何度来てもやっぱり…


 ニシ浜!嗚呼、ニシ浜!僕は最大級の賛辞の言葉を贈ろう。愛してるぜ〜!!
 …と、すっかり我を忘れてしまうほど、僕はこの浜を目の前にすると胸が躍る。浜へと下る坂道から見えて来るニシ浜の海の色に感嘆のため息をつき、浜辺に辿り着けば辿り着いたで、またまた感動する。これはもはや愛情と呼んで間違いない。僕はすっかりニシ浜の虜なのだ。もう好きにしてくれ〜、ってな気分である。
 Kもやはりこの海にはかなり心酔している様子で、僕らは並んで砂浜に立ち、しばらくボ〜ッと海を見つめる。海を見ているだけでこんなに満ち足りた心持ちになれるなんて、そうそうあることじゃない。
 「やっぱりイイねぇ、ニシ浜は…」 Kがつぶやく。まったくそのとおりだと僕も思う。このやさしい海原の青い色、穏やかな波、白い砂浜、周囲を包む静けさ、どれをとっても素晴らし過ぎだ。
 僕らは浜の東側にある堤防の下の辺りに陣取り、砂の上に腰掛けてまずはビールで乾杯する。
 「いやぁ、来たねぇ」 「うん、来たねぇ」
 この海を肴に、ビールを飲む。オリオンビールが格別に美味い。こんなに幸せな気分になっちゃってイイのか?と後ろめたく感じるほどに、僕は心の底から絆された気持ちになる。「ありがとう!ニシ浜!」と感謝したいぐらいだ。
 僕は“癒し”という言葉があまり好きではないけれど、ニシ浜には確かにそんな効力があるような気がする。ただぼんやりと海を眺めているだけで、ホントにただそれだけでも良い。柔らかく青く光る海と、やさしい波の音が、胸の奥まで染み透る。

 …とは言え、せっかくだから泳がなきゃな。僕はコソコソと海パンを装着し、さっき買った魚肉ソーセージを片手に、サンダルを履いたままでジャブジャブと海に歩き出す。
 このビーチは遠浅で、砂浜を離れて沖に向かって行くとすぐに足元はゴツゴツとした岩場になってくる。岩場の陰にはスズメダイなどの熱帯の小魚がチョロチョロと泳ぐ姿が見えて、ちょっとした水族館気分だ。
 よし、じゃあこの辺でさっそく熱帯魚の餌付けに挑戦だ。普通に立っていてもせいぜい腿(もも)の辺りまでしか浸からないような浅瀬ではあるが、僕は水の中にうつ伏せに寝そべるような格好になって、魚の群れに向かってソーセージをヌッと差し出す。と、寄って来るわ寄って来るわ、笑っちゃうぐらいに魚がソーセージ目掛けて群がってくる。ソーセージをちぎって、水中に放ってみる。と、ユラユラと落ちていくソーセージの欠片を追って魚がワサッと移動する。久しぶりに体験した“魚との戯れ”に僕は完全にハマり、ソーゼージをちぎっては投げ、石垣港で買った“写ルンです”で水中の魚の様子をバシバシと写真に収める。
 次第に岩場の浅瀬では飽き足らなくなって、僕はさらに沖のほうへと進み、海の色が一段と青くなっている水深の深いところに潜ってみるのだが…これが凄く深いのだ。それまでは歩いて移動できるほどに浅かった海底が、急にドコ〜ンと深くなる。まったく足が地に着かない状態。僕は一応人並みに泳ぐことは出来るのだけれど、さすがにこれだけ深いとちょっと不安な気持ちになる。バチャバチャと泳いだり、少し潜ったりを繰り返していると、当然だがだんだん疲れてくる。が、ひと休みしようにも、海底に足が着けられない。何となく、泳げない人が水に浸かってパニックを起こす気持ちが分かるような…
 
 かなり長時間に渡って海に浸かっていた僕が砂浜に戻ると、Kはまだ服を着たままでぼんやりと座っていた。
 「あれ?Kは今年も泳がないのか?」 「う〜ん…どうしようかなぁ」
 「キレイだぞ〜、海の中。魚もいっぱいだぞ〜」 「…じゃあ、ちょっとだけ泳ごうかな」
 Kはおもむろに海パンを履き、冨嘉の売店で買った“おばあちゃんのお茶菓子”みたいなお菓子の袋を手にして、海に向かおうとした。
 「そのお菓子、どうするつもりだ?」と僕が訊くと、「これで魚を誘き寄せるんだよ」と言う。
 「そんなんで魚が寄って来るのかぁ?まだ魚肉ソーセージが残ってるから、それを持って行けよ〜」という僕の言葉を無視し、Kはそのまま海に進んで行った。
 僕は使わなかった魚肉ソーセージを食べながら、海を眺める。海の中もイイけど、やっぱりこうして砂浜から海を眺めるのもイイなぁ。しばらくそんなふうにしていると、だんだんと眠たくなる。眠たくなるほど幸せな気分だ。このまま寝ちゃおうかなぁ、と思っていると、Kが海から戻って来た。
 「どうだった?魚、いっぱい居たろ?」
 「うん、居た居た。でも、このお菓子じゃやっぱり寄って来ないね。それにこのお菓子、水に入れるとすぐ溶けちゃってさぁ」
 「ちょっとした海洋汚染じゃないの?それ…小麦粉なんて魚は永久に食わないような気がするよ…無難にソーセージを持って行きゃあいいものを…」
 「いや、実験してみようと思ってさ。でも、お菓子が水に溶ける、ってのは誤算だったな」
 「……」
 
 とにかく、僕らはたっぷりとニシ浜でののんびりタイムを満喫した。この日のニシ浜には結構たくさんの人が居たのだが、そんなことはまったく気にならなかった。家族連れもカップルもひとりの人も、みんなどこか穏やかに海を楽しんでいた。きっとニシ浜の雰囲気がそうさせるんだろう。“海の家”みたいなものも無いしね。とても良い具合に緩んだ空気と時間の中で、思い思いのかたちでニシ浜を味わう。…クドいようだけど、やっぱりニシ浜はイイ!何度来てもイイ!僕は(幸運なことに)晴れたニシ浜しか知らないのだが、雨のニシ浜や台風で荒れるニシ浜も見たい。早朝や夕暮れ時、夜のニシ浜のことも知りたい。島の人たちにとってのニシ浜も知りたいし、ここを訪れた人たちにとってのニシ浜のことも…
 やっぱり、これはたぶんきっと愛だ(『愛の水中花』風)。となると、こうして「もっと知りたい」と思っているうちが花なのか?とも思ったり。いや、気心が知れてまったりとするのもまた良し、なのか、などといろいろと思いを馳せてみたり。
 時間が経つにつれてだんだんと潮が満ちてきて、浜辺に居る人の数も減ってきた。そろそろ我々も引き上げようか。
 「まだ少し船の出発まで時間があるよね。『モンパの木』に寄りたいんだけど、いいかな?」とKが訊いてきた。Kさん、キミはホントに好きなんだねぇ、『モンパの木』が。
 

ニシ浜。僕が一番好きな海。
僕の波照間病はここからはじまりました。
そして、今もなお続いています。

  

何度来ても、この海を見ると感動する。
ここに来るときは天気も味方してくれるみたい。
いっつも晴れてるもんね♪

    

くどい!と言われようと、しつこい!と罵られようと、
同じようなニシ浜の写真を馬鹿みたいに撮りまくる。
で、旅行記に貼りまくる!

  

かなり沖のほうまで歩いて行かれます。
波も穏やか、足元は透明。
島ぞうりか何かでズンズン進んで行こう。

  

この浜辺のためだけに波照間に来てもイイぐらい。
…というのは思い煩う人間の欲目?
いや、そんなことはないはず!

  


こんなチンケな写真の100倍は綺麗です、実物は。
ただ綺麗なだけじゃなく、とても静かなビーチ。
人が多くても、不思議と気になりません。

  

波紋。光が織り成す芸術品。
しかも一瞬で消え去っていくもの。
消えては生まれ、また消えて。

  

手前はゴツゴツとした珊瑚の岩場。魚がたくさん居る。
沖の海の色が濃くなってる部分は水深がグンと深くなる。
足が着かないぐらいに深いので、一瞬焦ります。

  

珊瑚の岩場に群れる南国の魚たち。
ちょっと顔を水につけるだけでお目にかかれます。
エサを持ってると怖がりもせず集まってくる。

  

…すみませんねぇ、写りが悪くて(^_^;)
何しろ“写ルンです”で撮影したもんですから…
しかも波に揺られながら…

  

沖の海面の色が濃くなる辺り。急に深くなります。
魚の顔ぶれも少しだけ変わってくる。
それにしても水の透明度が高い。

  

あまり海中の様子に気をとられていると…
とんでもなく水深の深いところまで行っちゃう。
恐らくカナヅチの人は恐怖に陥ります。気をつけて。

  

小さな彼の目に、この海はどう映ったのだろう?
いつか彼が大きくなって、またここを訪れても、
どうかこのままの美しい海でありますように。

  

あたりまえのものとして、そこにある。ということ。
いままでも、そしてこれからも。
決してそれが途絶えてしまうことの無いようにと。

  

 ニシ浜から少しだけ集落の方向に戻り、Kさんのリクエストに従って、波照間みやげの店『モンパの木』にお邪魔する。この店で売られている商品のほとんどは、このお店でしか手に入れることの出来ないオリジナル商品ばかり。間違ってもゴーヤーマングッズとか沖縄限定パインハイチュウとかは売ってないのだ。どの品物も手作りの匂いを感じさせるもので、カラフルな色使いとポップなデザインが実にナイス。藍染めのグッズや民芸品なども扱われていて、決して広くは無い店内は、心地良い具合に賑やかだ。
 Kがこの店を訪れる目的は…“波照間Tシャツ”を買うことだ。何度も言っているけど、彼はとにかくTシャツを頻繁に買う。で、波照間に来ると必ずここ『モンパの木』に立ち寄り、必ず波照間Tシャツを買う。それでいて、彼がそのTシャツを着ることはまず無い。K曰く「記念品として買う」んだとか。まぁその気持ちは分からないでもないけど…ひょっとすると、Kは波照間Tシャツを全種類揃えるつもりなのかもしれない。果たして何種類あるのか分からないが、今までの彼の勢いだと、それも強(あなが)ち遠くないうちに実現しそうな…
 普段、店内は無人のことが多い。お客が店の敷居を跨ぐと“ピンポ〜ン”だか“ピロリロ〜ン”というような呼び鈴が鳴るような仕組みになっていて、それを自宅に居る奥さんが聞きつけて店に現れる。店にはドアらしいドアも無く、かなり無防備な状態なのだが、それでも店番をしなくてもOK、というあたりが島ののどかさ&平和さ加減を如実に表しているとも言える。
 奥さんとあれこれと話をしながら、店内の商品を物色する。KはもちろんTシャツに真っ先に飛びつく。僕はタオルと缶バッジを買った。…ふとKを見ると、なんと彼の腕には3着のTシャツがしっかりと抱きかかえられていた。
 「オマエ、そんなに買うの?」と僕がKに訊くと、空かさず奥さんが
 「あら、いいじゃないの〜。たくさん買ってくださぁ〜い」と言って笑った。この奥さんが、なかなかサバサバとした感じで楽しいのだ。Kは奥さんの援護射撃にすっかりいい気になって、結局Tシャツ4着お買い上げした。…また“記念品”という名の箪笥の肥やしが増えるわけだね。
 購買欲が満たされホクホク顔のKは、「そろそろ港に行こうか」と言った。「そうだね」と僕も同意する。
 港に向かう道すがらに見える、青く輝くニシ浜の海。出来ることなら、この海を家まで持って帰りたい!と心底思う。いや、せめてこの海の何億分の1でもいいから…僕はもう未練タラタラである。あ〜、帰りたくないよ〜!
 

波照間に来たら一度は寄りたい『モンパの木』。
ここでしか手に入らないものがたんまりと揃ってる。
単なるみやげ物屋とは、ちとばかり違うのだ。

    

って、お店自体はかなりこじんまりとしてますけど。
KはとくにここのTシャツがお気に入りのご様子。
かく言う僕も2着ばかり持ってます。

  

奥さんの手作りらしいので、どちらかと言うと女性向かな?
僕は缶バッチとかタオルとかを買うことが多いです。
さすがにイヤリングとかは…なぁ…

  

何だかピンボケな写真ですみません。
これが“波照間ロゴ”缶バッジであります。
他にも幾つかパターンがあります。

  

 レンタサイクルを返却して、波照間港の待合ターミナルへ。船の到着までまだ少し時間があったのだが、ターミナルの中で待つことにした。
 ターミナルに入ると、向かって右側にある乗船券などを取り扱うカウンターからは、(有線放送だろうか)演歌が大音量で流れていた。片や、向かって左側にある食事処『海畑』からは、夏川りみの歌う『涙そうそう』がこれまた張り合うような大音量で流されている。左右からまったく違う音楽が同時に流されているというこの状況。…うるさいよ!どっちかにしてくれ!しばらく“演歌vs夏川りみ”の混沌とした音楽争い(?)が続いていたのだが、やがて発券カウンターの側が根負けしたのか、演歌は聞こえなくなった。
 「それにしても、夏川りみはどこに行っても掛かってるね」と、Kが言う。確かにそのとおりだ。昨日、西表島をドライブしている最中も、夏川りみの歌声をカーラジオで何度も聴いた。それから『童神』。ご丁寧にも本家・古謝美佐子バージョン、夏川りみバージョン、U.F.O(=花*花の別名義ユニットらしい)バージョンの3つが掛かったり。それまで『童神』を知らなかったKでさえ、すっかり憶えてしまうほどのオンエア率だ。石垣島の繁華街を歩いていても、あちこちの店のBGMに夏川りみが使われていた。まるで“夏川りみブレインウォッシュ”な勢いである。これはちょうど、僕らがはじめて沖縄本島に訪れた93年に、やはり街のあちこちでTHE BOOMの『島唄』がしつこく流されていたときのことを彷彿とさせた。しかし、こうも激しく夏川りみの『涙そうそう』一色な環境に置かれると「ビギンの歌う『涙そうそう』も聴きたいなぁ…森山良子の『涙そうそう』も…」という気分になってくる。もちろん、夏川りみには何の罪も無いのだけど。

 ターミナルでボケ〜ッとしながら船の到着を待つこと約20分、“ニューはてるま”が波照間港に入って来た。とにかく、とても名残惜しかった。4時間近くもニシ浜に居たというのに、まだこんなに後ろ髪引かれるなんて…我ながらまったく呆れてしまう。
 「…なぁ、波照間で一泊しない?一度くらい波照間に泊まってみたいじゃんか」という僕の提案を、Kは「それはまた別の機会にね」と軽く受け流し、さっさと船に乗り込んで行った。ちぇっ、つまんねーの。
 やがて船が出港し波照間を離れるのを、僕はしばらくデッキから眺めた。また帰らなくちゃならないのか…波照間から。前回の旅行で島から離れるときは、乗る予定だった船が欠航しちゃったりして慌しかったせいもあって、それほど感傷的な気分にはならなかったのだが、今度ばかりはかなり堪(こた)える。波照間に来るといつもそうだ。島を離れるときには「帰りたくない!」というややミーハーな感傷に襲われる。僕は“ニューはてるま”のデッキから、見えなくなるまで島を見送った。
 デッキから船室に戻ると、Kは案の定ぐっすり眠っていた。僕もシートに座ってちょっと居眠りをしようと思うのだが、結局眠れないまま石垣港に着いてしまった。
 

港の待合ターミナル。
ここってゴミ箱が無いんだよねぇ。
「ゴミは持ち帰りましょう」ってことなのかな?

  

手作り感溢れる写真つきの白地図。
あまりに大まかなので参考になるかどうか…
描き込まれているのは島の幹線道路のみ。

  

お、『海畑(イーノー)』にお客が。
島のオジィみたいです。ビールを呑んでました。
明るいうちからビール、イイねぇ。

  

なかなか勉強になるよね。
島にはパイン畑が無いんだって。確かに見覚えが無い。
「なぜってパインが出来ないからさ!」

  


島では水だってとても貴重なものなのです。
地下水や海水を上手に利用してます。
節水、節水!

  

おお!あの幻の“泡波”の一升瓶?!
…実は手のひらサイズの小瓶です(^_^;)
希少価値ゆえに値段が高いんだよね、泡波って。

  

波照間を離れるときは、いつも名残惜しい。
いつまでも船から島影を見送ってしまう。
「また来るよ!」と心に誓いつつ。

  

石垣港・離島桟橋に戻ってきました。
友人Kとの今年の八重山離島の旅も、もう終わり間近。
なんとなく感傷的な気分にもなります。

  

 民宿に戻ると、例の新管理人のおじさんが、ロビーのソファーに座って、大音量でテレビを観ていた。
 「ああ、おかえりなさい。今日はどこか行かれてたんですか?」とおじさんが訊いてきた。
 「はい、波照間島に…」
 「ほぉ、波照間まで。天気も良かったからねぇ。泳ぎました?」
 「はい」
 「まだ海の水も温かいですからね」
 などと会話をしながら、ふと思ったこと。果たして石垣島の人って、用事が無くてもわざわざ離島に出かけたりすることがあるんだろうか?という疑問。
 そういえば、沖縄本島の南部で生まれ育った知り合いは「名護より北には今まで一度も行ったことが無い。行く用事が無いから」と言ってたっけ。離島から石垣島に出て来ることはあっても、その逆は案外少ないのかもしれない。そう考えると、なかなか複雑な思いがする。ついついこれらの島を“八重山”と一括りにしてしまう僕だけど、島と島との繋がりって一筋縄ではいかないものなのかもなぁ。一瞬、昨日西表で見た“町役場移転実現!”の看板が脳裏をちらついた。
 「これから食事しに出かけるでしょ?私はこの後、ちょっと留守にしますので、よろしくお願いしますね〜」と管理人さんが言う。…う〜む、やはりどうも動きの読めない管理人さんである。今朝だってここには居なかったし…

 部屋でぼんやりとテレビを観たり風呂に入ったりして、だいぶ日が暮れてから僕らは美崎町界隈へ出かけた。僕が『八重山村』という居酒屋に入りたいと主張し店の前まで行ってみたが、店内は超満員の状態だったので仕方なくあきらめた。個人的に好きな店なんだけどなぁ。
 で、あちこち迷って結局辿り着いた店は、昨夜入った『山海亭』のすぐ隣りにある『ゆうな』という店。…この店にも何度か入ってる。やっぱり手堅いところで収まってしまう、僕らの勇気の無さ(^_^;)
 しかし、この店の料理もかなりイイ。Kさんがご所望のお座敷もしっかり完備。今晩は、石垣で過ごす最後の夜だということもあって、僕らはどちらとも無くしみじみモードに突入しはじめる。
 「よかったねぇ、波照間。西表も去年よりは充実してたし」とKが言う。充実…してたのか?
 「やっぱりイイね、八重山は。出来れば住みたいぐらいだね」と、Kが続ける。この男、ホントによく分からない。端から見てるととてもそれほど熱い想いを抱いているようには見えないのだが…
 「そんなに八重山がイイと思うんだったら、もう一日ぐらい石垣滞在を延長しないか?俺はそうしたいんだけど」と僕が提案する。
 「う〜ん…でも、本島にも行きたいし…ほら、本島はドライブし甲斐があるじゃん。いろんなところに車で行けるし」
 「結局それかい。ヤダなぁ〜、またしてもKのサメ・ドライブの餌食にされちゃうのか、俺…俺が可哀想…」
 「あ!そうだった!あのさ、明日は時間的に無理だけど、明後日に“久米島”に行こうよ!」
 Kが急に思い出したように言った。ちょっと意外な提案に、僕はかなり戸惑う。
 「え?それは構わないけど…何でまた久米島なんだ?」
 「…なんとなく」
 「またそれかよ!Kは何だって“なんとなく”なんだからなぁ…でも、明日以降はあまり天気が良くないみたいだよ。天気が悪い久米島って、何だかちょっと勿体無いような…」
 「ささきは一度行ったことがあるんでしょ?久米島。“はての浜”にも行ったの?」
 「…いや、行ってないんだよねぇ…」
 「行ってないの?久米島に行ったのに?」 「…悪かったな。Kに言われたくないよ」
 「じゃあ、今度は“はての浜”にも行こうよ」 「はての浜かぁ…」
 そんなわけで、明後日は久米島に行くことになった。僕が今ひとつ久米島行きに乗り切れなかった理由、それは久米島でもKのサメ・ドライブが繰り広げられるのではないか、という危惧があったからだ。相手がKじゃなかったら、こんな心配はしなくて済むんだけどねぇ。
 ともかく、この夜もラストオーダーの声が掛かるまで、僕らはあれやこれやと八重山や沖縄の話をしながら、飲み食いしまくった。ちょっと酔っ払ってフラフラな足取りで、僕らは次第に活気付いてきた美崎町を歩く。深夜0時を過ぎると、グンと賑やかになるこの歓楽街。夜の解放感と旅先の解放感、そして酔いが連れてくる解放感。僕はすっかりイイ気分になって、鼻歌なんぞを歌いながら街を闊歩する。夜風は少し涼しく心地良い。僕らは石垣最後の夜を名残惜しむようにしばらく宛ても無く歩き回った後、宿に戻った。

 波照間に行ったその夜は、僕は決まって波照間の、ニシ浜の夢を見る。夢の中のニシ浜は、ただひたすらに青く透明で、乾いた潮騒の音がやたらとデカく鳴り響いている。僕はそれを、何かやわらかいものにくるまれているような感覚で見聞きしながら、胸の中がグングンと澄み渡っていくのを感じている。…のだけれど、目が覚めると、頭の中に残っている夢のニシ浜は途端に白黒の景色になってしまう。「夢だったんだ…」と気づいて、何だか無性にやるせない気分になる。僕にとってこの夢は、とても幸せな夢であると同時に、とても悲しい夢でもあるのだ。
 

今宵はここ『ゆうな』で過ごすことにしよう!
この店も僕らの好きな店のひとつ。
今夜も郷土料理三昧だぜ〜♪

  

実はすぐ隣りに昨夜入った『山海亭』があります。
この辺りの店はどこも比較的ハズレ無し。
安心して入れる優良店が多い、と個人的には思う。

  

“スクガラス豆腐”。
このいかにも頑丈そうな島豆腐♪美味いぞ!
塩辛状態のスクとの相性もバツグンです。

  

“煮付け”。これ、大好きなのです。
ソーキもホロホロと柔らかい。大根にも味が沁みてる。
レタスを煮て食べるのって、ちょっと変わってるよね?

  

またしてもゴーヤーチャンプルー。
この店のにはタマネギが入ってない♪
ポークの量が多いのもひじょ〜に嬉しい♪

  

“紅芋コロッケ”という名前に惹かれて頼んでみると…
これ、パン粉とか衣がぜんぜんついてませんけど。
油分が多いのが若干気になるメニューではある。

  

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