冒険王
 
 東京の西の奥に、“青梅”という街がある。背後には奥多摩の山々が控える、自然の豊かな街だ。
 …まぁ、要するに田舎なのである(青梅にお住まいの方、ごめんなさい!)。
 この青梅の街に『昭和レトロ商品博物館』なるものがある、ということは、だいぶ以前から知っていたのだが、なかなか行くチャンスが無かった。
 米空軍の基地があることで知られている福生に住んでいる知り合いが、「青梅まで一緒に観に行かない?」と誘ってくれたので、ちょっと出掛けてみることにした。

 JRの青梅駅に降り立つと、いきなり古典的なイタリア映画『鉄道員』の“絵看板”が出迎えてくれた。そう、この青梅駅前の商店街には、街のあちこちにこういった古めかしい趣きたっぷりの“映画の絵看板”が掲げられているのだ。
 『椿三十郎』『浮雲』『羅生門』などの邦画、『第三の男』『カサブランカ』『市民ケーン』などの洋画、いわゆる名作の類から「知らないなぁ、こんな映画…」という作品まで、とにかく数多くの絵看板が街に飾られている。
 これって、実は商店街の空き店舗対策としてはじまった“町おこし事業”なのだそうだ。果たしてこの絵看板が、街の活性化にどれほどの効果をもたらしたのかはさっぱり分からないが、とりあえず、特色のある街づくりという点では、文句ナシに成功しているような気がする。
 でもね、正直言って、これらの“レトロ感覚”って、僕の世代よりもう〜んと前の世代の人たち向けだよねぇ。『父よ、あなたは強かった』なんて映画の看板を観たところで「なつかし〜!!」とは思わないもんなぁ。
 一昔前、巷では“レトロブーム”と称して、昭和初期〜戦後あたりの復刻が盛んだった。いまだにブリキのおもちゃなんかは人気があるらしいし。しかし、僕はこういうレトロな物にさほど興味が無かったりする(^_^;)
 
 連れと一緒に映画の絵看板を観ながら、人通りの少ない商店街を歩く。ポカポカ陽気で散策するにはもってこいの日和だ。
 で、この商店街の中に、『昭和レトロ商品博物館』がある。その名のとおり、昭和時代のちょっと古くて懐かしい商品が陳列されている博物館だ。駄菓子・医薬品・ゲーム・カメラ関連・雑誌・教科書・ジュース類…ジャンルはかなり多岐に渡る。
 博物館の中に入ると、いきなりこういったレトロな雑貨類が目に飛び込んでくる。博物館の職員(?)さんが、おもむろにラジカセのスイッチを入れると、石原裕次郎の歌が流れはじめた。…この選曲のセンスから言って、明らかに対象になる世代は僕よりも上の(=ともすると僕の父母ぐらいの人たち辺りの)世代なんだろう。
 とは言え、ここに展示されている品物は、なかなか面白い。かもしれない。僕は個人的に“ダイアモンドゲーム”(って知ってる?星型のチェス風なすごろくみたいなヤツ)や、山口百恵がイメージキャラクターを務めるフジカラーのポスター類、それから今ではもう見かけなくなってしまった缶ジュース(例:“維力”“ホワイトコーラ”“kilala”“サスケ”などなど)にとくに惹かれたりする。
 「あ〜、おまけつきのお菓子って、昔はよく買ったよね。おまけが目当てでね」
 「お!“象が踏んでも壊れない筆箱”だよ!実物はじめて見た〜!」
 「ああ!“ライオン子供はみがき”だ!俺、この“バナナ味”っての、死ぬほどキライだったよ。歯みがきしてて吐いたことがあるもん」
 …なんだかんだと言いながら、結構楽しんでるじゃんね、俺。
 
 で、この博物館の2階には“映画看板の部屋”という常設展示のスペースがある。まるっきり“普通の民家の階段”な感じの急な階段を昇ると、畳敷きの六条間が二間、襖を間に挟んであって、その壁面には総天然色の絵看板がビッチリ貼り付けてある。僕は一瞬、「わ〜い、鈴木清順な世界!」と色めきたつが、何しろ看板に描かれた映画がどれもムチャクチャ古い日本映画なので、ちょっとピンと来なかったりして。
 ちなみに、この博物館は元は家具屋さんだったらしい。その家具屋さんが廃業し、空き店舗になった建物を博物館として再利用したものなのだとか。だから、館内はそれほど広くは無い。こじんまりとした空間に、かなり濃密な世界が展開されている。…う〜む、これって、ハマる人はかなりハマりそうだね。

 レトロな風情溢れる博物館を出ると、僕らの目の前を日焼け&茶髪の女子高生が通り過ぎて行った。…ひょっとすると、この女子高生の格好も、今やすでにレトロの域に達してないか?
 よく「時代は繰り返す」という。いつの日か、ガングロ茶髪ルーズソックスが再び世の中で幅を利かせる時代がやって来るかもしれない。そのとき、僕らはそれを見て「懐かしいなぁ〜。昔にもあんな格好が流行ったんだよねぇ」と過去をほのぼの振り返ったりするのだろうか。
 

青梅駅前ロータリー。
この映画キライ。なんか悲哀帯びすぎてて。
ちなみに“ぽっぽや”じゃないよ。

  

至って普通の商店街。
…ちょっと寂し過ぎる気もするけど。
だがしかし、街の中には絵看板がたくさん。

  

左は名画『カサブランカ』。
歯の浮くようなセリフ連発の映画ですね。
実は密かにアメリカ万歳!な内容って気も…

  

め、『めはだじごく』!?スゴイ題名!
さらに『テキサス』ってどんな映画だ?
何気にアラン・ドロンが出てるようだが…

  

東千代之介って誰?
“東映スコープ”ってなに?
これ、有名な映画なの?

  

これ、舞台は沖縄だったりします。
寅さん、ちょっと微妙。
この微妙さ加減が絵看板の魅力(?)

  

石原裕次郎主演・『日蝕の夏』。
知らないよ、そんな映画!
街灯の下のヘンなオブジェ、結構カワイイ。

  


これは文句ナシに名作だと思う。
もはやミステリーの格調高い古典!
ラストシーンは超有名!

 

手前のヘンなヤツ、電話ボックスです。
アートな街・青梅。
『旅愁』の看板さえ霞んで見えそうな…

  

『網走番外地』なのに、舞台は沖縄(^_^;)
その名も『南国の対決』!
…どうでもいいけど、後ろは普通の民家じゃん…

  

博物館の前。
一見、博物館とは気づかないような外観。
ちなみに入館料は\200です。

  

富山の薬売りチックなレトロ薬品の数々。
なんだかこういうのって、胡散臭い。
でも、やたらと効きそうな気もする。

  

駄菓子屋さん『ロケット堂』。
駄菓子って紛い物臭くてイイよねぇ。
不衛生でも子供は大好き!

  

“なんでも鑑定団連続チャンピオン”って…
スゴイんだかスゴクないんだか。
僕だったら即売り飛ばす!

  

グリコ。一粒300メートル。
女の子向けのおまけは家電製品。
高度経済成長の象徴として。

  

“清涼飲料研究家・清水りょうこ”って…
スゴイんだかスゴクないんだか。
僕だったら即ゴミ箱!

  

2階にはこんな部屋があるみたい。
“板観”さん、という絵師さんらしいです。
今でもそこそこ需要があったりするのかな?

  

絢爛な絵看板の世界。
サイケ&キッチュな雰囲気すら漂う。
ちょっと圧倒されちゃいます。

  

撮影で使われた(?)照明。
下には35mmフィルムが絡み合う。
『キネマの天地』を彷彿と…あ、これは松竹だ。

  


ド〜ン!と来るね、このロゴは。
波濤砕ける岩場の辺りからズイ〜ッと。
濃い〜日本映画がはじまる予感と共に。

  

1階に戻って来ました。
今や都会では絶滅寸前の赤い丸ポスト。
…竹富島を思い出す。

  

昭和8年。日中戦争へと雪崩れ込む日本。
付録の“爆弾三勇士の銅像模型”は…
表紙の屈託の無さが、とても恐ろしい。