世界遺産・本物
 

 “日光”と言えば、神奈川出身の僕にとっては“修学旅行のメッカ”という印象が強い。
 実際、僕も小学校の修学旅行で日光を訪れた。“華厳の滝”や“竜頭の滝”を観て、“東照宮”を観て…
 当時の僕は、神社仏閣に異様な関心を示す“お年寄りチック”なヘンな子供だったので、“東照宮”をそれはそれは有り難〜い気持ちで拝見させて戴いたわけだが、よくよく考えてみれば、こんな渋い場所を小学生に見せたところで、果たして子供が喜ぶのか非常に疑問を感じるよなぁ。
 修学旅行ってさ、“日光”だとか“京都”だとか“鎌倉”だとか、どうしてこう渋好みなところを選ぶんだろう?最近でこそ「修学旅行はワイハ〜♪」とか「スキー修学旅行なんだ〜♪」とか、学校単位の団体ツアーみたいな修学旅行が増えてきているみたいだけど…
 ちなみに僕の場合は、小学校→日光、中学校→京都・奈良、高校→北海道の道南、という、“関東地方の学校の典型”みたいな修学旅行遍歴を辿ってきた。僕がちょうど高校3年のときに、中国に修学旅行に行っていた日本の高校生たちが列車事故に遭って大勢亡くなった、という衝撃的な出来事があって、そのとき僕らの間では「修学旅行で中国に行くなんて…それってスゴイねぇ」などと、不謹慎な話題で盛り上がったりしたものだった。

 …話を元に戻す。とにかく、風情や趣きと程遠い世界で暮らしている子供にとって、日光という場所はあまりにも高尚過ぎるのでは?大人になって、改めて日光を訪れたら、ひょっとしてまるで違った見方が出来るんじゃないか?
 というようなことを思いつつ、約20年ぶりにやって来た日光・東照宮は、…正直言って、子供のときの印象と大して変わらない場所だった(^_^;)
 いや、もちろん、あの頃よりは幾分細かい部分にも目が行くようにはなっていると思う。当時は漠然と眺めていた“陽明門”や“神厩舎”なども、彫刻のひとつひとつをじっくり観察出来るようにはなった。
 でも、今の僕が“三猿”や“眠り猫”を観て抱く感想は、小学生だった頃の僕の気持ちとまったく一緒。「………それで?」という感じね。ハッキリ言って、その知名度と反比例するような“三猿”“眠り猫”の「え?これがそうなのか?」的な拍子抜け具合は、大人になったところでぜんぜん変化ナシ。
 
 そんな中、今回の東照宮訪問で一番印象が違っていたのが“本地堂”というお堂の中にある“鳴龍”。
 この“鳴龍”は、天井に描かれている龍の絵なのだが、この天井に向かって手を叩いたりすると、その音が共鳴し、あたかも絵の龍が鳴いているように聞こえる、という代物。
 小学生の当時、ガイドのおじさんが強力に「パン!パン!」と繰り返し手を叩いてくれたのだが、僕の耳にはその共鳴音がちっとも聞こえなくて、「これってサギじゃん…」とか思ったりした。一緒に居た他の子たちもみんな「聞こえないよ、鳴き声なんて…」と言っていた。おそらく、微妙な共鳴音を聞き分けられるほど子供の耳は肥えていなかったし、注意力も散漫だったんだろう。
 で、今回の“鳴龍”は…なんと!ガイドさんが“手を叩く”んじゃなくて、“拍子木を思いっきり強く叩く”という方式に変貌を遂げていた。ひょっとすると、手を叩くぐらいじゃ「聞こえないぞ!どういうことだ!」という批判が相次いだのではないか?
 作務衣に身を包んだ、一見「ヤ○ザじゃないの?」と見紛うような巨体で強面の屈強なおにいさんが、“鳴龍”の薀蓄をひと通り語った後、おもむろに拍子木を手にして、折れるんじゃないかと心配になるぐらいの勢いで「カ〜〜〜ン!」と大きな音を鳴らす。すると…おお〜!聞こえる聞こえる!「カ〜〜〜ン」という音と繋がるように「キュルルルルル〜ン」というような、ディレイの掛かった音が。「鈴が転がるような音」とおにいさんが言っていたけど、まさにそんな感じ。
 このガイドのおにいさんは、本堂に安置されている各干支にちなんだ仏像(?)と、ご神体の丸鏡にお参りするようにと薦め、さらにそれらのミニチュアの入ったお守りを「お財布などに入れていつも持ち歩いてください」などと言って購入することを暗に奨励していた。が、僕と一緒に居た30人ぐらいの参拝客は誰一人買わなかった。ま、世の中そんなに甘くない、といったところかな。
 

日光名所・“神橋”は朱塗りの橋。
…でも、今は修理中です。
僕が小学生の頃も工事中だったんだけど…

  

“東照宮”です。
いやぁ、懐かしいなぁ。もうかれこれ20年ぶり。
雨で厳かな雰囲気がさらに強調されてる。

  

これは参道のはずれにある“仮殿”。
人通りも少なくて、心地良い緊張感があります。
身が引き締まるって言うの?

  


鳥居をくぐって“五重塔”の前に来ると、
塔の下で修学旅行の子供が集まってました。
俺にもこんな時代があったんだよなぁ。

  

何か、工事してますね。
この工事中の建物の横が集合写真のポイント。
“陽明門”をバックにして記念撮影♪

   

馬小屋。…正式な名前は“神厩舎”。
格子窓の上に例の“三猿”の彫刻が。
小学生当時の感想は、「案外セコいな、これ…」

         

見ざる、言わざる、聞かざる。
…要するに、江戸時代のダジャレ?
時代を超越した希有のギャグ!

   

馬小屋の中に居る白馬。“神馬”らしいです。
昔も居ましたね、白い馬が。
まさか当時の馬じゃないとは思うんだけど。

  

何しろ“世界遺産”ですからね。
昔と寸分違わぬ姿が拝めますね。
写真右の辺りで記念写真を撮ったんだよなぁ。

  

“陽明門”です。
かなり豪華&ボリューム感のある門。
大きさ自体はそう大したことないけど。

  

彫刻等が「これでもか!」な勢いで施されてます。
200を超える彫刻と、漆と金箔でキンキラキンです。
外人さんも大喜びでした。

  

“陽明門”をくぐったところにある“唐門”。
こちらにも中国風な彫刻が。
あ、だから“唐門”なわけか?

  


東回廊の“奥社”参道入り口。
ここにあの有名な“眠り猫”の彫刻があります。
ちなみに、写真に写っているのは韓国からの観光客。

  

“奥社”の入り口の上の方に…
よ〜く見ないと分かんないような…
そう!あれが“眠り猫”!…かなりショボい…

  

アップにしてみました。
しかし、何でこれがこんなに有名なんだろう?
ず〜っと疑問に思ってたんだけどね…

   

こちらは“本地堂”。
これまた有名な“鳴龍”の描かれた天井があります。
でも、堂内は全面撮影禁止。残念。

  

杉林も日光らしい眺め。
古の風情を今に伝えます。
スギ花粉のシーズンは大変そうだけどね〜。

  


日光を開山した勝道上人。
一大聖地を作り上げた立役者ですね。
…しかし、この人、眉毛ボ〜ン!だね、ずいぶん。

  

 “東照宮”から“いろは坂”に入ってみる。紅葉のシーズンには大渋滞を起こすこの坂も、平日の悪天候ということもあってか、ぜ〜んぜんガラガラ。つづらおり状態でクネクネとくねる坂を、ひたすら車で上る。ハッキリ言って、若葉マークを付けているようなドライバーがうっかりこんなところに来てしまったら、きっと泣いて後悔するだろうと思われるいやらしい坂だ。
 「ガードレールを突き破って、坂の下に車ごと転落することもある」という噂を、小学生の頃に聞いたことがあるけど、それが本当のことなのかどうかは未だに分からない。でも、そんな人も居るかもしれないと思わせるには充分だ。
 “いろは坂”を上って下りると(これってまったく無意味な行為…)、これまた日光名所“華厳の滝”に到着した。
 僕が、修学旅行でこの“華厳の滝”をはじめて見たときに巻き起こしたちょっとした騒動のことに関しては、『沖縄エッセイもどき』の中で触れているけれど、あのときの感激をもう一度味わえるかどうか、僕は少しばかり自分を試すような気持ちで、滝を観瀑することにした。

 滝の観瀑スポットに行くには、遊歩道を歩いて行くか、エレベーターで一気に観瀑台に降りることになる。天気が良ければ歩いて行きたいところだったのだが、あいにく雨が降っていたので、エレベーターを選択。
 チケット(切符)を買ってエレベーターに乗り込むと、函内には韓国語で会話をする団体さんがほぼ満員状態でひしめき合っていた。僕の真横に居るおじさんは、どうやらこの団体の中心人物らしき人で、しきりに何やらギャグらしきことを言っては、他の乗客を爆笑の渦に巻き込んでいった。…何が面白いのかさっぱり分からない僕と、エレベーターの乗務員のおじさん。乗務員のおじさんは、ちらりと僕のほうを見る。僕もおじさんを見返す。お互い、「ちょっと居づらいなぁ…」という気持ちを視線に込めていた。
 
 さて、エレベーターが観瀑台に着くと、そこには韓国の団体さんの“先発隊”が居て、僕と一緒にエレベーターに乗っていた“後発隊”と合流。一気にハングル比率が上昇した観瀑台は、まるで日本じゃないみたいな状況に。
 「あ、ごめんなさい。写真を撮ってもいいですか?」
 え?僕の写真を撮りたいの?なんだ〜、テレるじゃんかぁ。どうせ撮るならカッコよく撮ってね♪…なんてわけがなく、この要請を意訳すると「すみません、記念写真を撮ってもらってもいいですか?」ということだよね。
 僕が写真を撮ってあげると、次から次に「私たちも…」とか言って、カメラを差し出される。おい!俺は記念写真のカメラマンじゃないんだぞ!と内心思いつつ、仕方なくカメラマンに徹してしまった。合計5組の記念写真をカメラに収めたところで、ようやく開放された僕は、改めて“華厳の滝”をじっくりと鑑賞する。
 …何か、心なしか滝が小振りになってる気がするんだけど…やっぱり、無垢な小学生だった僕が感じたあの感激は、もう今の僕には戻って来ない感覚になってしまっているのかも知れないなぁ…
 思えば、修学旅行の日光も、ずっと小雨模様だった。レインコートを着て、日光名所を見て周ったんだったっけ。
 でも、あの頃には感じられなかった、小雨に煙る瀑布の妖しい雰囲気を、今はとてもイイな、と思える。
 30余年生きてきて、失ったものも多々あるけれど、その代わりに備え付けてきたものも当然たくさんある。…まぁ、プラマイ0、ってところかなぁ。

 ところで、この“華厳の滝”って、心霊スポット(と言うか心霊写真スポット)として有名だったんだよね。飛び降り自殺する人が多いとかいうんで。
 しかし、僕はそんなことをすっかり忘れて滝の写真をバシバシと撮りまくり、エレベーターで地上に戻ろうとした。と、観瀑台とエレベーターを繋ぐ壕の中に、自殺者の霊を弔う菩薩像(?)が配されているのを目にして、一瞬ギョッとした。
 そうだったんだよ。ここってそういう場所でもあったんだよ。小学生のときには、クラスの子の多くが「心霊写真を撮ってやる!」と息巻いていたんだった。…迂闊に写真を大量に撮っちゃって、俺って大丈夫なのか?
 ついでに気になるのが、例の韓国から来たツアー客。あの人たちは、“華厳の滝”にそういう因縁がある、ってことを知ってるんだろうか?…いや、たぶん知らないな。あんなに無邪気に記念写真を撮ってたし。
 楽しい旅からお国に戻って、写真をウキウキ鑑賞していると…ゲッ!何これ?ヘンなものが写ってる…これって心霊写真じゃないの?ヒエェ〜!―― ってなことになりゃしないか、少し心配ではある。
 まぁ、僕が記念撮影してあげた人たちに限っては、その心配はしなくていいと思うけどね。何しろ、俺って霊感とかぜ〜んぜん無いからねぇ。よかったねぇ、みなさん。安心して写真鑑賞を楽しんでくださいね♪

 実は、この日は日光で一泊しようかと思っていたのだが、雨もだんだん強くなってくるし、これから宿を探すのも面倒になってきたので、さっさと東京に戻ることにした。
 帰り際、ちょっとみやげ物屋を覗いてみた。そう言えば、僕は小学校の修学旅行のとき、一体どんなおみやげを買ったんだっけ?クラスメイトの多くは“木刀”を買って大喜びしてたけど…俺は買ってないよな、そんなもん。…あ、思い出した!ガラスで出来た“三猿”の置物だ!妹にあげようと思って買って帰ったのに、「何これ?こんなのいらな〜い」とか言われて、ちょっと悲しい思いをしたのだった。…思えば、昔からそういう女だったんだ、あの女は!急に鮮やかに甦る、過去の蟠(わだかま)り。そういう妹だって、修学旅行で十和田湖に行ったとき僕宛に、“乙女の像”とか何とかいう銅像の描かれた、ミョ〜な絵皿を買ってきたのだ。
 …要するに、みやげ選びのセンスがない血筋、ってことかもね。改めて、自分の足元を見つめ直した気分…
 

“いろは坂”界隈には猿がたくさん!
観光客がくれるエサを目当てに襲ってきたりする。
くれぐれもご注意を!

  


“華厳の滝”の観瀑へGO!
エレベーターでも徒歩でも滝の下へ行けます。
僕はラクしたいのでエレベーターを選択。

  


エレベーターを降りて、さらに階段も降りる。
この日は何故か韓国の観光客がたくさん。
居合わせた人の8割(推定)が韓国の人だった。

  

ジャ〜ン!とお出ましの“華厳の滝”。
小雨&霧でかなり霞んじゃってます。
でも、それはそれで雰囲気があるかも。

  

日本三大瀑布のひとつ、“華厳の滝”。
これを雄大と取るかショボいと取るかは個人差あり。
僕は結構好き。

  
Movie

華厳の滝。
画面が小さいから迫力ぜんぜんナシ!
滝の落ちる音は結構デカいんだけどね。

  


滝自体もさることながら、周辺の眺めもイイ感じ。
山が間近に見えますし。
観瀑台から谷を見下ろすと…ちと怖い。

  

こういうのって、未だにあるんだよねぇ。
コインにアルファベットで名前とか刻むヤツ。
刻むとき、スゴイ音がするんだよなぁ。

  

やっぱり撮っちゃうでしょ、記念写真。
で、後でついつい確認しちゃうでしょ。
「霊とか写ってないかなぁ…」って。→

  

→だって、ここは“華厳の滝”だもんね。
最初に飛び降りた学生さん、結構有名だしね。
文学的且つ厭世的な遺書は反響を呼んだらしいよ。

  

これがエレベーター。ラクラク観瀑♪
でも\520という価格は、ちょっと高いと思う。
お金が惜しい人は歩いて降りたほうが○。

  

滝の駐車場のそばにあった食堂で。
特製ラーメン・大盛。
どのあたりが“特製”なのか、まったく不明。