2月の伊是名の宵は肌寒く、『夕焼け小焼け』が鳴り響く…


 “伊是名集落”から西回りで先へ行くと、今度は“勢理客”の集落が見えて来る。この集落の周辺には田んぼが結構あった。沖縄で田んぼを見ることって、かなり少ないよね。ここ伊是名島と、お隣りの“伊平屋島”は沖縄でも稲作が盛んな地域らしい。とくに伊平屋島なんかは沖縄ではちょっとした“米どころ”みたいだ。なんたってブランド米まであるんだから!
 ところで、この勢理客の集落で一番気になったのが、集落を縦横無尽に取り囲む石垣。石垣そのものは他の離島なんかでもよく見かけるけれど、ここの石垣は微妙に違っている。大概、石垣に使われている石って比較的丸っこくて、いかにも“石”って感じのものだったりするけれど、伊是名島で見かける石垣に使われている石は、丸いのやら平べったいのやら、デカいのやら小さいのらや、何だかずいぶんと不均等。石の積み方もかなり乱雑な感じで、丸い石の隙間に板のように平たい石を詰め込んでいるような状態。このちょっとゴチャゴチャでガタガタな石垣を面白がって眺め歩いているうちに、辺りは見る見る暗くなって来てしまった。
 と、時計が夕方6時半を示す頃、突然『夕焼け小焼け』のメロディーが流れて来た。村内放送ってヤツだね。
 「みなさん、今日も“630(ろくさんまる)”を実行できましたか?そろそろお家に帰りましょう」とか何とか云う子供の声が、『夕焼け小焼け』の叙情的旋律に乗せて聞こえる。ああ、6時半に帰るから、630なのか。…そうか、じゃあ僕もそろそろ民宿に戻ろうかなぁ。
 しかし、こうして夜が近づくとよく分かることなのだが、離島にはホントに街灯が少ない。って言うかほとんど無いと言うべきだろうか。だから一旦宵闇が迫ってくると、それこそ“夜の帳(とばり)”ってのがサ〜ッと大急ぎで下りて来るように暗くなって、やや心細い気分になってくる。この時間ともなると、集落を歩いている人もほとんど見掛けない。…もっとも昼間だって静かな集落なんだろうけどね。家の中から微かにこぼれて聞こえて来る人の声や物音を何となく気にしながら、勢理客の集落を後にした。
 


勢理客の集落。
これまた他の集落とは一味違う雰囲気。
沖縄では珍しい(?)田んぼがあちこちに。

  

この集落の石垣はとても面白い。
これって伊是名独特のものなんだろうか?
どことなく睦稔さんの版画を思わせるような。

  

この石垣が集落に重みを与えているように見える。
どっしりとした屋根瓦と相まって。
なかなか面白いなぁ、伊是名島。

  

海へと向かう緩やかな坂道。
…もうすっかり陽が暮れて来ちゃったね。
何だか少し肌寒いような…

   

 民宿に帰る途中、伊是名の飛行場が見えて来たのでちょっと立ち寄ってみることにした。この“飛行場”、正式には『伊是名場外離着陸場』という名がついている。“場外”ってなに?って感じの名称。最初のページでも少し触れたけど、本島から伊是名島に渡るには、僕が利用したフェリー、そして那覇から飛行機でひとっ飛び!というふたつの選択肢がある。その飛行機が離発着するのが、この飛行場…もとい『場外離発着場』なのだ。
 離発着場には車が数台駐められる駐車場があり、その駐車場のすぐ横に『待合所』という看板を掲げたプレハブの小屋がぽつ〜んと建っていた。…ここで飛行機に乗る手続きをするんだよね、たぶん。しかしその佇まいは“空の旅”を提供する施設にはとても見えないんですけど…レンタサイクル屋か、良く言ってレンタカー屋。或いは工事現場の飯場(それもかなりショボいクラスの)という雰囲気。「ホントにこれで大丈夫なのか?」と若干不安になるような。今まで遭遇した飛行場の中でもダントツのカジュアルさ加減だ、間違いなく。
 滑走路(?)もかなり狭い。ここで飛行機が離発着をするのかと思うと、素人考えでもちょっと心許ないような気がする。まぁ、もっともその飛行機ってのが、あの例のおもちゃみたいな小型プロペラ機ではあるんだけどねぇ。
 このこじんまりと可愛い飛行場を眺めているうちに、いよいよ辺りは暗くなってきた。さて、とっとと民宿に帰らないと。夕飯の時間も迫ってきてることだし。
 

読んで字の如く、飛行機の離着陸場。
しかしこの待合所は…プレハブじゃん!
倉庫かと思ったよ。

  

ここに飛行機が来るわけだね。
結構狭いんだけど、ここ。
こんなんで大丈夫なのか?と思うほどに。

  

 『民宿まえだ』に戻ると、ロビー兼食堂のテーブルにひとりの男性が居た。目が合ったのでお互い「こんばんは〜」と挨拶。その男性は小さなノートパソコンと何かの資料のようなものをテーブルの上に広げ、なにやら熱心に作業をしていた。僕は部屋に引き上げるついでにその資料をさりげなく覗き込む。…何か数字がびっちりと書かれた紙。どうやら仕事をしているようだった。片や島巡りなどと気楽な旅行を繰り広げる観光客(←僕)、片や数字を懸命にPCに打ち込む仕事中の男性。同じ宿に泊まっている客にして、この立場と状況の違い。少々申し訳ないような気分になったりして。
 「あ、ささきさん。すぐにお食事出来ますけど…」と、宿の方が厨房の中から声を掛けてくれた。
 「はい、ちょっと部屋に戻ってまたすぐ下りて来ますから」と答え、一旦部屋に戻った。
 部屋に入り、窓を開けてみた。…やっぱり2月だけあって、陽が沈むとだいぶ涼しい。いや、涼しいを通り越して、むしろ肌寒いぐらいだ。昼間は20℃近くあったのになぁ。あ、そうだ、晩飯晩飯♪
 
 1階に降りてテーブルにつくと、すぐに夕食が運ばれて来た。僕よりも一足先に食事をはじめていた男性の足元をふと見ると…えっ?電気ストーブ?彼の足元には電気ストーブが置かれ、赤々と熱を発していた。う〜む、確かに今夜は少し涼しいけど、なにも電気ストーブを点けるほどの寒さでは無いような気がするけど…やっぱり地元の人(この男性、名前からして沖縄の人みたいだった)は寒さに弱いんだろうか。まぁ、東京はヘタをすれば気温が1ケタ台だったりするしねぇ。僕にとってはこの程度の寒さは“寒い”うちに入らない。って言うか、心なしか電気ストーブの熱気がこちらにも届いて来て、ちょっと熱く感じるぐらいなんですけど…
 食事はいわゆる“沖縄色”はほとんど無いメニューだったが、ご飯(白米のことね)がなかなか上手かった。さすがは米どころ・伊是名島。ときどき沖縄の食堂で遭遇するパサパサの米飯とはぜ〜んぜん違う。
 男性は食事を済ませると、再びパソコンで仕事をしはじめた。僕は民宿の人にお礼を言って、そのまま部屋に戻った。
 …それにしても、今日は観光で島を訪れている人を一人も見掛けなかった。ひょっとすると、こんな時期外れなタイミングで伊是名に来る人って、ほとんど居ないってこと…?いや、そんなことも無いだろう。だってフェリーの中で観光客っぽい人たちの姿もちらほら見えたし。あの人たちは、一体どこへ行ってしまったんだろう?
 そんなことを考えつつ、さっさと風呂に入り(この宿は夜の10時30分になるとお湯が出なくなる)、さっぱりしたところで1階のフロントに行き、絵葉書を買った。思えば絵葉書を買うなんてかなり久しぶりだ。以前は使う宛てもない絵葉書をやたらと買い漁ったりしたものだけど、最近ではまず買わなくなった。絵葉書だけじゃなく、そもそも沖縄に来ても土産物らしきものを滅多に買わなくなってしまった。「いつでも買えるし…」「あえて欲しいものも無いし…」なんて思うようになっちゃってね。何だかすっかりスレちゃった感じである。やや寂しくもあり。
 部屋で人に宛てた絵葉書を何通か書いて、ベッドでゴロゴロしながらテレビを見たりしているうちに、何だか体が冷えてきてしまった。部屋の窓を開けっ放しにしていたせいだ。…結構寒いな、やっぱり。熱帯の沖縄でも、さすがに2月の夜ともなるとこうも寒くなるのか。何しろ風が冷たい。窓を閉めて、ベッドの中に体を潜り込ませ、ぼんやりとテレビを見ていたら、いつの間にかそのまま眠ってしまっていた。
 

『民宿まえだ』のロビー。
僕以外の唯一の利用客の方。沖縄の人みたい。
その足元には電気ストーブが!

  


魚のオブジェや魚拓が壁一面に。
ここのオーナーの趣味なんだろうか?
僕は釣りってぜ〜んぜん興味ないです。

  

テレビの右横が手続きをするカウンター。
絵葉書や小物なども販売しております。
僕も絵葉書を買いました。

   

夕食です。結構美味かったです。
まぁ、沖縄らしさはほとんど無いけれど。
紅型調のテーブルクロスは沖縄らしいが。

  

…ついついこういうことをしたくなる。
とてもマヌケな姿ではある。
とりあえず、作者近影って感じ。或いは「オマエ、どこ見てんだ?」な図。

  
表紙へ          前のページへ          次のページへ