透 明
 


 外周道路から“コンドイ浜”へ。視界に飛び込んで来るコンドイ浜の海の色は、とても淡い色だった。手前のほうの水は透明で、沖に行くにつれてだんだんと青味が増していく。
 ビーチには思いのほかたくさんの人が居た。が、とにかくこのビーチは広くて遠浅なので、よほど人が多く居たとしてもそれほど混み合っている感じはしない。その解放感は、おそらく沖縄の数あるビーチの中でもかなりのものだと思う。
 僕はビーチをウロウロと彷徨いながら、ぼんやりと海を見たり、波打ち際に足を突っ込んでみたりした。風は幾分強めに吹いていたが、さほど気になるということもない。こうして何も考えないで、ただボサ〜ッと海を見ているだけで、何だかとてつもなく満たされてくるような気がする。まさに至福だなぁ〜。でも……
 …やっぱり泳ぎたい!泳ぐまではいかなくても、海に浸かりたい!
 僕はそんな衝動に駆られる。だけど、あいにく海パンを持って来ていなかった。う〜ん、どうしようか……まさか素っ裸で泳ぐわけにはいかないし、かと言って着衣のままで泳ぐのもさすがに抵抗がある。…あ、そうだ。僕は背負っていたリュックの中を確認する。
 いつも一泊二日の旅行のときの僕の荷物は、この小さなリュックだけなのだ。しかも、中身はほとんど空っぽに近い。入っているものと言えば、デジカメ・飛行機や船の時刻表・替えの下着ぐらい。…そう、替えの下着。
 人の気配の無いビーチの端まで、僕はズンズン移動することにした。だいぶ端のほうまで来て、周囲に人が居ないことを確認し、さっそく着ていたズボンを脱ぐ。Tシャツとトランクスだけになって、少しばかり心細い気分で海に向かって歩き出す。ここでTシャツとトランクスが海水で濡れてしまっても、リュックの中には替えがあるのだから問題は無い。今最大の問題は、周囲の人に僕が下着姿で入水しようとしている、ということを気づかれてはマズい、ただそれだけだった。僕がトランクス派だったのは幸いだった。もしもブリーフ愛用家だったら、さすがにこんな行動に出ることは無理だったろう。
 海水はもうだいぶ温(ぬる)んで来ていて、軽く泳ぐにはまったく差し障りは無かった。行けども行けども膝の辺りまでしか水位が来ない呆れるほどに遠浅な海を、僕はジャバジャバと沖に向かって突き進む。が、かなり沖のほうまで歩いても、なかなか泳げるような水嵩(みずかさ)のある地点に達しない。だんだん水の中を歩いているのに疲れてきてしまい、かと言ってこんな浅いところでは泳げないし、結局そのままビーチに引き返すことに。…せっかくこんな格好までしたっていうのに、バカみたいじゃん、俺。
 
 海水浴を断念したものの、なかなか海辺から離れることが出来ず、僕は適当な木蔭を見繕ってそこに座り、しばらく海を見続けた。水平線の向こうに湧き立つ雲は、もうまるで夏の雲のようだった。いや、雲ばかりじゃない。ジリジリと照りつける太陽も、すっかり夏模様だ。おかげでだいぶ日に焼けてしまった。ジワリと滲(にじ)んでくる汗に、乾いた風が実に快い。
 …結局、2時間近くのあいだ僕はコンドイ浜で、とくに何をするでもなく、ただひたすらにボケッとした時間を過ごした。途中、少し居眠りしたりしながら。うつらうつらしてふと目が覚めると、そこにはちゃんと八重山の海がある。で、また目を閉じる。瞼(まぶた)に海の残像が映り、それがユラユラと揺れる。そしていつしかまたうとうとと…
 すっかり活動休止状態になっていた僕の脳みそは、やがて「空腹だ!何か食え!」という信号を送って来た。仕方なく僕はフラフラと立ち上がり、コンドイ浜を後にすることにした。とても名残惜しかったけど、何か食べに行くことにしよう。
 

来たねぇ〜、コンドイ浜!
相変わらずムチャクチャ遠浅です。
結構人がたくさん居ます。

  

ホントにびっくりするほど遠浅な海。
いくら沖に進んでもなかなか深くならない。
…泳ぐのには不向き?

  


ビーチには南国ムード溢れる茂みが豊富。
天然のハンガーにもなります。
ちょっとした木蔭も出来るしね。

   

アダンの実。
この辺りにはたくさんありました。
これってやっぱり松の仲間なのかな?

  

ビーチの南端のほうまで来てみた。
この辺りに来ると人影はほとんど無い。
静まり返った海は実に心地良い。

  

干潮の浜辺にごっそりとアーサ。
そう、今日は“浜下り”の日だったんだっけ。
このアーサって、生で食えるのか?

  

ここから先には“カイジ浜”があります。
星砂の浜ですね。
…僕はこの浜で星砂を見つけたことがないけど。

  

カイジ浜には7〜8年前に行ったきりです。
だってあんまり興味ないから、星砂に。
ゴメンよ、有孔虫。

  

…これって何ていう植物ですか?
分かる方がいらっしゃったら教えてください。
お礼は出来ませんけれども。

  

砂浜で涼む猫。
アンタはいっつもこんな綺麗な海を見てるのかい?
…あれ?猫って色が分かるんだったっけ?

  

泳いでる人はほとんど居ません。
って言うか、泳げないのかもね、浅すぎて。
まったくスゴイです、この海。

  

水は目を見張るほど透き通っています。
これを見ると「泳ぎたい!」と思うんだけど…
どこまで行ってもこの調子だし…

  
Movie(1)

海を歩く僕の足…




Movie(2)

コンドイ浜をぐるりと見渡す

 

“氷”の旗がはためくワゴン車。
言ってみれば“臨時の売店”ですね。
あんまりお客は居なかったみたいですけど。

  

東屋で休憩中の団体ツアー客のみなさん。
平均年齢はかなり高め。
海を見ながらお弁当を食べてます。

  

たっぷりと海と太陽と砂浜を堪能。
おかげでだいぶ日に焼けました。
泳げなかったのは残念だけど。

  

 集落に戻って、『あさひレストラン』で食事を摂ることにした。ここには21世紀最初の正月のときにも訪れたことがある(そのときのことは『月刊・沖縄一泊二日』“世紀またぎスペシャル”をどうぞ)。僕が店に入るのと同時に、団体ツアーのお客さんたちが一斉に店を出て行った。ラッキ〜!タイミングが悪ければ、満席で入れないところだったぜ。
 それでも、店内(って言ってもほとんどオープンエア状態なんだけど)にはまだお客が結構残っていた。僕は少し考えて、店員さんにゴーヤーチャンプルーを頼んだ。
 …が、とにかく料理がなかなか運ばれて来ない。沖縄の料理屋さんは、比較的料理が出て来るのに時間が掛かる店が多いのはもう慣れっこなんだけど、このときはちょっとイライラするぐらい待たされた。頼んだのはゴーヤーチャンプルーなのに、何でこんなに時間が掛かるんだ?
 僕よりも先にテーブルに着いていた家族連れもだいぶ待たされているらしく、厨房のほうに落ち着き無くチラチラと視線を送っていた。さっきの団体客の影響なんだろうか?
 結局、約30分近く経って、ようやく僕のテーブルに料理がやって来た。「お待たせしてすみませ〜ん」と、申し訳無さそうにおねえさんが給仕して来たので僕は笑顔で応えたのだが、先ほどの家族連れは、端から見ても内心ムッとしてるのがしっかり伝わって来た。そりゃあねぇ、カツ丼を頼んで30分も待たされちゃあねぇ…。
 待ちに待ったゴーヤーチャンプルーは…味は悪くないんだけどさ、タマネギが入ってるよぉ。僕はとにかくネギ類が苦手なので、これには正直言って参った。かなりよく炒めてあるのがせめてもの救いだった。これが生っぽかったら完全にアウトだ。
 それにしても、八重山の料理屋で出て来る郷土料理って、どうもタマネギがやたらと入ってるような気がする。本島でゴーヤーチャンプルーを頼んでも、タマネギが入っていることは滅多に無い。ソーミンチャンプルーにも、万能ネギ(浅葱)が上に掛かってることはあっても、タマネギがそうめんと一緒に炒めてあることはあまり無いと思う。しかし、なぜか八重山の料理屋ではタマネギに遭遇する確率が高い。ヤギ刺しを頼めば肉の下にタマネギが敷き詰められているし、チャンプルーにも混ざってるし、あるときなど“ひらやーちー”の中にまでタマネギがしっかり混入してあって、一口噛んだ途端に凍り付いてしまったこともあった。八重山の人はタマネギが大好きなんだろうか?
 僕は八重山を愛しているが、僕が八重山で恐れているのは“台風”と“タマネギ”。これさえ無ければ、もう完全無欠のパラダイスなんだけどなぁ…
 
 ところで、すっかり言い忘れていたけど、この日(4月15日)は、“浜下り”の日だった。浜下りというのは、まぁ平たく言っちゃえば潮干狩りみたいなものなんだけど、毎年旧暦の3月3日に、家族などで浜辺に出て貝などを拾ったりする年中行事。単に潮干狩りするだけじゃなく、“身を清める”という意味合いもあるのだそうだ。本来は女性だけが行(おこな)っていたものらしい。御馳走を持ち寄ってそれを交換したりしながら、貝を拾ったり世間話をしたりしたみたい。
 きっと、ここ竹富島でも“浜下り”が行なわれていたんだろうけど、僕は残念ながらその光景を見られなかった。島の人はどの辺りで、いつ頃浜下りをしてるんだろう?さすがにコンドイ浜じゃやらないのかな?
 ちょっと見たかったねぇ、浜下り。ついでに御馳走を少しだけ頂戴しちゃったりしてね。拾った貝をその場で焼いてバーベキュー大会…って、それじゃあビーチパーリーと一緒じゃん。
 
 食事も済んだことだし、僕はまた飽きもせずに集落散策をしようと店を出る。途中、共同売店で缶ビールを買って、一気に飲み干した。この暑さの中で飲むビールは格別だった。そして自転車を漕ぎ出して…って、これってひょっとして飲酒運転になるの?まぁ、細かいことは気にしない、気にしない。
 


沖縄に来るといつでも咲いてるこの花。
「沖縄の花で真っ先に思いつくのは?」
きっと多くの人はこの花を挙げることだろう。

  

こちらもやっぱり沖縄らしい花。
…ピンクの部分は花じゃないんだけどね(^_^;)
白い珊瑚の道に映えますねぇ。

  

赤瓦がギッシリと置かれてます。
基本的にはメンテ用に貯えられているみたい。
町並みを護るのも、なかなか大変。

  

随分長いこと置かれてるっぽい。
瓦の隙間から草が生えちゃってるし。
ま、それだけ既存の屋根瓦が無事だってことかな。

  

デイゴ。もうほとんど散ってました。
白い道にデイゴの赤い花びらがたくさん。
何とも艶かしい感じ。

  

これは結構古い建物ですね。
どなたかが住んでるのかどうかは分からないけど。
空家だったら、僕に譲ってくれ!

  

去年の正月も利用しました。『あさひレストラン』。
夜はビアガーデンになるらしい。
一度夜に訪ねてみたいなぁ。

  

ゴーヤーチャンプルーを注文しました。
美味いんだけど、タマネギが入ってるのが…
食べましたけどね、タマネギも。

  

竹富小中学校。
あれ?壁画が変わってる!
祭りの絵が描かれてます。

   

今日は4月15日、浜下り。
18日は家庭訪問。19日はモズク取り。
…家庭訪問といっても、みんな知り合いなのでは…?

   
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