久米島
〜4月22日・その5〜

 
 車をテレテレと走らせていると、前方に観光バスが走っているのが見えた。ちょうど道沿いにある“君南風神社”に立ち寄って、そこから走り出したところらしかった。
 …そうだ、このバスの後について行ってみよう。どうやら乗客はツアーの団体さんたちのようだし、きっとこの後、どこかの観光スポットに向かうに違いない。
 
 観光バスはしばらく県道242号線をノロノロと走っていたが、途中でちょっと狭い道に曲がった。曲がり角のところには『上江洲家』と書かれた看板が建っていた。ふ〜ん、そうか、古い家屋の見学に行こうってわけだな。
 しかし、この『上江洲家』に向かう道は、進んでいくにつれて道幅がどんどん狭まっていく。「観光バスなんかがガシガシ入って行って大丈夫なのか?」とこっちのほうが不安になるぐらいに。
 と、観光バスはこの狭い路地で、いきなりハザードランプを点滅させて停車した。…おいおい、まさかこんなところで路上駐車しようってのか?
 どうやらその“まさか”だったようだ。停まったバスの中からゾロゾロと乗客が降りてくる。あのぉ、バスの後ろに居る僕は一体どうしたらいいんでしょうか?これじゃあバスをかわして先に行くことも出来ないじゃんか。
 バスのすぐ後ろに路上駐車するのも気が咎めるので、僕は仕方なく車をバックさせて、一本手前の道に迂回しようとしたのだが…ゲゲッ!いつの間にか僕の車の背後に、もう一台、大型観光バスがやって来ているじゃないか!
 結局、僕のレンタカーは2台の観光バスに挟まれた格好となった。前にも後ろにも身動きが取れない。にっちもさっちもどうにもブルドック(byフォーリーブス)な状態だ。
 …まぁ、いいや。僕は開き直ってそのまま車をそこに駐車して、ゾロゾロと下車した人々の後ろにくっついて行く。
 
 『上江洲家』は、300年ぐらい前に建てられた家屋。何でも代々地頭を務めた由緒ある名家なんだそうな。
 入り口にある立派なヒンプンの脇に、“見学料\300”と書かれてある。\300…微妙な価格設定ではある。
 さっそく中に入ると、団体ツアーの皆さんがガイドさんに連れられて、いろいろと説明を聞きながら家屋をしげしげと鑑賞していた。僕もまるでツアー客の一員のような感じで、その人たちと一緒になって建物を拝見。
 …と、ここで一瞬、僕の心の中に良からぬ企みが浮かび上がった。
 「このまま、この団体さんと一緒にここを出れば、\300を払わなくても大丈夫なんじゃないの…?」
 何しろ観光バス2台分の見物人がゴチャゴチャと入り乱れている状態だ。ここを管理しているらしきおばちゃんはたった一人で、しかも家屋の説明に夢中になっている。僕がひとりぐらい、ドサクサに紛れてここを立ち去ったところで気づくはずが無い。
 …でも、たった\300をロハにしたところで、あまり実利は無いよなぁ。そのくせ罪悪感はものすごく残るに違いない。…やっぱりここはちゃんとお支払いしておくに越したことは無いな。
 僕は、ほんの一瞬たりとも悪事を働こうとしたことを申し訳ないと思い、胸の奥で「地頭様、すまねえことをしましただ。許してくだされ〜」と手を合わせた。(←これが反省した者の態度か?!)
 
 それはさておき、この『上江洲家』のような建物を見ると、いかにも琉球!ってな風情が一気に押し寄せてきて、何だかもうそれだけで僕などはすっかりイイ気分になってしまう。こんな家で昼寝とかしてみたいなぁ。きっと気持ちいいだろうなぁ。…でも、風通しが良過ぎて虫に刺されまくり、って気もする。何しろ窓にガラスも嵌ってないし。…そうだよ、今さら気づいたけど、こういう古い家って思いっきり吹きっ晒しじゃんねぇ。天気の良い日は問題ないかもしれないけど、雨が降ったり、ましてや台風なんぞが襲来してきた日にゃあ、雨戸を締め切らないといけないわけだよね。“天気が悪い日は部屋中真っ暗”な状態に陥っちゃうわけだ。
 …あんまり暮らすには良くないかも、こういう家(^_^;) いきなり前言撤回。

 ひと通り見学し終わって、団体客に説明するのにおおわらわなおばちゃんに見学料を支払って、僕は『上江洲家』を出た。
 …しかし、相変わらず僕の車は2台のバスに挟まれたまんま。どうしようもないので、僕はバスが動き出すまで車の中でラジオを聞きながらぼんやりタバコで一服。
 ラジオからは、例のNHK朝の連続テレビ小説『ちゅらさん』の中に登場した“ゴーヤーマン”というキャラクターグッズが、沖縄でも大人気の兆し!と言うような話題が流れて来た。
 …僕はべつに欲しくないですけども。もともと物に対する執着が極端に希薄な性格だし。って言うか、すごくあまのじゃくなんだよね。「流行ってる」とか聞くと、途端に欲しくなくなっちゃうの。
 そんなニュースをボケラ〜ッと聞いていると、前方に居たバスに団体客が戻って来た。よかったぁ、これでやっとここから移動できるよぉ。
 出発するバスの後について県道まで出て、僕はバスと別れた。もうバスの後ろになんて絶対ついて行かない!
 

『上江洲家』の石垣。
かなり重厚感のある石垣です。
この一角だけタイムスリップしたみたいな感じ。


  

ヒンプンと中門。
琉球風情爆発!ってな状態ですね。
中の様子がぜ〜んぜん分かりません。


  

何がイイって、柱!
これで屋根を支えてるってのが…
心許ないと言うか、素朴な味わいと言うか…


  

赤瓦。ある意味、沖縄を象徴する物のひとつ。
青い空とのコントラストがイイやねぇ。
しみじみしてきます。


  

月桃の花。キレイだねぇ。
“メーヌヤ(蔵)”と“フール(豚小屋兼トイレ)”の間に。
…さっきから花に遭遇するのはトイレの脇なんだけど…


  


“主屋”で管理人さんの説明を聞く人々。
その手前にあるのは井戸。
ここって“風水”をかなり取り入れてるらしい。


 

左端で手を広げてるのが管理人のおばちゃん。
どうやら古い知り合いが訪ねて来たらしい。
感動の対面?!


  

『上江洲家』を出たところ。
今回の久米島旅行では、花のキレイさが印象的でした。
…柄じゃないけどね、ホントは(^_^;)


  

 だんだん天気が良くなってきた!お次は“五枝の松”だ。
 正直言って、僕は松にそれほど関心があるわけじゃないし、その良さもよく分からない。でも、この“五枝の松”は“日本の名松100本”にも選ばれたスゴイ松なのだそうだ。“日本の名松100本”なんていうものがある、と言うこと自体ちょっとビックリな感じだ。
 それにしても、多いよねぇ、この“日本の○○100選”っていう括りかた。やれ“日本の道”だの“日本の名瀑”だのってさ。この調子でいくと“日本の公衆トイレ100選”や“日本のネオン街100選”なんてものまで選定されかねない勢いだ。
 それはさておき、僕が“五枝の松”に辿り着くと、駐車場近くの売店と東屋(休憩所)の周りに、何やら老若男女が和やかな雰囲気で集っていた。みんな作業着やモンペなどを着ていたので、たぶんこの“五枝の松”周辺の草取りや清掃などをしていたのかもしれない。ひょっとすると、“五枝の松”の剪定作業も…?でも、これって国の天然記念物に指定されてるし、そう簡単には剪定も出来ないのかな?
 …そう言えば、この“国の天然記念物”とか“国の重要文化財”ってのも、案外多いような気がしない?さっき観た『上江洲家』も国の重要文化財だったし。こういうのってあんまりたくさんあっても、何だか有り難味が薄くなっちゃう気がするんだけども。
 
 さて、眼前に見える“五枝の松”だが、その印象はズバリ「バカでかい盆栽」といった感じだった。
 枝が地面を這うようにニョキニョキと横に伸びている。しかし、なんだってこの松の枝は、こんなに地面スレスレに伸びちゃったんだろう?枝が重いから?
 実際、伸びた枝が途中で折れないように添木がしてあった。う〜ん、自力では支えきれないのだろうか。なんとも厄介な話だ。
 …それにしても、もちろんこの松はしっかり根を張っているわけだから、これからも枝を伸ばしていくんだろう。と言うことは、今後もどんどん横へ横へと広がっていく、ってことだよなぁ。…この松の推定樹齢が250年。今現在の木の広さ(ヘンな表現だけど)が約250u。…一年当たり1u成長してるとして単純に計算すると、久米島の面積が約59kuだから…5900年後にはこの“五枝の松”が島全体を覆うことに!!って、偉く気の長い話じゃんねぇ。意味が無いし、こんな計算したって。
 
 僕がそんな下らないことを考えていると、いつの間にやら松の周りにたくさんの人が押し寄せて来ていた。どうやらさっきの団体さんたちがここへ移動してきたようだ。
 …退散するか。
 僕は駐車場に戻る途中、売店でアイスを買った。晴れ間が出てきた途端に急に暑くなってきた。
 まだちょっと早い気もするけど、そろそろ“仲泊”に戻ろうかなぁ。街の散策もしたいしね♪
 

地元の人々が大集合。
総出で公園の整備をしてたようでした。
みんなで一息入れてます。


  

“五枝の松”。
横に広がった不思議な松。
広さ畳150畳分だって!…ピンと来ないけど。


  

逆側から見たところ。
こっちにもしっかり石碑があります。リバーシブル!
デロ〜ンと垂れ下がったような枝の伸び方。


  

その松の奥には、拝所のようなものが。
一般の人は入れないんでしょ?柵があるし。
松の精霊でも祀ってるんでしょうか?


  


枝が支えられてる(^_^;)
重みに耐えかねてるんだねぇ。
ほとんど地面を這ってる状態。すごいね、これ。


  

だいぶ天気も良くなってきた。
うれしいじゃないか♪
このまま明日もピーカンを期待しちゃうよ〜!


  
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