホントかよ…)。
 それにしても、ホントに今日のKはサメ・ドライブをしない。と言うか、久米島がKのノンストップ走行を阻止してくれている。これだけ観光名所が幹線道路周辺にポンポンと集中していれば、さすがのKさんもいつものようにダラダラと宛ての無いドライブをすることは出来ないようだ。これってかなりコストパフォーマンスの高い観光旅行、って感じがするなぁ。「半日以上掛けて行ったところが『道の駅・許田』だけ」なんていうマヌケな旅を展開するのが得意なKにしては、順調すぎるぐらいに順調な観光スポット巡り。島の広さも手頃だし、これはなかなかイイぞ〜。
 “おばけ坂”に居るとき、急に雨が降り出した。ザ〜ッと地面を叩きつけるように強く降った雨は、数分後にピタッと止んでしまった。まさにスコールのよう。「何だか沖縄っぽいねぇ〜」などと盛り上がる僕ら。やがて“おばけ坂”からユラユラと陽炎が湧きあがってきた。ちょっとした“天気のショー”を見てるような気分になる。
 


見てのとおり、“ヤジャー洞”の入り口。
この看板が無ければ気づかないような狭い入り口です。
この時点ですでにちょっとした探検気分。

     

洞内は予想以上に広い。
照明が少なくてちょっと怖いかも…
この写真も何だか心霊写真っぽいし(^_^;)

  

『玉泉洞』や『竜宮城鍾乳洞』とは異なる趣き。
ワイルドで飾り気はゼロ。
足元も滑りやすいし…自ずと慎重になってしまう。

  


洞の周辺は鬱蒼と茂る雑木林。
夜には近づきたくない感じ。
すぐそばに人骨もあるしねぇ…

  

『上江洲家住宅』。
約250年前に建てられた沖縄でも最古の民家。
どっしりとした風格が漂っております。

  

家の中には上がれませんけどね。
昔々の沖縄の空気をちょっとお裾分けしてもらおう。
少しばかり畏まった気持ちで。

  

トートーメーなどの仏具(?)が置かれている一角。
僕が何故か関心を引かれるジャンル。
沖縄の宗教観や死生観はとても興味深し。

    

やっぱり赤瓦は青空によく映える。
これを見ただけで「沖縄」って感じがする。
くたびれたコンクリート建築も大好きだけどね。

  

素材の原型を活かした素朴な佇まい。
温もりを感じさせてくれます。
暮らしの匂いもしっかり残ってるし。

  

これは…納屋かな?
甕やら臼やら籠やらが置かれてますね。
ランプまでぶら下がってます。

  

“五枝の松”。巨大盆栽という印象。
“日本の名松100選”に選ばれてます。
他の99松がどこにあるのかは知らないけど。

    

“おばけ坂”。
下り坂に見えるけど、実は上り坂。
空き缶やボールを使うより車で実験したほうが面白いよ。

  

 “天気のショー”はさらに続く。
 ガイドマップを見ながら、Kが「“鳥の口”っていうのに行ってみよう」と言った。島の南端に位置する景勝地だ。僕らが島尻に向かって車を走らせると、空に大きな虹が掛かった。
 「お〜!今年3度目の虹だぁ!」と年甲斐も無くワクワクする僕。Kも虹を見て一瞬だけ「結構デカいね〜」などと関心を寄せたが、すぐに興味を失ったようで、助手席で大騒ぎしながらデジカメのシャッターをバカみたいに押しまくる僕を半ば無視し、グングン車を南へ進めて行く。
 僕もワーワーと騒ぎながらも「きっとすぐに消えてしまうだろう」と思っていたのだが、この虹がなかなかしつこくて、仲泊の集落を抜けて島尻に差し掛かってもまだしっかりと上空に弧を残していた。いや、それどころか、島尻の海岸線に出ると、それまで一重だった虹の弧が、いつの間にか二重になって海の上に2本のアーチを作り出していた。
 「おっ!スゴイスゴイ!海に架かる二重の虹だ!!」これにはさすがのKも普段より幾らか色めき立って、僕らは車を停めて、しばらく2本の虹に眺め入った。
 「う〜ん、これで水平線あたりをイルカか何かがジャンプでもすりゃ、まるで絵に描いたような“南の楽園”のイメージ映像、って感じだねぇ」
 「なんかさ、『ダブルの虹を見ると運勢が良くなる』とか、そういうジンクスって無いのかなぁ?」
 「さぁ…あまり聞いたこと無いけど…」
 などとしゃべっているうちに、一方の虹がだんだんと薄くなってきて、やがて普通の一本の虹になってしまった。時間にすると約5分程度の短い“ダブル・レインボウ”だったわけだけど、何だかすっかり得した気分になる僕。「こりゃあきっと今度の旅が良い旅になる暗示に違いない!…って、明日東京に帰るんだったっけ(^_^;)」
 

薄いけど、虹です。
実際にはもっとハッキリ見えました。
かなりデッカい虹に大人気なく感激!

  

虹の写真をバカみたいに撮りまくる僕。
それを醒めた目で見るKさん。
ちぇっ、面白くねぇの〜。

  

分かりづらいけど、二重の虹です。
かなりデカくて写真に収まり切らなかった。
いや〜、貴重なものを見せてもらった気分♪

  

海に架かる虹のアーチ。
これって結構ロマンチックな光景だよね?
虹に大はしゃぎする32歳の男=俺。

  

 ♪インドの山奥でッ 修行して〜 ダイバダッタのたましい宿し〜…と、とりあえずレインボーマンのテーマソングを歌いながら、僕らは“トクジム自然公園”の界隈に到着した。広がる大海原を見下ろす展望台の周囲には、結構広い範囲に渡る遊歩道が整備されているのだが、僕もKもあいにくそのすべてを完歩しようなどという気力も根性も持ち合わせて居らず、遊歩道に入って比較的すぐのところにある展望台に登って、そこから久米島の南端の海を眺めるだけでもう充分。
 展望台に登ると、遮るものの何も無い猛烈な潮風がバリバリと凄まじい音を立てながら、僕らに突進してくる。「うぉぉぉ!」と低く呻きながら、僕らは少しの間その場に佇んで、海原や傾き出した陽光を見ていたのだが、風の強さに根負けして、さっさと展望台を離れてしまった。やっぱり岬の風は侮れない。
 「もうそろそろレンタカーを返して、空港に行こうか」とKが言う。確かにもうそんな時間になろうとしていた。
 「そうだね」と僕も同意し、ゆっくりと車を仲泊集落まで走らせる。

 道中、僕はKに「どうだった?久米島は…」と訊ねてみた。「うん、案外見るところがいっぱいあって、よかったと思うよ」とKはそれなりに今回の訪島に満足している様子だった。「“はての浜”に行けなかったのはちょっと残念だったけどね」
 「…まぁ、はての浜はまた機会があったら、ということで」 僕は今回“はての浜”に行かれなかったことが、正直言ってかなり悔いの残る部分ではあったのだが、二重の虹を見れたことが実は一番印象に残った出来事だったりした。ひょっとすると、もう今後こういう光景に遭遇することは二度と無いかもしれないし。
 久米島のことをあれこれと話すうちに、仲泊にあるレンタカー屋に着いた。車を返却し、僕らはそのまま久米島空港まで送迎車で送ってもらう。スタッフの女性が運転しながら「どうでしたか?久米島は」などと訊いてきたので、僕は空かさず「さっき二重の虹が出てたの、見ました?」と逆に訊ねてみた。すると、彼女はそれに気がつかなかったらしい。内心、僕は「勝った!」と密かにほくそえんだ。…何が「勝った」んだか…
 

“トクジム自然公園”辺りの海。
ゴツゴツとした岩が目を引きます。
広々とした海原が実に気持ちイイ。

   

だいぶ陽が傾いて来ています。
ここから見る夕陽、きっと綺麗だろうなぁ。
ま、それはまた次の機会にでも。

  

沖に見えるのは“トンバラ岩”。
小さく見えるけど、高さ50mちょっとあるらしいです。
近くで見てみたいなぁ。

  

“トクジム自然公園”の展望台からの眺望はバツグンです。
海はもちろん、周辺の丘や畑もぐるりと見渡せる。
吹きっ晒しなので風はかなり強いですけどね。

  

見どころのひとつ“鳥の口”を見たいならば、
ホントはもっと先まで進まないと見られないらしい。
ま、今日はここまで、ということで…

     
 
 久米島空港に着き、空港内の売店などをウロウロと物色しているうちに飛行機の出発時間になり、バタバタと搭乗。帰りの便は普通のJTAの飛行機で、機内誌『コーラルウェイ』などを捲っている間にさっさと那覇に戻って来てしまった。

 「さて、今晩が沖縄滞在最後の夜だねぇ」ということで、僕らは国際通り界隈を、宛ても無くかなりの長時間に渡ってほっつき歩いた。しかし、途中から小雨が降り出してきたので、僕らは夜のほっつき歩きを切り上げて居酒屋に逃げ込んだ。
 『ふるさと万歳』という『ホテル国際プラザ』の2階にある居酒屋には、今までにももう何度か入っている。Kは何故かこの店がお気に入りのようで、とくにここ数年はほぼ毎年利用している。まぁ、確かにいかにもな沖縄料理から一般的な居酒屋メニューまで、かなり豊富に取り揃えてあるのは嬉しいけどね。さすがに毎晩毎晩沖縄料理じゃあ、だんだん飽きてくるもんなぁ。
 「何を頼もうか?」 「そうだな…じゃ、アジの活き造り!」 「イイねぇ。それと…鶏ささみ揚げも!」 「海老天!」 「チーズはんぺん!」…って、これじゃ本土の居酒屋で呑んでるのと変わらないのでは?沖縄最後の夜だというのに…
 この店の窓からは、ちょうど国際通りの松尾の交差点辺りが見下ろせる。通りを行き交う人の中に傘を差している姿が見えるということは、どうやら雨が降っているようだ。明日は天気が悪くなるんだろうか。
 「明日は午後2時の飛行機に乗るから、どうせあまり遠くには行けないよね」とKが言う。…まぁね、僕ひとりだったら朝早くに起きて、中部もしくは南部辺りを一巡りするぐらいなら可能だけど、目覚めがゆっくりなKさんにはちょっとキツいやねぇ。
 明日は、飛行機の時間まで牧志の市場界隈をのんびりと歩くことに決めた。だいたい最終日はこのパターンになることが多い僕らではある。
 沖縄で過ごす最後の夜は、決まって少しばかり寂しい気持ちになる。とくにKは、年に一度の沖縄旅行ということもあって、そのテンションの下がり様たるや、つられて僕まで暗い気分になってしまうほどだ。
 「せめて1ヶ月ぐらい沖縄に居られたらイイのになぁ…」 Kがそうつぶやく。
 「そうだね、旅行資金の問題を気にしなくて良ければ、それぐらい居られるとあちこちに行けてイイよなぁ」
 …お気づきの方もおいでだろうと思いますが、僕らの沖縄旅行って、実は結構お金が掛かっている。宿は比較的リーズナブルな民宿やビジネスホテルを利用しているし、羽田〜那覇間の航空料金に関しては“早割り”などの割引サービスを利用しているけれど、那覇から離島に行く飛行機代はせいぜい往復割引が利く程度だし、島での移動はレンタカーを使うことが多い。おまけに、こうして毎晩毎晩居酒屋や割烹料理店などで飲み食いしているわけだ。夜な夜なふたりで一万円強の食費を使っているとなると…無茶苦茶エンゲル係数の高い旅行をしているような気がする。これだったら、旅行会社のパックツアーか何かで沖縄に来るほうがずっとお得でなおかつ優雅な沖縄滞在を堪能できるはず。総ては僕らの計画性の無さと勝手気ままさ加減が招く結果ではあるのだけれど。
 「…この7日間で使った金を計算すると、かなり怖い金額になるよね、きっと」
 「そうだよね、ちゃんと計算したことは無いけどね…」
 結局、この夜もやはり一万円をオーバーする豪勢(?)な飲食代を消費し、僕らは満腹&ほろ酔いでヘロヘロになりながら、徒歩約3分で辿り着くホテルに戻り、倒れるようにベッドに入った。
 時間を気にせず、自由な気分で過ごす夜の心地良さ。しがない会社員の僕らにとって、これは何よりの贅沢なのだった。“時間の束縛からの解放”――僕らがこうして毎年沖縄にやって来る大きな理由のひとつは、きっとここに在る。旅行者として沖縄に訪れる僕らが享受する最大の歓び。例えその引き換えに高い飲食代を支払うことになったとしても、僕らには微塵の後悔も無いのだ。…たぶん。
 

久米島の特産品のひとつ、久米島味噌。
その味噌をクッキーにアレンジしたユニークな一品。
これ、結構美味い。個人的にはオススメです。

  

具志川村と仲里村が平成14年4月に合併。
久米島町が誕生しました。
何かと市町村合併が盛んなご時世ではあります。

  


那覇空港からバスで中心部に移動中。
“ゆいレール”が開通するとバスにも影響が出るよね。
かと言って沖縄=車社会の構図が変わるとも思えないが。

  

『パレットくもじ』前。
この辺りに来ると少しホッとする。
何だかすっかり第2の故郷と化してる感あり。

  

『ふるさと万歳』は『ホテル国際プラザ』の2階にある。
寿司もあるのでとくにKさんはお気に入りのようです。
いつもビールジョッキが凍ってるのもご愛嬌(?)

    


これは…確か“うべ豆腐”だったと思う。
その名のとおり、紅芋の入った豆腐だったような…
味はさっぱり憶えてないけど(←ただの酔っ払い)

   

これは…確か“タコライスボール”とかいう料理だったかな?
真ん中にあるのがタコスのサルサソース。
揚げ物の中身は…これまた憶えてません(←やっぱりただの酔っ払い)

  

表紙へ              前のページへ             次のページへ