久米島
〜4月22日・その3〜


 “比屋定バンタ”、“太陽石”から離れて、ちょっと周辺の村の中を車でグルグルと周ってみる。
 畑が広がるのどかな眺めにうつつを抜かしている間に、前方に海が見えてきた。…まぁ、海沿いをうろついているんだから当たり前なんだけどね。
 海が見えるとなると、ついついそばまで降りて行きたくなるのが人の性(さが)と言うもの(?)。僕は海を目指してズンズン前進していった。
 が、僕の選んだ道はだんだんと行く手が細くなっていき、ついには一瞬「行き止まりか?」と思うほど狭くなってしまった。
 …どうしよう。引き返そうかなぁ。でも、道は確実に海に向かって伸びているような気もするし…いいや。このまま行っちゃえ!猪突猛進〜!
 突然スコールのような雨がザザ〜ッと降り出してきて、車のタイヤが派手に路面の泥を跳ね上げる。凸凹でガタガタなオフロード状態の道を「何だかパリダカな気分」などとバカなことを考えつつ進んで行くと、目の前に海と、何やら淀のようなものが出現した。だけど、ちょうどそこのところで道は急な下り坂にでもなっているのか、先がまったく見えなくなった。
 う〜む、この車はレンタカーだし、このまま行っちゃうのは危険かも…でも、轍が残ってるってことは、通れない道じゃないってことだよなぁ。…行っちゃえ〜!
 道の先は、案の定傾斜の激しいガッタガタな下り坂。前のめりになった車は上下左右に激しく揺すぶられ、床の下からは「ドコッ!」とか「ガコン!」とか、イヤな振動が伝わってくる。僕の脳裏に一瞬“弁償”の漢字二文字が『ウルトラQ』のタイトルのように浮かび上がる(←世代を選ぶ比喩)。
 
 車が壊れやしないかと半分泣きそうになりながら、なんとか海岸沿いのわりと広い道路に辿り着いた。
 僕は慌てて車の下回りを点検してみる。…どうやら傷はついてないみたい。ちょっとホッとする。でもおかげで「コイツは一体どんな道路を走ったんだ?」と不審に思われてしまいそうなぐらいに、車のボディーはドロドロ。…こんな道路を走ってたんですよ、実は。
 とりあえず車の無事を確認し、僕は海岸沿いをしばらく走ってみることにした。
 左には、吹き荒ぶ風に荒れ狂う海。日本海チックな激しい波。「BGMは津軽三味線でお願い」ってな気分。
 対する右側には、草で覆われた崖。緑色が雨の中で一際鮮やかに見える。「BGMはヨーデルでお願い」って、それはちょっと違う気がするけど。
 ほぼ一直線で伸びる道路をグングン走っていくと、遥か向こうに見覚えのある巨大な奇岩が見えてきた。
 あ、あれは“ミーフガー”だな。
 僕は“ミーフガー”を目指すことにする。
 

たぶん仲村渠か具志川辺り。
何だかイイ感じの売店あり。
ちょっと中を覗いたけど、誰も居らず。


  

その売店のすぐそばにあった“移民の碑”。
離島は廃村、統合を繰り返してることが多い。
小さな島にもいろんな歴史が詰まっている。


  

海が見えてきた〜♪
でも、この先に待っていたのは凸凹道。
“凸凹”って、ヘンな漢字。


  

海に沿って伸びる道路。
崖がず〜っと連なってます。
岩場から飛んでくる波の飛沫と雨で遠くが霞んでる…

  
    

♪ある日〜パパと二人で〜語り合ったさ〜
この世で生きる喜び〜そして悲しみのことを〜
…『グリーングリーン』ってこんなヘビーな唄だった?


  

“東映”のオープニングを彷彿とさせる波濤。
飛沫が派手に散って風に飛ばされてきます。
車のフロントグラスが真っ白に。


  
 
 と、“ミーフガー”に向かう道の少し手前の坂の中腹に、何やら人がウロウロとしている場所があった。何だろうと思ってそこに行ってみると、ゴツゴツとした岩が積み上げられた小山のような物体が現れた。“史跡 具志川城跡”という石標が建っていた。
 これはやっぱりチェックしておかないとね、廃墟好きのささきくんとしては。
 
 しかし、この城跡、本島のそれと比べるとかなり小規模。それに、城壁の石の積み方もかなりワイルドと言うか、大雑把な感じ。
 かなり急な石段(と言うか、坂道に石の足場を付けておきました、っていう状態)を上ると、本丸跡らしいちょっと広めの空間に出た。
 …これといって何もないんだけど、石積みの城壁の上によじ登って下を見下ろすと、“ミーフガー”と海が見えてなかなかイイ感じだ。周囲の草木の緑も目に沁みる。
 そんなふうにしているうちに、雨もすっかり上がって、空が少し明るくなってきた。…でも、油断も期待も出来ない。今日の久米島はさっきから天気が不安定にコロコロと変わる。
 
 ところで、この日この“具志川城跡”には7〜8人の見物客が訪れていた。車のナンバーからすると、全員地元の人のようだった。彼らは城跡の本丸に登って、しばらくするとそのままどこかへ去っていってしまう。僕はてっきり「その後“ミーフガー”にでも行くのかなぁ?」と思っていたのだが、彼らはひとりとして“ミーフガー”には立ち寄らず。…ちょっと不思議。
 その見物客の中に、若い夫婦と小さな女の子の家族連れが居たのだが、どうやらお母さんがカメラに凝っているらしくて、旦那と子供をほったらかしで忙しなくシャッターを押し捲っていた。
 家族やら風景やらをバシバシと撮り続け、あまりにその行為に夢中になってしまい、カメラを覗いたまま道路のど真ん中にどんどん移動していく。
 「ママ!あぶないよ!」 子供の忠告に耳を貸さず、納得のいくカメラアングルを求めて路上を右往左往する母親。
 …あんた、それ教育上良くないと思うよ。子供の言ってることが正論だし。だいたい、母親がそんな危険な場所から写真を撮ったって、家族のいい表情が撮れるわけが無い。
 ハラハラとした顔で母親の動きを目で追う旦那と子供。そんな2人に向かってカメラを構える妻。そのバックには“ミーフガー”と海。…ちょっと奥さん、あなたたち自身が恰好の被写体になってますぜ。(僕は撮らなかったけど)
 

“具志川城跡”です。
かなりワイルドな城跡。
規模は小さいんだけど。


 


“野積み”という工法らしいです。
…要するに“そのまま積みました”って感じ。
これで崩れないってのが不思議なくらい。


  

城壁。こちらもやっぱりワイルド。
石灰岩が白くてまぶしい。
本丸跡には何もなかったけど…


  

城跡から“ミーフガ―”を見下ろす。
この道路で決死の家族写真撮影が…
なにもそこまでしなくとも…

  
  

 さて、“ミーフガー”である。
 この面白い形状をした巨岩は“女岩”とされ、“子授け”にご利益があるらしい。「子宝に恵まれたい!」と思う女性はここでお祈りをすると効果アリ?!なんだそうな。
 …ってさぁ、見たまんまじゃんねぇ。本島の“斎場御嶽”の“三庫理”の岩のトンネルもそうだったけど…まぁね、そりゃ気持ちはよ〜く分かる!こういうの見れば「ああ、なるほどね」と納得もいくが、それにしたって、ねぇ…
 しかも、ここ久米島にはこの“ミーフガー”と対を成す“ガラサー山”なる場所まであるらしい(こっちは後ほど…(^.^))。まったく出来すぎな感じだ。天地創造の神様って、結構シャレの利いたことするよなぁ。
 ま、それは置いといて、とにかくこんな奇岩を生み出す海辺である。とにかく吹きっ晒し状態。“ミーフガー”だけじゃなく、その周りにある岩のどれもがかなり奇っ怪な形をしている。…かえって、そっちのほうが面白い気もするぐらい。
 
 “ミーフガー”に近づいてみると、岩の下に香炉のようなものが置かれていた。ふ〜ん、ここでお祈りするわけだね。
 しかし、僕はあいにく男だし独身なので、子宝に恵まれちゃったりするとこれまた厄介なことになる。ヘタに祈ったりするわけにはいかない。
 …それにしても、「ここで祈願すると子宝に恵まれる」と最初に言い出したのは、一体誰なんだろう?
 未だにそういうご利益があるということが脈々と伝わって来ている、ということは、「“ミーフガー”でお祈りしたら、バッチリ子供を授かって今はとってもハッピーです♪」という実例・体験談がちゃんと存在している、ということなのだろうか?
 何の裏づけもない信仰って、ちょっと有り得ないもんねぇ。きっと、“ミーフガーのご利益”にあやかった人が実際に居るんだろう。
 
 僕が辺りをうろついていると、一台のタクシーがこちらにやって来た。
 中から降りて来たのは、若い女性2人組だった。タクシーの運転手も一緒に降りてきて、2人に“ミーフガー”の説明をしはじめた。…こういうときって、女の人はどんな気持ちで説明を聞いているものなんだろうか?一歩間違えればセクハラになりかねない微妙な話題って気もするが…
 「…まぁ、あなたたちはまだ若いし、あんまり関係ないかもしれないけどねぇ」
 タクシーの運転手(恰幅のいいおじさん)はそう言って、軽く笑った。つられて笑い返す2人。
 「将来の為に、お祈りしてったら?」 「え?あ〜、いいですぅ、ハハハ…」
 …しばし沈黙。僕は内心「この運転手、とんでもない発言をしやしないか」と期待…じゃなくて心配していたが、2人の女性は周辺をグルリと見渡して、「…次行く?」とお互いの顔を見ながら探るような気配。長居したくなかったのか、はたまたあまり関心がなかったのか。確かに、何もないしね、ここ。
 あっという間に居なくなったタクシーを見送りながら、僕もそろそろ次に行くことにした。…って、“次”の宛ては無いんだけど。
 

“ミーフガー”へと続く道。
いくらか天気が好転の兆し…?
天気にもご利益があるのか?“ミーフガー”。


  

…ねぇ、そうだよねぇ。
やっぱりそういうことなんだよねぇ。(オヤジ)
(↑前にもどこかで見たようなコメント)


  


背びれ岩。(僕が勝手に名付けました)
波と風の動きをそのまま刻み付けたような形。
自然の力強さを痛感する光景。


  

う〜む、見れば見るほど…(しつこいよね)
でも、作ろうと思って作れるもんじゃないよねぇ。
って、作られても困るし。


    

北原辺りの畑。
…何を育ててるのかは分かんないけど(植物音痴)
すごくキレイな色で風に揺れてました。


 

猫。僕をものすごく警戒しています。
「不審者!あっち行け!」ってな顔してやがります。
…キミの読みは正しい、たぶん。


  
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