いよいよ伊是名島に!まずは偉人にご挨拶


 フェリーの行く手に伊是名島の島影が見えて来た。いよいよ伊是名島だ!ゆっくりと仲田港に近づくフェリーがもどかしい。早く島に上陸したい!
 
 仲田港は、僕の想像よりも遥かに立派だった。港を囲むように集落が見える。僕はフェリーからレンタカーで飛び出し、さっそく伊是名島を疾走…しようとしたのだが、「う〜んと…これからどこへ行こう…」とふと考え込んでしまった。とりあえず、港のすぐ隣りにある『臨海ふれあい公園』のガラガラの駐車場に車を停め、運天港でもらって来た“伊是名島観光ガイドマップ”を開いてみる。
 そうだなぁ…あ、『尚円王御庭公園』だって。さすがは島の生んだ偉人中の偉人ゆかりの地だけあって、他の観光名所よりも一際デカい字で書かれてあるよ。きっと島随一のスポットに違いない。まずはここに行ってみることにしよう!
 というわけで、僕はその公園へと向かう。
 

間近に見えてきました〜。伊是名島。
天気と相まって神々しさすら感じます。
いやぁ〜、ワクワクするなぁ。


伊是名島・仲田港。
思いのほか立派なターミナルがお出まし。
…ひょっとして運天港より立派なのでは?

  

「ハブのいない伊是名島へ」
…どうせなら他のことをもっとアピールしたほうが…
確かに安心だけどね、ハブが居ないのは。

  

港のすぐそばにある『臨海ふれあい公園』。
子供たちがカイトを上げて遊んでた。
この公園、かなり立派な公園でした。大型駐車場完備で。

  

これ、運天港でもらったパンフレット。“伊是名島観光ガイドマップ”
伊是名の観光名所、宿、店舗、公共施設などが詳細に書かれたお役立ちアイテム。
伊是名に行くならぜひGETしておこう!これは必須アイテム!

  

 『尚円王御庭公園』は、港から車で5分程度という至近距離にあった。この辺りは“諸見”という集落になる。
 伊是名島はこの“諸見”の他に、“仲田”“伊是名”“勢理客”“内花”という5つの集落で構成されている。諸見と仲田の集落はほぼ隣接しているが、他の集落はそれぞれ少しだけ距離が離れている。島の中心に当たるのは“仲田港”に近い仲田と諸見の集落。そしてその他の集落にもそれぞれに漁港がある。つまり、このさほど大きいとは言えない島に4つの港がある、ということになる。
 …あ、ちょっと話が逸れた。今は『尚円王御庭公園』の話ね。
 公園の入り口に立った僕を真っ先に歓迎してくれたのは、バッタだった。このバッタなんだけど、羽を広げて飛ぶと、その羽がピンク色もしくは赤色なのだ。ひょっとすると格別珍しいわけでも何でも無いバッタなのかもしれないが、もともと昆虫になぞあまり興味の無い僕は「わっ!なんだ?あのバッタ!ひょっとして沖縄固有の珍しいバッタか!?」と色めき立ち、しばらくバッタを執拗に追い回してしまった。バッタにしてみればさぞかしイイ迷惑だったろうと思う。
 …ハッ!バッタにうつつを抜かしてる場合じゃない。公園をちゃんと見ないとな。何しろ偉大な尚円王にちなんだ公園ですからねぇ。心して拝見せねばなりません(←根拠の無い義務感)。

 では、ここでほんの少しだけ尚円王のご紹介を。
 尚円王は1470年から410年間の長きに渡る長期安定王国を築いたすごい人。“尚円王”という呼び名はもちろん王様になってからついた名前で、その前は“金丸”という名前だった。彼は伊是名島に一農民として生を享けた。この金丸さん、顔はイイわ人望は厚いわ働き者だわで、島の女子の間では「人気No.1!」なモテモテぶり。例えば、彼の耕す田んぼは、どんなに日照りが続こうが他の男が妬んで水を止めようが、いつも水がたっぷり満ちていたらしい。実はこれ、金丸青年を慕う女子たちが毎日せっせと水を運んでいたからなんだそうな(しかも、他の人の田んぼから盗んだ水を(^_^;))。島の娘たちにここまでさせる男・金丸。まったくイヤになるほどの色男っぷりである。
 で、結局こんなモテモテ野郎を面白く思わない島の男たちに迫害されそうになり、金丸青年は伊是名島を脱出。本島に移って王子に仕えるようになり、その後あれよあれよという間に立身出世。とうとう王様にまで昇りつめた、というわけだ。
 
 …う〜む、これがどこまでホントの話なのかどうか僕は知らないけれど、いずれにせよ王様になるぐらいだから、そりゃ立派な人だったんだろうと思う。伊是名島の象徴になるのもさもありなん、って感じだ。…でもさ、金丸さんはどう思ってるんだろうねぇ?「ちくしょう、俺を追い出しやがって!伊是名のモテない男どもめぇ〜!」なんて案外恨んだりしてないのかなぁ?ほら、芸能人やスポーツ選手が一躍有名になると、知り合いや親戚が増える、って言うじゃんか。さんざん金丸を虐めてたヤツが「尚円王とは子供の頃から大の仲良しでさぁ〜♪」なんて調子のイイこと言ったりする、みたいなね。あ、でももしも島の若者たちから追い立てられなかったら、後の出世は無かったわけだし…
 今や島の英雄として崇め奉られて(大袈裟かな?)いる金丸さん。かつては島一番のいけ好かないヤツ。人の運命ってのは分からないものである。
 
 ところで、公園のことなんだけど、まぁ正直言ってとくに目を引く面白いものがあるというわけでもなく、「ふ〜ん、なるほどねぇ…」ってな具合で見ておけば充分かな、っていう感じだった。造った人には申し訳ないけど。
 この公園でもっとも強い存在感を放っていたのが“尚円王・金丸の像”。それほどでも大きくは無い銅像なんだけど、どこかを指差すクラーク博士チックなポーズの金丸青年の像には、何か不思議な生命感のようなものが宿っているように見えた。この銅像を造ったのは名嘉睦稔さんなんだそうだ。ボクネンさんはこの像をたったの3日で完成させたらしい。…それってホントかよ?と疑ってしまいたくなるほどの力作だ。版画だけじゃなくて塑像の才能もあるのか、ボクネンさんは。
 『東の空をさして立つ若き尚円は、伊是名島の誇りであり、人々の道標である』(伊是名島観光ガイドマップより引用)…えらい気合いの入り様ですけど。確かにそんな力の漲りを感じさせる銅像ではあるな。
 
 …さて、一旦『民宿まえだ』に行ってみるか。幸い“伊是名島観光ガイドマップ”には観光スポットだけじゃなく、共同売店や飲食店、民宿などもしっかり記載されているので、これを頼りに辿り着けそうだ。
 


『尚円王御庭公園』。
まずは島の偉人にご挨拶、ということで。
って言うか、港から近いところにあったんで(^_^;)

  

尚円王の銅像が。
フェリーのボディーに書いてあったのと同じですね。
名嘉睦稔さんの作だそうです。

  

なかなか凛々しいお顔立ちでございます。
何しろモテモテな色男だったみたいだから。
この銅像、妙な生命感があってスゴイなぁ…

  


その足元にこんなものが。
夜はライトアップされるのか!?
それはちょっと怖いような気が…

  

この公園、ちょっとした庭園風になってます。
だけど、僕が行ったときには誰も居らず。
案外そういうものなのかもしれない。

  

かなり大きな公園です。
公園の端には“みほそ所”という史跡も。
みほの所は尚円王生誕の地らしい。

  

 宿に行く前に、少し周辺を歩いてみようと思い、『御庭公園』の駐車場に車を停めたままで、僕は諸見の集落の中をほっつき歩いてみることにした。
 諸見の集落は、比較的新しい家並みが目立つように思った。とは言っても、家の間に小さな畑があったり、ところどころに赤瓦が見えたりして、集落の中には離島特有の静かで緩やかな時間と空気が流れていた。狭い路地をゆっくりとスクーターで走って行くオジィと挨拶。軒先で赤ん坊をだっこしているオバァと挨拶。平屋の縁側越しに見えるトートーメー(沖縄独特の大きな仏壇)。「ああ、離島に来たんだなぁ〜」と実感する。
 と、ちょうど『御庭公園』の裏手に当たるところに、何やら不思議な物体があった。茅葺きの三角錐の屋根が地面スレスレのところに落っこちたような…その屋根は四隅にある石の柱でかろうじて地面から1m弱のところで支えられているような格好。これは“神アサギ”。さっき運天の集落でも見掛けたが、ここ諸見の集落の神アサギはその姿からも、まさしく神事に使う場所、という厳かな雰囲気を辺りに漂わせていた。
 今までにも同じようなことを何度も言ってるけど、こういう場所や物がしっかり残されてるのがスゴイと思う。拝所や御嶽、火ぬ神、カーなどの信仰に纏わる場所が生活圏にちゃんと存在し、しかもそれがきちんと機能している、ということ。これは間違いなく沖縄の魅力のひとつ。僕が沖縄に惹かれる原因のひとつでもある。
 僕は恐る恐る神アサギに近づいてみた。屋根の下の狭い空間から中を覗くと…真っ暗で何だかよく分からないや。とくに何も無いようだけど…この中に人が入って祈ったりするのかぁ。何だかものすごく儀式めいてるよなぁ。
 
 駐車場に戻り、車で民宿目指して走り出した。と、さほど走らないうちに『吉田ストアー』という建物が見えて来た。人や車が途切れることなく入って行くその店に、なんとなく寄ってみることにした。
 店内に入ると、店の約半分を占めるスペースに、ビデオがすらりと並んだ棚があつらえてあった。レンタルビデオ屋を兼ねているのだろうか。そう言えば、こういう離島でレンタルビデオと遭遇することって滅多に無い。ちょっとどんなタイトルが置いてあるのかさりげな〜くチェック。…さすがにアダルトは置いてない模様。狭い島だからねぇ、「この前、玉城さん(仮名)ところのマサル(仮名)が『若妻道場』(仮名)を借りてったよ〜」なんて噂でもたったらヤダろうし。
 僕は缶ジュースとボールペンを買った。どちらも差し迫って必要なものでもなんでもなかったんだけど、手ぶらで店を出るのはちょっと憚られるし。
 「いらっしゃいませ〜。あら、このボールペンはいいボールペンなんですよぉ、値段がちょっと高いだけあって」と、店のおばさんが笑顔で言った。言われてみればこのボールペン、150円だって。…100円のと交換してもらおうかなぁ。ま、いいか。
 それにしても、この『吉田ストアー』はなかなか繁盛しているようで、切れ間無しにお客さんがやって来る。で、当然来るお客はみんな顔馴染なわけで、買い物がてらちょっとした世間話を交わしたりしていく。そんな遣り取りを背中で聞きながら店を出た。
 


諸見の集落。
伊是名には5つの集落があります。
それぞれの集落で微妙な違いが見られます。

  

静かな日曜日の夕刻。
島独特の空気が辺りを包む。
これだから島巡りは止められない。

  


“神アサギ”。神事を行う場所。
こういう形で残っているのは今では珍しいらしい。
屋根が低すぎて中がよく見えない。

   

石垣。珊瑚ですね。
伊是名島の石垣はちょっと独特です。
石垣を見て歩くのも意外と楽しいよ、伊是名は。

  

諸見にあるかなり大きなスーパー。
引っ切り無しにお客さんが訪れます。
レンタルビデオもあるしね〜。

  

 『民宿まえだ』は、すぐに見つかった。高い建物の少ない集落の中、堂々たる地上3階建て、おまけに建物には思いっきり『民宿まえだ』って書いてあるし。
 この民宿は“仲田”の集落にある。仲田の集落は、これまた諸見の集落とは一味違う雰囲気を持っていた。…よし、伊是名島にある5つの集落、ぜ〜んぶ見て周ることにしよう♪と、それは後回しにして、今はまず民宿に入ることにしよう。
 
 玄関の引き戸を開けて、「すみませ〜ん」と声を掛けてみる。…返事が無い。しかし、ホントに離島の民宿ってこういうパターンが多いよなぁ。神経質なお客だったらこの時点で「何だ!けしからん!」なんて腹を立てたりしちゃうかもしれない。が、僕は正直言って三つ指ついてお出迎え、ってな対応があまり好きじゃないので、これぐらいの気の抜け様のほうがありがたいんだけど。
 仕方が無いので、勝手に中に上がり込んで行く。玄関を入るとそこはすぐにロビー兼食堂のような空間になっていて、テーブルがいくつか並べられていた。たぶんここで食事を摂るんだろう。その食堂の手前に宿泊手続きをするカウンターのようなものがあった。カウンターの奥はキッチンになっていて、そこで若い夫婦がせっせと料理の準備に取り掛かっていた。
 「あの〜、すみません…」と、僕はキッチンに向かって声を掛ける。
 「あ、いらっしゃいませ〜、ごめんなさい、気づかなくって」と、女性(奥さん)がカウンターにやって来た。恐らくこの人が電話で応対してくれた人だろう。
 「昼間に電話で予約したささきなんですけど…」
 「はい、ささきさんですね。では、こちらに記入してください」
 宿泊カードに必要事項を書き込みつつ、僕は客室のキーがぶら下がっている棚をさりげなくチェックしてみる。…どうやら宿泊客はほとんど居ないようだ。まぁ、シーズンオフだしね。もともと伊是名島に観光客が殺到することもあまり無いだろうし。…そのわりには民宿が12軒もあるのは、これ如何に?
 僕は2階の部屋の鍵を渡された。「あ、これからまた少し外に出るつもりなんですけど、夕食の時間は何時頃なんですか?」と訊ねる。「だいたい7時半頃です」との回答。今が5時半だから…あと2時間ぐらいは大丈夫だな。
 
 ところで、この『民宿まえだ』、僕の予想を遥かに越えて立派な宿だった。ちょっとしたビジネスホテルみたいだ。各室バス・トイレ完備(完全ユニットバス・洗面台もバッチリ)。テレビもクーラーも“コイン式”じゃない。さらに僕の泊まった部屋からは、伊是名の海が一望できる。わーい!オーシャンビューじゃ〜ん!全体的に清潔感があって、これはなかなか良い宿を選んだかも♪
 すぐにでも部屋を出て島巡りをするつもりだったけど、ちょっと部屋で一服してからにしよう。僕はさっき『吉田ストアー』で買った缶ジュースを飲みながら、テレビを点けてみた。テレビでは、名護市長選挙の話題が流れていた。そう、この日はちょうどその投票日だったのだ。焦点は辺野古への基地移転問題。大方の予想では現・岸本市長の勝利が濃厚だと言われていた。その予想通りの結果になれば、たぶん辺野古のリーフ上にヘリポートが誕生することになるんだろう。…結果は結果として、ね。
 う〜む、少しテンションが下がりかけてる。さ、気分を変えて外に飛び出そう!
  

仲田の集落にある『民宿まえだ』。
島でも一二を争う大きな宿です。
が、この日の宿泊客は僕を含めて二人だけ…

  

『民宿まえだ』の玄関です。
夜間もドアの鍵は開けっ放しです。
これまた離島の宿のいいところ。

  


フロント・ロビー兼食堂。
温かみがあってなかなかいい感じ。
テレビもあるし。

  

一見ビジネスホテル風な廊下。
一人旅だとこういう宿が気楽でいいんだよねぇ。
「いかにも民宿」な感じも捨て難いけどね。
  


こういうのが民宿らしいよね。
僕もよく“寄付”していくもん、雑誌を。
単に持って帰るのが面倒なだけなんだけど。

  

こちらがお部屋でございます。
じょーとーじょーとー。
快適なリゾートライフが楽しめそう(←目的が違う)

  

部屋はしっかりオーシャンビュー♪
窓から港の様子も見られます。
右側には“伊是名城跡”のある山も。

   

民宿のすぐ前にある共同売店。
結構遅い時間まで営業してました。
まさに島のコンビニ、って感じか?

  
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