A BRIGHT FRESH CLEAN


 北谷・美浜“アメリカン・ビレッジ”。何度か訪れているけれど、正直言って、僕はこの街にさほど魅力を感じない。確かにここが出来る前の沖縄には、若い人たちがこぞって遊ぶスポットってあまり無かったのかもなぁ、とは思うけど…あ、ハンビーの夜のフリーマーケットは面白いけどね♪
 一方Kは、ここがわりと好きなようだ。その理由:大きな駐車場があるから。飽くまでも彼の基準はそこにある。
 僕らが美浜に着く頃には、ちょうど雨が止んでいた。風は相変わらず強かったが、だいぶ街歩きがし易くなった。僕らはかなりゆっくりと時間を掛けて、あちこちの店を見て歩いた。
 『波布蛇箱(ハブボックス)』、『AMERIKAYA WEARHOUSE』、『地球雑貨』などなど、手当たり次第に店に入り、店内をウロウロ。べつにこれといって買いたいものがあるわけじゃないけど、こういった場所をひやかしながら見て歩くのは、結構楽しい。とくに輸入雑貨系の店はスゴク面白いよなぁ。僕は元来、このての無駄っぽい雑貨が好きだったりする。昔から『東急ハンズ』とかに行っては、自分でも使い道のよく分からない“色つき電球”とか“ホログラフ”とか“空港のX線チェックから写真のフィルムを保護する特殊な袋”とか、そういう類の小物を衝動買いしたりしてね。この日も、僕は“顔や手にキズを負ったように見せる特殊メイクキット”とか“ペッツ(←なつかしい!これって知ってる?)”とかにかなり心を揺さぶられた。が、「ちょっと待て。こんなの買って後で後悔するぞ」と自分を必死で戒めた。が、僕はふとあることを思い出した。
 「…あ!そうだ!俺、“GAIN”を買いたい!」
 「…何それ?」
 「ほら、よくハンビーで見かけたじゃん。アメリカ産の洗剤」
 「あ〜、あの胡散臭い箱のヤツね」
 「いや、それがさぁ、案外質の高い洗剤らしいんだよ、その“GAIN”がさぁ。高級な洗剤らしいよ。匂いもイイらしいし」
 まるで“GAIN”の広報担当者のような僕に、一瞬Kは呆れ顔をして見せたが、僕があまりに熱心に“GAIN”に秘められた実力を語るので、だんだんKも話に乗ってきた。…って、僕は実際にGAINを使ったことが無いんだけどね。
 そんな僕らがフラリと入った『AMERICAN DEPOT』という店。ここはアメリカから輸入してきた生活雑貨などがやたらと充実していた。中には、なぜかブルース・リーのビデオなんかもあった。でも、こういうビデオって、日本のビデオデッキで何の問題も無く再生できるんだろうか?
 と、僕の目に色とりどりの四角い箱がびっしりと並んだコーナーが飛び込んで来た。おお!これは間違いなく洗剤だ!ひょっとすると、この中にあの“GAIN”が…!
 僕は嬉々としてGAINを探したが、残念ながらここにGAINは無いようだ。が、GAINに勝るとも劣らない、胡散臭いパッケージの洗濯洗剤、柔軟剤、漂白剤が多数取り揃えてある。いや〜、面白いなぁ、こういうの。柔軟剤だって、間違っても“ソフランC”なんて置いて無い。一時期やたらとCMで見た柔軟剤“ファーファ(白いテディベアが目印のヤツ)”が、ぜんぜん違うネーミングで売られていたりする。すっかり僕はこれらのランドリー商品に心を奪われてしまった。
 あれこれと悩んだ結果、僕は、約50g入り(洗濯2〜3回分ぐらいの量)の洗剤の小箱を5種類、1箱づつ買った。これだったら持って帰るのもラクだし、いろんな洗剤を試してみることも出来る。
 …って、何で俺は洗剤なんかにこれほど入れ込んでるんだ?我ながらバカみたいだ。
  
 さて、僕が洗剤にうつつを抜かしている間に、天気はいよいよ荒れ模様になってきた。僕らは慌てて車に乗り込み、一路那覇を目指すことにした。
 

美浜“アメリカン・ビレッジ”。
こんな天気なのに訪れてる人は結構多い。
地元の人が多いのも、ここの特徴(?)。

  

わりと似たような店が多いんだけどね。
値段はどれも比較的お手ごろな感じ。
リーズナブルなところが人気の秘密?

  


天気が良ければこういう店もいいんだろうけど…
この状況で利用するのはちょっとキツいね。
思いっきり吹きっさらしだし。

  

海っぺりなので風が強い。
それでなくても今日強風だっていうのに…
椰子の木、ちぎれそうです。

  

輸入洗濯洗剤の数々。
このケバい&安っぽいデザインがグ〜!
これだったら洗濯も楽しくなる(のか?)

  
     
左がお馴染みの“ファーファ”。
で、右がアメリカ版。名前が違ってる。
“Snuggle”=擦り寄る、寄り添う、という意味らしい。
案外直球なネーミング。

これはかなりメジャーな銘柄。
で、こんな使いきりサイズで売ってました。
これなら、おみやげにももってこいな感じ。

  

『MIHAMA7PLEX』。いわゆるシネコンね。
僕はまだ沖縄滞在中に映画を観たことが無い。
時間がもったいないような気がして…

  

曇天に輝き出す観覧車。
…ところで、この観覧車って繁盛してるの?
既に単なる“巨大なオブジェ”と化してるのでは…?

  

 「しかし、こんなに風が強くなってきてるのに、ホントに飛行機はちゃんと飛ぶのかなぁ?」
 「う〜ん…かなり心配だよね。今からだったら今日の最終便ででも東京に戻れるよね。どうしようか…」
 僕らの頭の中は、台風のことでいっぱいになっていた。雨こそそれほど振ってはいなかったが、風の吹き方が凄すぎる。カーラジオから聴こえてくる番組でも、しきりに「台風が接近してますからね、沖縄のみなさんは充分注意をしてくださいね〜」などと警告を発している。「もしかすると、このまま本島を直撃するかもしれませんから〜」というラジオの声に、ますます不安な気持ちになる僕ら。
 「…ちょっと、携帯電話貸してくれる?」と、僕はKの携帯を手にする。
 「どこに掛けるの?」 「いや、航空会社に問い合わせてみるよ」
 よく空港にハンディサイズの時刻表が置いてあるでしょ?僕はその時刻表の中に記されている発着情報の問い合わせ先に、電話を掛けてみることにした。
 「………あ、もしもし、あのですねぇ、ちょっとお聞きしたいんですけど、明日の14時55分の飛行機で那覇から羽田に戻る予定なんですけど、台風の影響なんかで飛行機が飛ばない危険性は無いんでしょうかねぇ?」
 「はい、え〜と、今のところ明日の那覇発本土行きの飛行機は、全便予定通りの運航を行います」
 「…今のところ…」
 「はい。恐らく羽田行きの便は大丈夫だと思います。離島に行く便は欠航が決まっておりますが…」
 「あ、それからですね、今日の最終便って空席ありますか?」
 「少々お待ちください……はい、大丈夫です。今のところお席には余裕がございます」
 「もしもこれから空港に行って、最終便に乗る、ということになっても大丈夫でしょうかねぇ?」
 「はい、お席にはだいぶ余裕がございますので、大丈夫だと思います」
 「あ〜、そうですかぁ…どうもありがとうございます…」
 …そう言われても、どうも今ひとつ腑に落ちない。このまま航空会社の見解を鵜呑みにしてもいいのだろうか…?
 「今日の最終便はかなり空席があるみたいだよ。明日の飛行機は飛ぶ、って言ってるけど…」
 「ふ〜ん…ホントにどうしようかなぁ。今日の最終に乗るとなると、このレンタカーは今日中に返さないといけないよね」
 「そうだね、今から戻ればレンタカー屋の営業時間内に間に合うだろうけど…」
 そう言いながらも、僕もKも少しでも長く沖縄に居たい気持ちは同じなのだ。例え天気が悪かろうと、明日の昼過ぎまで沖縄に居られるのと、今日慌てて帰るのとでは、何だか気分的にだいぶ損した感じだ。
 結局、僕らは今日の最終便で帰るのは見送ることにした。昨日、空港の笑顔がステキな職員さんも「大丈夫」と太鼓判を押してくれたし、さっきの電話でも「大丈夫」と言っていた。ここはJALを信じてみることにしようじゃないか。
 
 那覇のホテルに戻り部屋に入ると、僕らは空かさずテレビを点けた。明日帰ることに決めたとは言え、やはり台風の動きが非常に気になる。そんな僕らの心配を見透かしたかのように、テレビではグッドタイミングでニュースが放送されていた。が、その映像を見て、僕らは真っ青になった。
 テレビ画面には、昨日の朝まで居た石垣島の美崎町が映っていた。が、その美崎町は暴風雨の最中にあった。その様子は、まさに嵐!横殴りの激しい雨の中、みやげ物屋が入り口を板で塞いだりしている映像が流れ、市役所通りの街路樹が軟体動物のようにグラグラウネウネと揺れまくっている。さらに、那覇空港が画面に登場。離島便が相次いで欠航している空の便の混乱振りを伝えていた。
 僕らはそれを見て、絶句した。とてつもなく不安だ。僕らの選択は、果たして正しかったのか?
 「…今からでも空港に行って、やっぱり最終便で帰ろうか?」と言う僕に、
 「う〜ん、でももうホテルに帰って来ちゃったからなぁ…空港に行くのめんどくさいし…」
 「…(キミの心配ってその程度なのか?)ま、いいけど。それじゃあ沖縄最後の夜ということで、さっそくどこかに呑みにでも行きますか」
 
 とはいえ、天気も悪いし気分も今ひとつスッキリしないしで、どうも街を歩く気分にはなれなかった。そこで、僕らは泊まっているホテルの地下にある『金毘羅湯』という居酒屋で呑むことにした。
 この居酒屋なんだけど…その名のとおり“銭湯”をモチーフにした居酒屋。入り口には“おとこゆ”“おんなゆ”と染められた暖簾が掛かり、下駄箱もある。で、その入り口の正面にはカラス張りになったショーウィンドウ状の脱衣場とサウナがあって、その中にはバスタオルに身を包んだ人形が居る。「意外と凝ってるねぇ」と、僕もKもちょっと盛り上がる。
 店内に入ると、さらに凝った造り。タイル張りの内装と富士山の描かれたペンキ絵が、いかにも銭湯を彷彿とさせる。テーブルに着くと、しょう油やソースなどの調味料は何とシャンプーなんかで見掛けるポンプ型容器に入ってる(ちゃんとポンプを押してしょう油を出すんだよ(^_^;))。
 料理も普通の居酒屋メニューから郷土料理までバラエティに富んでいるし、味も決して悪くは無い(とくに美味いというわけでも無いけど)。「案外、これはこれでOKかもね」と納得。
 だが、最初は僕もKも面白がっていたのだが、だんだん飽きてきた。それにね、ここの従業員の人たち、ちょっとうるさいんだよなぁ。店員同士で仲がイイのかもしれないけど、やたらと厨房で大騒ぎしてるし。客よりも従業員のほうが遥かに賑やかな感じ。こういうのを“便所の100ワット”って言うんじゃないか?って言うかさ。店員の大声で僕らの会話がときどきかき消されちゃう勢いで。
 …そんなこんなで、あまり長居することも無く、僕らは『金毘羅湯』を後にした。どうも騒がしいのは苦手なのだ、俺たちって。
 
 まだ寝るには早い時間だったけど、相変わらず外は悪天候だし、今さら那覇の街に繰り出すのも面倒だったので、僕らは早々にホテルの部屋に戻った。
 …さて、明日は大丈夫なんだろうか。僕らは部屋でテレビを見ながら、絶えずそのことを気にしていた。もちろん、気にしたところでどうにかなるというものでも無いのは分かっていたが、そうは言ってもやはり気になってしまう。
 

『金毘羅湯』入り口付近。
艶っぽいおねえさんが佇んでおります。
…でも、なんか寒そう。

  


そのお隣に居たおっさん。
肌がヤケにツルッツルなのがやや不気味。
頭もツルッツルですが。

  

なかなか凝った入り口だけど…
沖縄ではあまり馴染みの無いはずの銭湯。
果たしてウケてるんだろうか?

  

番台のおばあちゃん。
ここがレジになってます。
あばあちゃんの頭上には神棚が。

 

店内はこのとおり。
面白いとは思うけど、正直言ってすぐに飽きます(^_^;)
な〜んか落ち着かないんだよなぁ。

  

ジョボジョボと水が出ております。
もちろんお湯じゃなくて、水。
風呂っていうより池って感じ。

  

メニューもちょっと変わってる。
一度は話のタネにでも行ってみてはいかが?
僕個人としては、一度でイイかな、って感じですけど(^_^;)

  
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