久米島
〜4月23日・その2〜


 島の南端にある『トクジム自然公園』という景勝地に向かう。
 東海岸沿いの一本道を、グングンと進んで行く。辺りは相変わらずの畑。島の人たちが畑仕事をしている光景と多く出くわした。…みんな、働いてるんだよねぇ。その一方で、「宛ても無い」なんてのん気なことを言いながらレンタカーで島をうろついている僕。やや罪悪感を感じた瞬間でもある。
 それにしても暑い!昨日は空も曇ってたし風もビュービュー吹き荒んでいたので、外に居る分にはあまり暑さを感じなかったんだけど、今日は陽射しもバッチリで気温も調子に乗ってどんどんと上昇している模様だ。
 4月下旬の久米島は、春を通り越して一気に“夏”を思わせる陽気になっている。エアコンもフル稼働だ。
 
 島尻方面に進んで行くと、斜面に大きな墓が次々と現れ始めた。たぶん、この辺りもかつてグソーだったんだろうなぁ。
 などとしみじみした気分になったりするんだけど…しかし、この辺りの道路を走っていると、とにかく道路を横切ったり、路上で何かの作業をしたりするオジィオバァが続出!危ないぞ、お年寄りたちよ!
 たぶん、軽く10人を超える“車道上の老人”を追い越し、あるいは擦れ違った。のどかな風景だなぁ、とほのぼのする反面、ヒヤヒヤすることもしばしばだ。
 よく、やんばるの森の中の路側に「ヤンバルクイナに注意!」とか「カメさんSOS!」などと書かれた立て看板を目にするけど、ここでは「オジィオバァに注意!」という看板が必要なんじゃないか?と思うほど。
 それでもオジィオバァは至ってマイペース。車が背後からやって来ようが、真正面から迫って来ようが、まったく慌てる様子も無く、悠々と車道を歩いて行く。
 …だんだん「車を運転してる俺のほうが悪いのかも…」と思えてくる。確かに、お気楽観光でやって来ている僕は、ハッキリ言ってここでは“余計な存在”だしね。
 「すみませんけど、ちょ〜っと通してくださいな」という気分で、僕はお年寄りをかわしつつ、南端を目指した。
 

海、キラキラしちゃってます。
島尻に向かう道は、ちょっと狭い。
道沿いにはお墓が乱立。


  

オバァ、危ないぞ!
こんな光景が頻繁に訪れます。
…まぁ、歩道が無いから仕方ないんだけど。


  


オジィも危ない!
しかも「止まってるんじゃないの?」という動き(^_^;)
日が暮れちゃいそう。


  

久米島でたくさん見かけました。
これって“昼顔”でいいの?
“朝顔”じゃないとは思うんだけど…自信なし。


  

 『トクジム自然公園』に到着。
 僕はさっそく公園の中にある展望台へ行くことにする。
 展望台に向かう遊歩道の手前で、“いかにもマリンスポーツしてま〜す”ってな雰囲気の中年男性&若いニイチャンの2人組と擦れ違った。一応挨拶しておくことにする。が、完全無視!感じ悪ぅ〜!おまえらなんか崖から落ちてしまえ!と思う。ホントに落ちられても困るけど。
 気を取り直して、展望台に向かう。
 展望台に上って、周囲の眺望を見渡す。…素晴らしいじゃないかぁ!
 何が素晴らしいって、海の眺めも当然イイんだけど、それにも増して海とは反対側に広がる田園風景の何とやさしいことよ!静まりかえった展望台からは、眼下の畑の農耕機の音までもがしっかりと聞き取れた。辺りの草が揺れる音、鳥の声、潮の音、風の音…こんなにいろんな音が僕を取り巻いているなんてなぁ。
 沖縄の、とくに離島に来ると、こういう普段は忘れている、あるいは聞き取ることの出来ない“音”に改めて気づかされる。
 街の雑踏にも、飛び交う人の話し声にも、それにはそれなりの味わいがあるとは思う。でも、そんなノイズにかき消されている音がいかにたくさんあるか、ということ。
 
 しばらく展望台の上で、島の景色と音に包まれてしみじみしていた。とてもいい気分だった。
 …何か、久米島もイイね。八重山の離島に比べたらずっと規模も大きいし、集落だってだいぶ現代風になってはいるけど、まだまだ島のやさしさや寂しさがたくさん残ってる。…寂しさが残っているのがいいことなのか?って疑問に思う人も居るかもしれない。言い方を変えると“風情”とか“翳り”に近いのかもねぇ。上手く言えないけどさ。僕はたぶん、こういう“島の寂しさ”に惹かれて、離島にやって来るんだと思う。
 …とか何とか勝手なことを言ってますけども。さ、じゃあ次に行こうか!
 

『トクジム自然公園』入り口付近から。
中央にポツンと見える小島。“畳石”からも見えたね。
“トンバーラ”っていうそうです。

  
  


崖の下にはゴツゴツとした岩場が。
…何か、すごいねぇ、こういうの。
『火曜サスペンス劇場』とかの山場に出て来そうな…


  

展望台から岬を見る。
海の色と岬の緑がキレイです。
“風光明媚”って感じですね。


  


広々とした海原。
実に気分がいいです。
水平線が丸く見える!


  

太陽の光が海面に反射してる。
何とも雄大な気分になります。
水平線が丸く見える!Part2!

  

ふもとにはのどかな田園風景が。
箱庭みたいな景色に感激。
おじさんがせっせと野良仕事中。

  


ムービー!

展望台からの眺望を360度!
相変わらず風の音がうるさいですけども…
ちょっとした大パノラマ気分が味わえる?!
サイズが570kbぐらいありますけど。





 島尻から再び具志川村方面に戻ることにした。
 相変わらず周囲のほとんどは畑。僕はときどきその畑の中に出没する大きな墓を見たり、畦道に立ってぼんやりと辺りの景色を眺めたりしながら車を走らせた。
 途中、僕が畑の脇のガードレールに腰掛けてボ〜ッとしていると、すぐ向かい側の畑で畑仕事をしていたオバァと目が合ったので、軽くお辞儀をした。
 するとそのオバァがニコニコとしながら「そんなところで何してるの〜?」と大きな声で言った。
 「何にもしてませ〜ん」と僕も大声で答える。「あっははは」とオバァは笑って、「旅行か〜?」と訊いてきた。
 「そうです〜」 「今日は天気が良くなって、よかったねぇ〜」 「ホントですよね〜」
 オバァは空に顔を向けて、そのままグッと背中を反らせて伸びをした。オバァのモンペと頬被りが風に揺れて、そこだけが何かとてつもなく生命感に溢れていた。
 やっぱり、逞しいやねぇ。黒くてしわくちゃの顔と手が、オバァの積み重ねた年月を物語っている。「来てよかったなぁ…」と、僕はオバァの佇まいを見ながらそう思った。
 豊かさって、何だと思う?それはたぶんこんなふうに、それぞれの生きている場所で、いいことも悪いことも受け止めながら、たとえば天気がいいとか、背伸びすると気持ちいいとか、そんな特別でも何でもないことで世界や命が輝くこと。子供が泣いたり笑ったり、犬や猫が日なたで寝そべっていたり、風が吹いたり、木漏れ日がキラキラしてたり、お腹が減ったり満腹になったり。
 僕らが“何でもない”と思っていることが、“何でもない”ように続いていく。こんなに幸せなことはないと思う。
 
 なんとも言えない気持ちになったまま、僕は“仲泊”周辺に戻って来た。
 県道からは、仲泊界隈の町が見下ろせる。恥ずかしい話だけど、僕はこの町を見ながら、何だか泣きそうになった。
 あの町の中で、きっといろんな人が、いろんな“何でもない”日常を送っている。そんなたくさんの“何でもない”が擦れ違い、重なり合うのかと思うと、ひどく健気でまぶしくて、急にグッと来てしまった。
 ずっとこうしてこんな気持ちで、ここから町を眺めて居たい。そう出来たらいいのになぁ…
 …って、なんでこんなに感傷的なの?俺。これだからオバァは危険なんだよ。普段はどっかに沈殿してるしみじみモードが突然噴出してきちゃうんだからさ〜。そういう柄じゃないってのに。
 さ、いつまでもじいさんみたいに黄昏ていられないぞ。僕はちょっとマップを開いてみる。
 …あ、そうだ!“おばけ坂”に行ってみよう♪ ここならばどう間違っても、これ以上しみじみモードのドツボに嵌まることはないだろう。なんたって、“おばけ坂”だもんなぁ。坂の上から手招きながら振り返っちゃうよ〜。って、それは『硝子坂』by高田みずえ。(←古いし)
  

ちょっと珍しい(?)茅葺き屋根の倉庫。
ムチャクチャ趣きがある。
少し遺跡チックでもあるけども。


  

こちらはおなじみ、赤瓦。
まだまだこういう家が結構残ってます。
これまた趣き深し。


  

“兼城港”の近くにある“大港橋”の上から。
『一日目・その1』の写真と比べてみよう。
晴れてるとこうも違うのだ!


 

こっちは同じ橋の上から白瀬川を見る。
う〜ん、泥水っぽい(^_^;)
でも、釣りをしてる人が居ましたよ。


  

川岸に浮かぶ一艘のボート。
…何か、心なしか漂流してるっぽいけど…
潮が引かないと乗れないじゃん、これ…


  

町はしっかりと今を生きてます。
だからこそ“町”なんだよね。
何といとおしいことよ。


  
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