だって、沖縄県民だもの!


 小浜島から石垣島に戻って、一旦『民宿たもと』に荷物を取りに行く。と、ちょうど宿主のオバァが居た。
 「あら、ささきさん。どこかにお出かけだったんですか?」
 「はい、ちょっと小浜島まで…」
 「え〜っ!?小浜まで行かれてたんですか?…驚きました〜」
 確かに驚くのも無理はない。まだ午前11時半過ぎだというのに、小浜島に行って帰って来たなんて…かなり無茶&無意味な駆け足旅行ではある。
 「確か、今日那覇にお戻りになられるんですよねぇ」とオバァ。
 「はい。もうそろそろ空港に行かないと…」
 「ええ〜っ!?…これまた驚きました〜。今回はずいぶんと忙しいんですねぇ。…もしかして、お仕事か何かですか?」
 「…いいえ〜、普通の旅行ですよ〜」
 「ほぉ〜、そうですかぁ…でもねぇ、昨夜(宿に)来て、もうお戻りになるなんてねぇ。今度はもっとゆっくりといらしてくださいねぇ」
 「そうですね、ぜひ…」
 僕は部屋まですっ飛んで戻り、荷物を持って再び入り口付近に下りた。すると、オバァは口をあんぐりと開けて僕を見た。
 「それじゃあ、お世話になりました!」
 「は、はい、…でも、あの、ホントにもうお帰りなんですか?」
 「すみません、そろそろ空港に向かわないとマズいんで…」
 「いやいや、慌てますねぇ。それでは、お気をつけて」
 「…あ、あの、宿代を払わないと…」
 「あっ、そうでしたねぇ。もうあんまり驚いてしまって、うっかり忘れていました〜」
 宿代を支払って、もう一度お礼を言って、僕は宿を出た。オバァは玄関先まで出て来て、「今度はもっとごゆっくり〜」と言いながら見送ってくれた。正味5分間にも満たない、実に慌しい別れである。あの極めてスローペースのオバァにしてみれば、まるで嵐のようなチェックアウトだったことだろう。

 宿から“730交差点”の辺りまで急ぎ足で移動し、タクシーを捕まえて一路石垣空港へと向かう。12時15分発の那覇行きの便に乗らなくちゃいけない。だんだんと気持ちが急いてきた。そんな僕の事情など知る由もなく、タクシーは恐ろしく安全運転に徹している。もうちょっと急いでほしいんですけど…
 「お客さん、ご旅行ですか?」
 「へっ?あ、はい、そうです」
 「ダイビングか何か?」
 「いえ、違いますけど…(う〜む、もう少し急いで欲しいんだけど…)」
 「じゃあ、西表とかに行かれました?」
 「いえ、行ってないです…(どうしよう、「もっと急いでくれ」って言っちゃおうかなぁ…)」
 「どこかの島に行きました?」
 「えっと、小浜島に…(あ〜あ〜、信号が赤に変わっちゃったよぉ。お願いですからもうちょっと急いでください〜!)」
 「あ〜、小浜ですかぁ。じゃあやっぱり『ちゅらさん』をご覧になってですか?」
 「(めんどくさい!)そうです。…あのぉ、信号、もう青になってますけど…」
 「ああ、すみません。…お客さん、もしかして急いでます?」
 「あ、はい、ちょっとばかり…12時15分の飛行機に乗らなくちゃいけないもので…」
 「それはちょっと慌てないといけないですねぇ」
 と言いつつも、結局このタクシーは一向に慌てる気配もなく、安全運転のままで空港に到着した。僕は小走りで空港に飛び込み手続きを済ませ、何とか飛行機に乗ることが出来た。
 …ハァ〜、疲れたぁ〜。何で八重山に来てまでこんな慌しい思いをしなきゃならないんだよ〜。って、俺が悪いんだけどね。
 

『民宿たもと』全景。
お客に必要以上に干渉しないところが好き。
実に気軽に利用できるナイスな宿(だと思う…)

  

『たもと』のある登野城の町も大好きです。
まだところどころ古い町並みが残っててね。
出来れば住み着きたいぐらいに。

  

 那覇に着いて、僕はようやく一息ついた。那覇から羽田に行く飛行機までは、まだ3時間ちょっと時間がある。とりあえず、国際通りまで出て、羽田行きの便の時間までのんびりとほっつき歩くことにしよう。

 国際通りを宛ても無くフラフラと歩いていると、『三越』の裏手の辺りで『りっかりっか湯』なる建物を見つけた。…ナニナニ?“天然温泉”?へぇ〜、こんなところにそんなものがあったなんて、ぜんぜん知らなかった。…どうしようかなぁ、ちょっと入ってみようかなぁ…
 僕は何となくこの『りっかりっか湯』に立ち寄ってみることにした。
 この施設、温泉というよりは完全に今流行りのスーパー銭湯のような雰囲気で、泡風呂やら打たせ湯やらサウナやら、ひと通りの風呂が揃っている。薬湯や電気風呂…電気風呂?これはちょっと怖いなぁ。お湯の中に電流が走ってるってこと?やっぱビリビリすんの?
 浴場の中には、5〜6人のお客しか居なかった。平日の昼間だから、まぁこんなものなのかも知れない。毛深くてごっつい中年のおじさんたちが、泡がボコボコと沸き立つ湯舟に浸かっている様は…なんか、釜茹でになってる熊のよう。ちっとも眺めが宜しくない。が、沖縄の民宿の風呂ってシャワーだけだったりするので(『民宿たもと』もご多分に漏れず)、こうやって湯船に浸かれるのはやっぱりうれしい。
 小一時間、僕はこの天然温泉で過ごし、再び国際通りに足を運ぶ。そのまま“公設市場”界隈を徘徊した。
 市場周辺にはいつもと同様、人がワサワサと居て活気がある。こういう場所は賑やかなほうがいいよねぇ。閑散としたマチグヮーなんて、想像しただけでゾッとする。
 この市場の辺りの裏道を闇雲に歩くのが、僕は無性に好きなのだ。賑やかな市場のアーケードや国際通りの喧騒のすぐそばに、エアポケットのようにポコッと出没する生活臭のある屋並や、まるで染みのように残された廃屋。“筋小(スージグヮー)”と呼ばれる細い裏道は、今にも消えてしまいそうな儚さと、逆に何があっても残り続けていきそうな力強さを併せ持っているような気がする。「このまま進むと何処に出るんだろう?」とワクワクする一方で、静まり返った道をひとりで歩く心細さ。…でも、やっぱり筋小は、ひとりで歩いたほうがシックリ来るね。ついつい歩きながらいろいろなことを考えてみたり。

 そんなふうに筋小を彷徨っているうちに、ちょうどお時間となりました。で、タクシーを捕まえて空港に向かう。空港はいつもに増してお客でごった返していた。さすがは8月。学生さんらしき若い人たちを中心に、搭乗ロビーやみやげ物店はちょっとビックリするような大賑わいだ。
 …そのわりには、今回の僕の旅行って、ずいぶんと静かだったような…八重山まで足を伸ばす人って、案外少ないのかもなぁ。イイのにねぇ、八重山も。のんびり過ごすにはもってこい!なのになぁ。
 そんなことをぼんやり考えてながら搭乗ロビーの椅子に腰掛けていると、たまたま隣りに居合わせた若い女性二人組が、沖縄のガイドブックを広げながら談笑していた。
 「あ、ここにも行ったネェ〜。…へぇ〜、ここにこんなところがあったんだ〜、ぜんぜん気がつかなかったネェ〜」
 「う〜ん、…今度また沖縄に来たときは、他の島にも行ってみたいね、石垣島とか宮古島とか」
 「でもさぁ、何もなさそうじゃない?ちょっと退屈しそうだよネェ、そういう島ってさぁ〜」
 ムッ!なんて失礼なことを言うんだ!本島もイイけど、離島だって素晴らしいんだぞ!…と意見してやりたい衝動に駆られた。が、こればっかりは好みや相性の問題があるからね、たぶん。

 それにしても、一泊二日で八重山に行くなんて、我ながらとても無謀な行為だったと思う。実際、二日目はかなり急ぎ足での島巡りになってしまったし。やっぱり、ホントだったらもっと時間を掛けてゆっくりと廻りたいよね。
 今回の教訓:離島巡りはのんびりと。時間のゆっくりと流れる島を旅するなら、やはりその速度に合わせないと。何事にも余裕が大切だなぁ、と痛感した次第。間違っても「島を4時間弱で廻ろう!」なんてしちゃダメなのだ。反省。
 

「だもの!」と相田みつを風に言われても…
結局、なんだったんだろう、2000円札って。
絶滅の危機に瀕してる?

  

『MAXY』がリニューアルしてました。
これまた絶滅しそうな閑古鳥施設だったしなぁ…
無事復活できるといいねぇ。

  


天然温泉『りっかりっか湯』。
男湯にはおじさんがポツポツ居た程度。
“薬湯”が皮膚に沁みること沁みること。

  

お馴染み(?)、マチグヮー。
何度来ても小さな発見がある場所。
やっぱり大好きな場所だなぁ。

   

“肌着の店”の裏に『花笠食堂』があります。
隠れた名店(?)、『花笠食堂』。
…ところで“わけあり市場”っての、すごくアヤシイ。

  

『花笠食堂』の奥の道。
雑踏を忘れさせる“スージグヮー”があった。
心惹かれるのだ、こういうの。

  

そんなスージグヮーから見える『三越』。
何とも不思議なコントラスト。
個人的にはこれが那覇の魅力なんだと思う。

   

オリオンの『ちゅらさん』缶。
…右の似顔絵、誰だ?
とっても分かりやす〜い“沖縄”のイメージ(^_^;)

   
表紙へ                前のページへ