未来はいつも懐かしく
 
 “多摩ニュータウン”。かつては武蔵野の長閑な田園丘陵地帯だった広大な土地を開墾し、高度成長に伴う住宅難の解消を目指して造られた巨大団地群。その後、居住空間への意識の高まりと呼応するようにコンセプチュアルな“街”としての分譲が始まり、文字通り新しい街の形を具現化させてきた。…約30〜20年ぐらい前の話。
 思えば、僕が小学生の頃、よく夕方のニュースの始まる前ぐらいの時間帯に「多摩ニュータウン分譲中!」なんていうCMが流れていた。“ニュータウン”という言葉に何となく近未来の世界を彷彿とさせられたものだった。実際、当時の住宅事情からすればこのニュータウンは飛び抜けて未来志向の人造都市だったんだろう。
 …でも、90年代後半辺りから、多摩ニュータウンが高齢化の波に晒されている、という問題が上り出した。例えコンセプチュアルであっても高級であっても、結局は集合住宅。ニューファミリーとていつまでもニューのままで居られるわけもなく、子供たちは成長し集合住宅を離れ、残されるのは中高年になった夫婦だけ。というような典型的な団地の衰退への道筋を辿りつつある。住人の増加と共に増えて来た学校は次々に廃校となり、近未来のイメージ&人車分離のために設けられた歩道橋や階段を多用した立体的な街づくりがバリアフリー化の足枷となり…何だか皮肉な話である。
 ところで、こういう人為的に造られた“街”が、東京西部にはかなりたくさん在る。で、そんな街のほとんどが何故かヨーロッパを意識している。分譲地の名称しかり、建物の雰囲気しかり、タイルや煉瓦を多用した外観しかり。これって明らかに女性ウケする趣きだ。人生最大の買い物とされるマイホーム購入。何だかんだ言って、その決定権の実質的な部分を握っているのは奥さんのほうだったりするのかも…
 そんなヨーロピアナイズ(って言うのか?)の先駆のひとつ“多摩ニュータウン”は、駅前にギリシャ神殿やパティオを出現させる。さらに“ベネッセ”“サンリオピューロランド”“ラ・フェット多摩”である。おまけに京王堀之内駅に至っては、ガウディもどきのアートな景観さえも出現させている。ヨーロッパ=お洒落ってイメージってちょっと短絡的過ぎない?って言うか、一歩間違えると壮大なトホホ物件に成り下がってしまう危険性すらあるような…
 とは言え、確かにこの街の佇まいは未来都市の匂いを漂わせている。30年経った今でもなお、ね。とどのつまり、未来都市ってのは永遠に未来都市のままなのかもしれない。未来の夢を滲ませたまま、徐々に衰えていく都市。少しばかり切ない気持ちになったり。
 未来志向で計画された街がやがて迎えるであろう本当の未来。少子高齢化を織り込むべきだったはずなのに、そこまで思いが及ばなかった都市計画。いろんなものを象徴のするかのように、多摩ニュータウンは曇天の下に沈んでいた。
 

南大沢駅のそばにある“南大沢輪舞歩道橋”。
円形のフォルムが目を引きます。
まさに輪舞!…だよね?

  

果たして円形にする必要性があったのか?
あ、そんなことを言っちゃいけないよね。
これがニュータウンの気概だ!

  

南大沢周辺の公団住宅は比較的新しめ。
「ニュータウン=何となくお洒落」なイメージどおり。
そしてその真骨頂が…

  


多摩NTの夢、『ベルコリーヌ南大沢』。
南欧風のデザインが一際目立つ住宅群。
ベルコリーヌってのは仏語で“丘”って意味らしい。

  

これが公団住宅だっていうのが驚き。
街の中には小川も流れてるし。
女性はこういうの好きな方、多いのでは?

  

建築物としても集合住宅の形態としても価値は高い。
好き好きはあるだろうが、なかなか面白い。
何だかこの一角が多摩だとは思い難い雰囲気。

   

ほら、こんなところにも南欧の風が…(^_^;)
この奥には泉のような石積みのオブジェも在ったり。
写真左脇に在る店舗は廃業してましたけど。

  

多摩NTの特徴のひとつ、立体的な街の構造。
歩道と車道が分離している箇所もかなり多い。
だから歩道橋もやたらと多い。

  

“京王堀之内駅”の前にある階段。
分かりづらいけど、一面にモザイク装飾。
シュールな曲線が存在感をアピールしまくり。

  

階段の横にはエスカレーターも完備。
それにしても、無駄にアートしてますよね、これ。
たぶんガウディの“グエル公園”辺りがモチーフかと。

  

クネクネと蛇行する階段。
脇や踊場に配置されたオブジェの数々。
駅前に具現化する珍妙なpassion!

   

たぶんベンチ。…なのかなぁ?
しかし、どうしてまたガウディなんだろう。
トカゲのオブジェとか置くとさらにガウディ化するね。

  

階段を上がりきると、そこにはさらに階段が。
しかも滝が流れてるし。
その滝の下には小さな池と丸い石。…分からんなぁ。

  

駅前から高台の住宅群へと伸びるエスカレーター。
もの凄いインパクトがあります、この眺め。
未来都市。しかし非バリアフリー対応。

  

エスカレーターの上に在る公団住宅。
神殿チックなデザインが施されてて面白い。
…のだけど、どうもパッとしないんですけど…

  

階段中央部分のモザイクが激しく剥離してるし。
鱗の剥がれた魚みたいでちょっと気持ち悪いッス。
早くメンテしてください!

  

『パルテノン多摩』は多目的ホール。
“京王多摩センター駅”の真ん前に聳えております。
こちらも思いっきり神殿風。名前もそのまんまだし。

  

多摩センター駅近くにある“ベネッセ”の本社ビル。
その周辺にはこういう物体がたくさん配置されてる。
これは…“温泉に浸かるカラフルなおばさん達”(?)

  

これは…複数のヘビがくっついたサイケなオブジェ。
…それにしても、何なんだ?これは一体…
教えて!赤ペン先生!

   


“ベンチに腰掛けて本を読む紳士”…ベンチがガラス製。
「座っちゃダメです」という但し書きが付いてます。
右脇には謎の生き物が…ヤギ?

  

“怪鳥”。よく観ると人が前から抱きついてるような…
暴れる怪鳥を押さえ込んでいるのか?お尻がカラフルです。
かなり意味不明。進研ゼミでお勉強すれば分かるようになりますか?

  

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