DRAGON PALACE


 “底原ダム”を後にして、東海岸沿いの国道390号線に出ると、Kは再び島を北上しはじめた。Kは、「こっち(東海岸)の道路を北に上がってくのははじめてだ!」などと少しばかり感激しているようだ。…確かに、Kと石垣島に来たときは、この東海岸は石垣市街地への“帰路”として南下するのがもっぱらだった。しかも、レンタカーの返却時間を気にしながら大急ぎで戻るハメになるので、おちおち周囲の景色を楽しむ余裕すら無い状態で…
 しかし、どうも天候が怪しくなってきている。急に黒い雲が多くなって、風もますます強くなってきた。僕はイヤな予感に苛まれる。大丈夫なんだろうか、明日以降の天気は…
 
 「あ、“玉取崎展望台”だ。行ってみようか」と、Kは色めきたつ。
 「…(去年は俺が「行きたい!」と言ったのに無視しただろうが!)石垣に何度も来てるのに、これがはじめての“玉取崎見物”だねぇ…(俺はひとりで来たことがあるけどね〜)」
 「そうだね、いつもは慌ててるから、素通りしてたからなぁ」
 「…ハイハイ」
 展望台に着いて、僕らは周辺をウロウロと散策。これで天気が良ければ気分も良いんだろうが…いかんせん、高台の風は一際強いし、暗雲が島の南側のほうからどんどこと押し寄せてくる。おまけに気温も下がり出して、「涼しい」を通り越して「肌寒い」に近い感じになってきている。
 展望台からの眺めも、どこか寂寥感漂う雰囲気。ババババッと耳を切るような風の音。僕とKは、早々に玉取崎を立ち去ることにした。
 
 「そろそろ市街地のほうに戻ろうか。いつも時間ギリギリで慌てちゃうからさ。市街地のあたりでどこか面白そうなところがあるかなぁ?」と、Kが言う。
 「う〜ん、そうだなぁ…あ!やっぱり石垣島のスター、具志堅用高の『具志堅用高記念館』でしょ〜!今まで何度も石垣に来ておきながら、あそこに行ったことが無いなんて、そりゃあフランスに行ってエッフェル塔を見ないのと同じぐらいもったいない話だよ〜」と、僕は力説する。
 「…ささきは何か違うものを求めてるんでしょ、そこに。どうせ“笑えるスポット”だとか、そういう類の…」
 「何を人聞きの悪いことを言ってるんだ!俺は心の底から具志堅用高の偉業を称えようと」
 「…ふ〜ん」
 「いいから、いざ行かん!『具志堅用高記念館』へ!!」

 市街地に戻り、一路『具志堅用高記念館』に向かう。Kの言うとおり、僕はそこに限りなき“脱力系”の匂いを感じていた。いや〜、胸が躍りますなぁ。
 が、『具志堅用高記念館』は、あいにく閉館時間となっていた。PM6時に閉館してしまうらしい。…残念!もう10分早く来られれば間に合ったのに!
 「しかたないね、じゃあもう少し市街地をウロチョロしてみよう」
 そうして走っていると、今度は『竜宮城鍾乳洞』の看板が道路に見えてきた。僕とKは、これを見てほぼ同時に「行ってみようか?」。
 こういうところはヘンに気が合いますなぁ。…って、この状況だったら誰でもそう思いつくか。
 

“玉取崎展望台”。
…なんか天気悪いな。
相変わらず風も強いしさ…

  

見る見るうちに雲が垂れ込めだして…
なにやら嵐の前触れのような雰囲気に。
辺りがどんどん暗くなって―

   

東南方向なんて、この通り。
おどろおどろしい雰囲気炸裂。
明日の天気はど〜なるの!?

  

毎度おなじみハイビスカス。
今日の玉取崎は眺望よりこっちのほうが見どころか?
とりどりの花がキレイに咲いておりました。

  

ゲンキ乳業イェ〜イ♪
石垣島に来たら必ず飲むぜ!ゲンキ牛乳!
…表彰してくれないかなぁ?(誰が?)

   


島の中に“マックスバリュー”が2店舗。
…ここ、前は“プリマート”だったような気がするけど…
どちらも同じイオン・ジャスコ系列だからねぇ。

   

 『竜宮城鍾乳洞』―― もちろん、そういう観光スポットがあること自体は知っていたが、ハッキリ言って関心が無かった。「どうせ“プチ玉泉洞”みたいなもんでしょ」という程度にしか考えていなかった。その『玉泉洞』だって、2度も3度も繰り返し行くような場所とは言いにくいような気がするしね。
 とは言いつつも、『具志堅用高記念館』で味わう予定だった(←自分勝手な予定だけど)“トホホ感”をここ『竜宮城鍾乳洞』で味わってやろうと、密かに期待する僕。
 
 受付兼レストハウスで入洞料を払い(\1,050…高くないか?これ)、入り口に向かう。入り口に近づくと、スピーカーから女性の声で鍾乳洞の解説が流れていた。
 「ここ『竜宮城鍾乳洞』は、全長3200mの云々…海底の珊瑚礁が隆起して出来た鍾乳洞で云々…」
 こんな調子の解説がエンドレスで流れ続ける中、僕らは洞内を見て廻る。
 それにしても、この洞内にはコウモリがかなり棲息している模様である。天井からバサバサという羽音を響かせて、人間のすぐ近くを低空飛行で舞い飛んで行く。僕は鍾乳石よりも、そちらのほうが気になって仕方が無い。
 この鍾乳洞は、思いのほか規模が大きかった。遊歩道で洞内を見られるのは450mほど。もちろん『玉泉洞』とは比較にならないけれど、それなりに立派な鍾乳洞だ。かつては海底にあったというだけあって、“シャコ貝の化石”なんてものまで見ることが出来る。
 …だけど、やっぱりコウモリのインパクトはデカい。洞の奥に進めば進むほど、コウモリの数も増えていき、動きも活発になるようだった。なにしろ、コウモリの羽根の“気配”が耳に感じられるぐらいの至近距離を掠め飛んで行くのだから…
 「“脱力スポット”というよりは、“コウモリ天国”って感じだよなぁ…」と、少々ガッカリした気分になってきたそのとき、突然僕らの視界に入ってきたのが…“長寿のみずうみ”と名付けられた小さな池のようなものの奥に浮かび上がる、豆電球(?)で書かれたいびつに歪んだ“竜宮”の文字だった。
 僕とKは、それを見てちょっと溜息をつく。…でも僕個人としては、ようやく“脱力ぅ〜”な気分を味わえたので、これはこれでうれしかったりもしたんだけど。
 
 かなりゆっくりと洞内巡りをしてしまい、そろそろレンタカーを返す時間になった。僕らは『石垣島レンタカー』に戻り、車を返した。ほぼ定刻どおりに返却。ひょっとすると、時間内に無事返せたのははじめてかもしれない。
 「さぁ〜て、夜だよ、夜。Kさん、今晩はどこに飲みに行きますか!?」
 「…今日はイヤにハイテンションじゃん。ちょっとホテルで一休みしてからにしようよ」
 普段、仕事柄滅多に出来ない夜更かし。夜が自由に使える喜び。フリーダム!リバティー!ムッチャ開放的な気分!ビバ、長期休暇!!
 …などと無駄に盛り上がる気持ちをなだめつつ、『大原ホテル』に戻ることにする。―― って、レンタカー屋からホテルは、徒歩約1分の超至近距離なんだけどね。
 


“竜宮城鍾乳洞”の受付&レストハウス。
はじめて来たよ、ここ。
…実はあんまり興味なかったのだ。

  

さて、鍾乳洞にレッツゴー!
エンドレスで流れる解説テープが気になるが…
期待してもよろしいんですね?

  


おお、案外規模の大きい洞内。
しかし、コウモリがすごい!たくさん居る!
低空飛行でかすめ飛ぶ!!

  

題して“銀河街道”だそうです。
こういうの命名するのって、誰なんだろう?
結構大変な作業だと思う、命名って。

  

…なるほど、“竜宮”なわけね。
しかし、このセンスはOKなのか?
すご〜く微妙な気がするのだが…

  

フラッシュ焚かないで撮ってみました。
幾分ゴージャス感が増して…ないか、やっぱり。
コウモリの羽音が引っ切り無しに響く“竜宮”。

   

…わざわざ書かんでも。
でも、言葉の響きがカワイイかもね。
「ひびいっちょーん」

  

確かにヤケにキラキラしてます。
晴れ舞台の演歌歌手(の衣装)チックな輝き。
「紅白出演が夢でした!」的な。

  


…え?どこが?
角度を変えて見てみよう。
すると…

  

ほほぉ〜、なるほどぉ〜。
でも、こんなおじいさん、ちょっとヤダなぁ。
怖いし。

  

前から疑問に思ってたことなんだが、
鍾乳洞ってホントに泡盛の保存に向いてるの?
結構湿気が多いけど、そこがイイのかなぁ?

  

成人記念に泡盛。
お酒は二十歳になってから。
…法律、ちゃんと守ってる?

  

出口に到着。
予想以上に楽しめた…ような気もする。
そうでもないような気もする。

  

超有名な長生き双子…だったんだけどね。
記念の植樹はしっかり残ってます。
こういうの、ちょっと寂しい感じがする。

  

あ、そうですか。
それはご親切にどうも。
じゃあ、振り返って…

  

ワォ!まさに竜宮城!
何気なくライトアップされてます。
…これまた微妙な感じではありますが。

  

亜熱帯ですから、当然バナナ。
ところで、バナナの旬っていつ頃なんだろう?
いわゆる“旬”があるのかどうかも分からないけど。

   

ぴんから兄弟ですか?
このポスター、島のあちこちで見掛けました。
久しぶりに見た気がします、この方。

  

 一旦ホテルに戻り、一息ついてから、僕らは毎度恒例の美崎町巡りを開始。
 美崎町は、石垣島―― いや、八重山随一の歓楽街だ。石垣港から市役所に至る一帯に、飲食店がひしめき合っている。昼間のこの一帯は結構静かなのだが、夜ともなると観光客と地元の客が入り乱れ、とても賑やかになる。…はずなんだけど…
 どうもここ数年の美崎町は、かつての賑わいと比べると見劣りしてしまうように思う。シャッターが降りたままの店舗も目立つし、なによりも通りを歩く人影が非常に少ない。これって、やっぱり不景気のせいなんだろうか。
 Kも、「いやぁ〜、なんだか寂しいねぇ。去年以上に閑散としちゃってるじゃん…」と、しきりに周囲の寂れ具合を気にする。
 かつて、この通りには大量の酔っ払いが闊歩していた。その上、酔いつぶれた人が道路でゴロンと横になっていたりする、なかなかスリリングな雰囲気に満ち満ちた場所だったのだ。この“路上で寝込むびーちゃー(酔っ払い)”があまりに多過ぎて、社会問題にまで発展したりするほどに…いやね、今でもこの“路上寝込みびーちゃー”は、夜更けになれば(とくに午前1時以降になると)ちょくちょく見られる光景ではある。たとえそこが異臭を放つ側溝の上であろうと、店の出入り口であろうと、はたまた雨が降って来ようとも、まったくお構いナシで路上に倒れている泥酔者たち。これはある意味八重山名物と言えなくも無い。…のかな?
 でも、その数は減って来ているような気がする。普通に考えれば、そんな醜態を晒す人が少ないのは喜ぶべきことなのだろうが、ここ美崎町においては、そんなびーちゃーの姿でさえ“街の空気”を形成するのに一役買っていたように思うのは、僕だけだろうか。
 
 とにかく、僕とKはひとしきり美崎町界隈をほっつき歩き、あれこれと店を覗いたりしてみたが、結局港の近くにある『ひるぎ』という郷土料理屋風な居酒屋に入ることにした。
 この店、隣接する『ホテルミヤヒラ』が直営(?)しているようなんだけど…雰囲気もなかなか良くて、お客もほぼ満席で繁盛してるみたいだし、料理も結構イケるんだが…値段が高いんだよ〜。美崎町の料理屋さんって、どこも値段はあまり安くないと思うんだけどね。それにしてもちょっとここは…料理が出てくるまでにやたらと時間が掛かるし…
 「さて、ところで明日はどこの島に行こうか?」と、Kが訊いてくる。僕としてはくどいようだが「小浜島以外ならどこでも…」と言いたいところなのだが、べつに小浜島に行くことになっても構わないかな、という気分にもなってきていた。
 「俺はどこでもいいよ。Kはどこに行きたいの?」
 「う〜ん…そうだなぁ…今まで一度も行ったことが無い島に行こうかな、と思ってるんだけど…」
 さて、八重山諸島で僕らがまだ行ったことの無い島と言うと―― 主だったところだと西表島、鳩間島、新城島、与那国島の4島、ということになる。
 「そうだなぁ〜…西表に行ってみようか」と、Kが言った。僕は内心、小浜島じゃなくてよかった〜、と思いつつ、Kの提案に賛成した。
 西表島。今までなぜか行くことの無かった島。僕もKもどちらかというとこじんまりとした離島が好みだったので、“八重山一大きな島=西表島”には関心が向かなかった。ついでに言うと、僕は殊のほか“山”が苦手なのだ。どうも“山→登るのが大変→遭難→死の危険”という連想が働いてしまう。そう言えば、数年前に西表島の森で遭難した女子が居たよなぁ(無事見つかったけどさ)…
 でも、未踏の地に行くというのは、やっぱり心躍るものだ。よ〜し!明日は西表に初上陸だぁ〜!!
 「そうと決まれば今夜は心置きなく飲もうじゃあないか!」と、僕はすっかりいい旅夢気分。昨夜は睡魔に襲われてあまり飲み食いが出来なかったし、今日は島に着いてから何も食べていなかったので、僕の胃袋は万全の体勢♪料理でも酒でもも〜バンバン持って来いや〜!ってな勢いだ。
 「…あ、でも高いんだよな、ここ。…まぁイイか。こうなったら大盤振る舞いだぁ〜!」
 僕らは次々と料理やビール、泡盛を注文。昨夜の反動で“胃袋底ナシ”な怒涛の食いっぷり&飲みっぷり。おかげで、店を出るときの会計の際には、思わず一気に酔いが覚めてしまうような金額を支払うハメになった。
 しかし、それでもまだ僕の胃袋には幾らかの余裕が残っていた。うんざりするKを半ば無理矢理コンビニ『ホットスパー』へ連行し、「甘いものが食いたい!」とアイスやら菓子やらを買い込み、ホテルに戻った。

 ホテルの部屋でアイスを食べながら僕が『やえやまガイドブック』を読んでいると、テレビを見ていたKが「ゲッ!!」と声をあげた。
 「?なに?」 僕がテレビを見ると、画面には九州・沖縄地方の地図が映し出されていた。天気予報だな。で、その地図の下のほうに…“台風”が!!
 「おいおい、冗談だろ〜!?なんだ?あの“台風”って!いつの間に来てやがったんだ!?マジかよぉ〜…」
 しかし、とりあえずまだ台風は八重山から遠いところに居る。東京に帰るまで、あと4日。なんとかそれまで台風が沖縄にやって来なければいいのだが…
 不安だ。またしても台風に翻弄されそうな予感。やっぱり俺は雨男なのか?
 「雨男、と言うよりは、台風を呼ぶ男なんじゃないか?ささきは…」
 ………そうかもしれない…
  

『大原ホテル』の室内。
しかし、どうしてホテルの照明って暗いんだ?
蛍光灯をつけてよ、蛍光灯!

  

大好きさ!美崎町♪
酔っ払いが道端で寝転がってたりするのさ♪
でも、年々閑散として来てるのさ(涙)

  

コンビニ『ホットスパー』店内にて。
こういう品揃えに郷土への愛を感じる。
だから好きなんだ、ホッパー。

  

ゲンキのクールだぜ!
一見怖そうな島のおじさんとかも飲んでるんだぜ!
味は典型的乳酸飲料だぜ!

  
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