Coral Way
  


 朝、それはそれは爽快な気分で起床。こんなに快い目覚めは久しぶりだなぁ。などとささやかな感慨に耽るのもほどほどに、僕は大原ホテルを飛び出して、すぐに石垣港の離島桟橋へ向かう。今日は波照間島に行くのだ。
 さて、石垣島から波照間島へ海路で向かう場合、就航しているのは“安栄観光”の船と“波照間海運”の船がある。どちらの船を選ぼうか少し迷ったが、たまたま安栄観光のチケット売り場には団体ツアーのお客が殺到していたので、空いている波照間海運のチケット売り場で往復の乗船券を買った。どちらの会社の船も便数・離発着時刻・所要時間ともにほとんど同じだし、船の揺れ具合にも差は無い、と思う(ただし、安栄観光の船は定員がメチャクチャ少ない。波照間海運のほうは80人ぐらい乗れる)。とにかく僕は波照間海運の“ニューはてるま”に乗ることになった。
 午前8時40分、離島桟橋を発って一路波照間島へ。以前、波照間島に行ったときにも書いたけれど、とにかく波照間島までの航路はものすごく揺れる。そんじょそこらの揺れじゃない。どんなに海が凪いでいようとも上下左右にグラグラと揺さ振られる。はじめて乗ったときには「これが船の乗り心地なのか!?」とかなりビックリした。しかも、その揺れが約1時間も続くのだ。乗り物酔いしやすい人にとって、これはまさに地獄の道行きであろう。…いや、あまりに激しく揺れるから、酔ってる余裕もないかもしれない。高速艇は、そんな乗客の都合をあざ笑うかのように、八重山の海を暴れ馬の如くすっ飛んで行く。
 でも、僕はこの揺れがわりと好きだったりする。ちょっとばかりジェットコースター気分を味わえるしね。しかもかなり長時間に渡って。ここまで揺れると笑いがこみ上げてくる。ひょっとすると脳みそが揺さ振られて少しバカになっているのかも…
 最初のうちは猛烈なシャッフルをワクワクした気分で堪能していたのだが、次第に眠くなってきた。慣れって怖い。こんな非日常的な振動の中で、僕はいつの間にかうたた寝してしまっていた。
 


石垣島・美崎町上空。
今日も天気はまずまずみたい。
さて、さっそく波照間に出発!

  

“きらめきの浪漫海道”も気になるが、
新石垣空港のこともスゴク気になります。
カラ岳に作る計画らしいけど…どうかなぁ、それは。

  

波照間海運の“ニューはてるま”。
これに乗って波照間島に上陸です♪
約1時間の激揺れとの格闘を経て…

   

でも、僕はこの揺れがわりと好き(^_^;)
窓ガラスまで迫り来る波飛沫が揺れの激しさを物語る。
船酔いする人は乗らないほうが身のためかと…

  

 すっかり熟睡している間に、波照間島の港に到着していた。約1年半ぶりに訪れた波照間島の空は気持ちよく晴れていて、昨日以上に暑くなりそうな予感。僕は島に着くや否や、迷うことなく“ニシ浜”に向かって歩き出す。本当だったら一旦集落に行って、そこでレンタサイクルを借りてしまったほうが島での移動には何かと便利なのだが、今日の僕の目的は「ニシ浜でひたすらボ〜ッとしたい」というのと「集落をフラフラ彷徨いたい」というその2点に絞られていたので、レンタサイクルを借りなくてもいいかな、と思っていた。
 ゆるゆるとニシ浜に向かって緩い坂道を上って行くと、坂の中腹に“民宿・レンタサイクル”の文字が書かれた建物が見えて来た。…あれ?こんなの、前からあったっけ?しかし、これは実に絶好のタイミングだ。僕はここで自転車を借りることにした。
 この建物は『西浜荘』という民宿だった。建物自体は決して新しくは無かったが、恐らく民宿をはじめたのは最近のことなんじゃないかな?
 自転車を借りるときに、民宿のご主人と思しきおじさんに訊いてみると、2年ぐらい前から民宿としてオープンさせたんだとか。すぐ隣りには釣り具などのレンタルもしてくれる『西本商店』というお店がある。港からとても近いし、これはなかなか便利だ。港から集落までは意外に距離があるからねぇ。
 「昨日までは島にもたくさんお客さんが居たよ。今日はだいぶ落ち着いたけどね。それまでは天気もあまり良くなかったから」と、ご主人と思しきおじさんは言った。要するに、僕はラッキーだということかな♪日頃の行いの賜物だねぇ。
 
 自転車を借りて、僕は颯爽とニシ浜へ走る。製糖工場を右手に見ながら坂を登っていくと、ニシ浜へと下る細い下り坂の入り口に辿り着いた。坂の下には、青く光る海が見えていた。いや〜、来たねぇ、ニシ浜に。
 僕は一気に坂を走り下り、自転車を適当な場所に駐輪して、砂浜に飛び出した。
 今から約5年前、はじめてこのビーチを訪れたときに、僕はそのあまりの美しさと穏やかさに泣きそうになった。もしかすると、海の色の凄さということで言えば宮古島の海の色のほうがインパクトは強いのかもしれない。だけど、ニシ浜で僕が感じたあの気持ちは、単に海の色だけで沸き上がってきたものでは無かったんだろうと思う。かと言って「その違いは何?」と訊かれても、上手く説明できないんだけどね。どこかやさしいのだ、このニシ浜は。クリームソーダのような海の色も、砂の色と感触も、浜辺を包む空気も、何もかもがやさしく、訪れた者を迎えてくれる。そんなふうに僕には思える。
 ――少し前にこの浜辺で悲しい事件が起こってしまったときには、ホントにものすごく落ち込んだし、正直言ってここへ来るのにもほんのちょっと躊躇する部分があった。でも、やっぱり来てよかった!!
 真っ白な砂に寄せる波は、ずっと眺めていても見飽きることは無い。いつもニシ浜に来ると、かなり長い時間何もしないでただ海をポカ〜ンと見つめてしまう。で、このポカ〜ンとした時間がこの上なく幸せだったりする。出来ることなら、1日中こうして居たいなぁ…
 とは言え、今日は無理。何しろ午後5時40分に那覇空港を発つ飛行機に乗らなきゃいけないし。僕は後ろ髪引かれる思いでニシ浜を後にした。
 

波照間港に到着〜!
ここに降り立つともう心はニシ浜へ。
う〜、一刻も早く行きたい!ニシ浜に!

  

今回はここでレンタサイクルを借りました。
港からテレテレ歩いて5分ぐらいのところにあった。
おじさんや娘さん(?)が親切。

  

結構急な下り坂を下ると、そこにはニシ浜が。
坂の上から見える海の色にときめく。
ペダルを漕ぐスピードも自然と速くなります。

  

着いたね〜、ニシ浜に。
この海に逢えるのをどれほど楽しみにしていたことか!
このやさしい色の海に!

  

ビーチには結構たくさんの人が居ました。
泳ぐ人、居眠りする人、絵を描く人…
思い思いの時間をゆったりと過ごしています。

  

手前の建物はシャワー室。
奥の建物は休憩のための東屋。
あの東屋は海を眺める特等席でもあります。

  


砂の色も海の色も、まぶしくてやさしい。
刻一刻と変化する海の色に見惚れる。
渡ってくる風がたまらなく心地良い。

  

ずっといつまでも海辺に居たい。
そんな気持ちにさせてくれるニシ浜。
この穏やかさは遠い最南端の島なればこそ。

  

空、海、波、風、砂、林。
ぜんぶ総動員しての手厚い歓迎。
何だか夢のような時間が流れていきます。

  


…というわけで、
以下はコメント省略。
海は静かに見つめたいものですからね。

  




   



  
  

   


 

   


  




 
Movie(1)
ニシ浜の海。この至福の時をあなたもぜひ。


Movie(2)
こちらもニシ浜。やっぱりイイねぇ、ニシ浜は。
 
 

 ニシ浜を出て、外周道路を西回りで南下する。道路の周辺には木々が溢れ、サトウキビの畑が続く。自転車で走るとそれはそれは気分がいい。そして、道端のあちこちにヤギが居る。八重山の離島ではわりとお馴染みの光景なんだけど、とくに波照間島ではホントによくヤギと出くわす。ほとんど放牧状態。これだけヤギが放し飼いになっていると、ヤギの持ち主は果たして自分のヤギがどこに居るのかをちゃんと把握してるんだろうか?と、少し心配になったりしてね。小さなヤギはなかなか可愛いけど、中には結構デカいヤツも居て、「コイツ、飛び掛って来たりしないだろうなぁ…」と横を通り過ぎるときに少々慎重になっちゃったり。多くのヤギは人間が近づくとソソッと逃げてしまうんだけど、中にはやたらと人懐っこいのも居て、ちょこんとした尻尾を高速で振りながらこちらの顔を覗き込んで来たりする。「可愛いなぁ」と思う反面、「いずれコイツもヒージャー汁とかになっちゃうのかなぁ」なんてことも頭を掠める。う〜む、可哀想ではあるけれど、どうせだったらうんと美味しいヒージャーになってほしいねぇ。で、僕らもそんなヒージャーをありがた〜く頂戴しないといけないね。「ヒージャーって獣臭い!不味い!」なんて言っちゃあ、ヤギさんが浮かばれないのだよ。…とか言いながら、僕もヒージャー汁はそれほど好きじゃないんだけどね(^_^;)、食えないことも無いんだけどさ。

 外周道路沿いには、海に抜ける細い道が幾つか在る。アーチのような林の中を抜けると、そこには波照間の青い海と白い砂浜がある。海への抜け道を見つけるたびに寄り道しているので、なかなか先に進まない。外周道路をちょっと走っては海へ、またちょっと行っては海へ、ということをついつい繰り返してしまう。…海の魔力ってヤツだろうか。島の人々にとっては当たり前にそこにある海でも、余所からやって来た僕にとってみれば、それは滅多に拝むことの出来ない極上の海だ。網膜が青く染まってしまうんじゃないかと思うぐらい、僕は波照間のコーラルブルーの海原を拾い集めるように眺めまくる。
 ニシ浜の南側に“ペー浜”という場所がある。…ご存じの方も多かろうと思うが、一応ここで説明しておくと、“ニシ浜”の“ニシ”というのは“西”のことじゃなくて、“北”を指す島言葉。沖縄の言葉で“東西南北”を示すと“アガリ・イリ・フェー・ニシ”となる。で、“ペー浜”の“ペー”は、たぶん“南”を示す“フェー”が訛ったものだろうと思う。…ちょっとややこしいけどね。八重山では“フェー(南)”を“パイ”とも言うらしい。沖縄の人々がかつて信じていた“ニライカナイ”を“パイパティローマ”と呼んだりするのは、“パイ・パティローマ”、つまり“南波照間”を意味してる、ってわけね。
 “果てのうるま”のさらに南にある理想郷・パイパティローマ。波照間島でさえ、僕にはこんなに幸せな気持ちを与えてくれるのだから、そのさらに上を行く美しい場所だとしたら…もう想像を絶する世界なんだろうねぇ。
 そう、波照間島は、まったくの門外漢である僕にもニライカナイの夢をほんのちょっとだけ垣間見せてくれる島でもあるのだ。弥勒世果報(ミルクユガフ)。ニライカナイからやって来る神様がもたらす幸い。こんな美しい海の向こうにだったら、そんな場所があってもいいなぁ〜、と。
 

外周道路で“ペー浜”のほうへ。
緑溢れる沿道が気持ちいい。
サトウキビも気持ち良さ気に揺れてます。

  

波照間島にはヤギがたくさん居ます。
ほとんど放し飼い状態です。
中には人懐っこいのも居ます。

  

外周道路から海に抜ける細道に。
多良間島でいうところの“トゥブリ”ってヤツですね。
波照間でどう呼ぶのかは分からないけど。

  

その道を抜けると、当然海に突き当たります。
ここはニシ浜の少し南側にある砂浜。
…ここがペー浜なのかな?(実はよく分かってない(^_^;))

  
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