こころの時間 其の三

 源氏山周辺から再び鎌倉駅の方へと戻り、今度は海の方向へと向かう。鶴ヶ岡八幡宮から若宮大路を抜け、そのまま材木座海岸、由比ガ浜海岸へと続く道をグングン進んで行く。その途中に、“鎌倉市農協連即売所”という市場がある。規模こそそれほど大きくは無いが、どこか那覇の“農連市場”を彷彿とさせる、他の鎌倉名所とはまったく違うタイプのスポットだ。以前、家族で鎌倉に遊びに来た帰りに、「結構安いね、ここは!」と突然母が色めきたって、後先のことを考えもせずに野菜を大量に買ったことがあった。両手にどっさりと野菜をぶら下げて電車に乗るのが恥ずかしいこと恥ずかしいこと。
 この即売所は案外歴史がある市場で、昭和の初め頃からすでに営業していたらしい。路地物の野菜が安いばかりじゃなく、この地域ならではの野菜も売られている。
 …でも、今日は野菜を買いに来たわけじゃないので、中を少しひやかして歩くだけにしておく。
 もうそろそろ閉店の時間なのだろうか(と言っても正式な閉店時間は無いみたい。「日没まで営業」だって(^_^;))、即売所は店仕舞いを思わせる独特の気だるさに包まれていた。中には商品を完売させたブースもあった。
 中で働く人同士がのんびりと雑談を交わす光景は、やっぱり沖縄の小さな市場を思わせる。…また行きたくなっちゃうなぁ、農連市場に…
 

“鎌倉市農協連即売所”。
それほど大きくはありません。
野菜や花を格安(?)で販売中。

  

市場独特の雰囲気はしっかり漂ってる。
もうそろそろ店が閉まる時間みたいでした。
その気だるさがさらに雰囲気を増長。

  

 ≪光明寺≫

 材木座海岸に程近いところにある大きな寺。ここは今までの臨済宗のお寺とは違う浄土宗の寺。これまでの簡素な禅刹とは一味違う佇まい。
 この寺の一番の見どころは…実は裏山からの眺めだったりする。相模湾越しに富士山が見える、絶好の眺望スポットなのだ。…だけど、今回はちょっとその裏山はパス。だって、山に登るのめんどくさいんだもん。
 どうやら今ここは大規模(?)な改修工事をしているらしい。掘り返したり何だりとかなり忙しない感じ。正直言って落ち着かないです…
 とは言え、ここはいろいろと見どころの多い寺。まずは本堂の左脇にある“記主之庭”というそれはそれは立派な蓮池に…って、ガ〜ン!蓮が無い!!一体どうして!?ひょっとして、この池も改修工事してるのか!?まさか、ねぇ…
 些かショックを感じつつ、今度は右脇の方へ回ってみる。こちらには枯山水の庭があるのだ。さすがにこっちの庭まで改修工事をしたりはしないだろう。
 枯山水の庭“三尊五祖来迎之庭”は、ちゃんとありました。よかったよかった。それにしても、この本堂を囲む回廊には猫がやたらと居る。どの猫もひなたでゴロゴロと油断しきって寝転がっている。人が来ようが近づこうが一向に気にすることもない。まぁ、今日ほどの暖かさならば、そりゃ猫だって日向ぼっこに興じたくもなるってもんだ。
 しばらくこの猫たちと一緒に枯山水を眺めながら日向ぼっこをしていたが、だんだんと睡魔が襲って来はじめたので、腰を上げて寺を出ることにする。
 

総門から山門を見る。
…何か、車がやたらと停まってますけど。
ちょっと風情に欠けるかも…

  

何だか駐車場になってるみたいです。
それはさておき、山門はとても立派です。
浄土宗の大本山ですからねぇ。

  

本堂もなかなか立派です。
向かって左側には蓮池。
右側には枯山水の庭。

  

“記主之庭”という蓮のある池。
…のはずなのに!無い!蓮が無い!
水没してるんでしょうか?

  

本堂の中。奥にはお坊さんが居ます。
ちなみにトイレでもお坊さんに遭遇。
手洗いの水道で花瓶に水を入れてました。

  

“三尊五祖来迎之庭”です。
岩が三尊五大祖を表しているらしい。
…それがどうした?って気がしないでも無い。

  

その庭を眺める回廊では猫が数匹。
どいつもこいつも油断しまくりです。
「餌付けはしないでください」の但し書きが…

  

こんなに至近距離に近づいても動じない。
野良にとっては格好の憩いの場かもしれない。
枯山水は見ちゃいないと思うけど。

  

 光明寺を出て、そのまま材木座海岸まで歩く。と言っても寺から海までは徒歩で1分程度の至近距離だ。寺の向かい側にある住宅の間の狭い路地を抜けると、国道134号線をくぐるトンネルの向こうに海が広がる。
 夕方の材木座は、散歩や磯遊びをする近所の人たちが居るものの、どこかひっそりとした空気に包まれていた。海水浴シーズンになれば海の家が立ち並び、お客でごった返すビーチだけど、冬の鎌倉・逗子の海は静かでイイねぇ。
 湘南の海辺でよく見掛ける店のひとつに、しらす屋さんがある。このしらすが湘南の海の隠れた(?)名産品なのだ。僕は昔、小坪の漁港のそばにある店で、生のしらすを生醤油で食べたことがあった。それが実に美味い!鮮度が良くないとまず味わえない逸品。味そのものはともかく、コリコリプチプチとした歯応えが何とも言えずに魅力的なのだよ〜。
 …だんだん陽が傾いて来て、さて今何時?そうねだいたいね…げっ!まずい!急いで自転車を返さないと!レンタサイクル屋は午後5時に閉まっちゃうのだ。
 もう少し海を見て居たかったが、僕は慌てて材木座を後にして、鎌倉駅まで突っ走った。
 

トンネルの上は国道134号線。
この海が湘南の湘南たる所以。
鎌倉をちょっと特別な場所にしている一因。

  

奥の方に見えるのは“逗子マリーナ”。
コテコテのリゾート感覚が味わえます。
どこまでも小洒落た雰囲気です。

  


湘南名物・サーファー。
この人たちはサーフショップのスタッフみたいです。
擦れ違いざまに爽やかな笑顔を僕に…何故?

   

湘南の海は写真で綺麗に撮るのが難しい。
どうしても色褪せて見えちゃう。
…あ、俺の基準が沖縄の海だからかも(^_^;)

 

 何とか時間ギリギリで自転車を返却して、駅周辺をブラブラとほっつき歩くことにする。
 東口はバスターミナルや小町通りに面していていつでも大変な賑わいを見せているが、西口は比較的穏やかで、ほんの少し駅から離れただけで、途端に閑静な街になる。僕はこの辺りを宛ても無く歩くのが結構好きだったりする。これといって何も無いんだけどね。
 鎌倉には、たぶん景観に配慮してのことだと思うけれど、高い建物がほとんど無いし、緑も多い。出来ればこういう都市計画はこれからもずっと遵守して欲しいなぁ。
 「鎌倉に住む」というのに憧れている人も多いらしい。でも…僕はちょっと遠慮したいかも。海っぺりで暮らすのは塩害にも泣かされるし(車は錆びるし洗濯物はガビガビになるし…)、とくに鎌倉の場合、周辺は大渋滞のメッカ。それにこれだけ観光客がたくさん押し寄せる場所となれば、うっかりヨレヨレの格好で家の外に出ると観光の人々に見られちゃったりしそうだし。案外暮らし難そうな気がする。
 でも、“鎌倉”というだけで、不動産物件にはかなりのプレミアがつく。同じような物件でも鎌倉>逗子>横須賀の順で値段に差が生じる。…日本人ってブランドに弱いンだよなぁ。確かに僕だって「鎌倉に住んでます」なんて聞くと「イイですねぇ、うらやましいなぁ」なんて思っちゃうからねぇ。
 

これは小学校の校門です。
スゴイよねぇ、これ。
まさに古都ならではの演出(?)であります。

  

この趣きたっぷりな建物は…
これ、小学校の体育館だそうです。
侮り難し!御成小学校!

 

 ≪鶴ヶ岡八幡宮≫
 
 …どうでもいいことだけど、僕はどうしても『鶴ヶ岡八幡宮』と呼んでしまう。“ヶ”が入るのと入らないのと、どっちのほうが正しい呼称なんでしょ〜か?観光ガイドなんかだと“鶴岡”って表記されてるし、でも八幡宮でお守りを買うと“鶴ヶ岡”って書いてあったりするし…どっちでもイイのかな?
 とにかく、鎌倉観光では“大仏”と並んで外すことの出来ない場所。鎌倉のシンボルだ。僕にとっては毎年初詣でお参りするお宮さんでもあった。
 周囲の緑と朱塗りの社殿、そして銅葺きの屋根の色とのコントラストはやっぱり素晴らしい。そこを白鳩なんかが飛んでみぃ?そりゃホントに綺麗な光景なのだ。
 本殿で簡単にお参りを済ませ(実は今年の初詣は伊是名島でした…)、そのまま境内にある“源氏池”のほとりの休憩所に移動。池では子供たちが水鉄砲などを持ち寄って水遊びをしていた。…いくら今日が暖かいとはいえ、さすがに水遊びはちょっと時期尚早なのでは…?
 その子供たちが去って行くと、源氏池は途端に静寂に包まれる。夕陽で赤く光る水面を見ていると、少しばかりうら寂しい気持ちになったりする。…腹減ったな。そういえば、今日は『報国寺』と『浄妙寺』で抹茶と茶菓子を口にしただけだった。
 それじゃ、ちょっくらどこかでメシでも食うか。
 

鎌倉といえばやっぱりこれでしょう。
手前にある“舞殿”との並びもグー!
カメラを持った人がムチャクチャ多い!(僕も含む)

  


手水舎。
こういうものひとつひとつが趣を醸し出す。
…この水、涸れたりしないんだろうか?

 

本殿。結構派手な建物です。
左には樹齢1000年以上の大銀杏が。
秋から冬は黄金色に色づいてそりゃあ見事。

  

源氏池の黄昏。
弁財天社と太鼓橋が見えます。
昔の人もこんな夕陽を見てたんだろうか。

  

分かりづらいと思うけど、真ん中にリスが居ます。
鎌倉にはなぜかリスがたくさん居る。
原因は以前聞いたことがあるけど…忘れた(^_^;)

  

段葛。これが八幡宮の正式な参道。
春になると桜並木になります。
毛虫も大量発生です。

  

 八幡宮から若宮大路を歩きながら、食べ物屋を物色する。何を食おうかなぁ。そばもイイし、釜飯もイイなぁ。気張って懐石料理なんかも悪くない。…とあれこれ迷ったが、結局僕は『館 浅羽屋』といううなぎ料理屋に入ることにした。
 この店はあの魯山人や笠智衆も行き付けだったらしい。で、僕も何度かここでうなぎを食べた。ここのうなぎ(この店では“運納喜”と書くらしい。幸運を呼ぶ料理だって)は、マジで美味い♪タレは甘味を控えたあっさり味で、何と言ってもうなぎの柔らかさ!身はふんわりとしていて、皮でさえ箸を入れるとスッと簡単に切れてしまう。…あ、思い出しただけで思わず唾が…
 このときはちょっと奮発してうなぎの蒲焼が三枚乗ってる重を注文した。食べ応えも満点。すっかり満足して店を出た。
 
 さて、そろそろ今晩泊まるホテルに移動しようかな。僕が泊まる予定のホテルは藤沢にあるので(鎌倉のホテルはほぼ満室だったので…)、江ノ電でのんびり藤沢に行こうと思った。まだホテルに篭るには少し時間が早かったけれど、今日はちょっと疲れたので早めにホテルで休みたかったので…
 

老舗、『館 浅羽屋』。
うなぎと天ぷらが自慢の名店です。
中途半端な時間なので、店内はガラガラですけど。

  

ジャ〜ン!うなぎの蒲焼〜!
味はさっぱりしてて、ホントに美味いんだよ〜♪
肝吸いも付いてます。至福♪

  

…どうなんだ?このキムチは…
僕はもともとキムチってあまり好きじゃないのだ。
臭いのキツい食べ物は総じて苦手。

  

いつの間にか鎌倉にはこの手の煎餅屋が増えた。
煎餅って鎌倉名物じゃなかったはずなのに…
確かに美味いんだけどさ。

  

やっぱり鎌倉名物といえば、これでしょ〜。
ときどき食べたくなるオーソドックスなサブレ。
卵の風味がイイのだ。ついつい買っちゃう。

  

 江ノ電――僕がこの世で一番好きな電車だ。住宅の中や街の商店街を路面電車のように走る単線の電車は、車窓からの眺めも車内もどこかのんびりとしている。稲村ガ崎から江ノ島に掛けて海が見えて来ると、わけもなくワクワクするしね。
 鎌倉から江ノ電に乗って、そのまま終点の藤沢まで行こうと思っていたのだが、何となく江ノ島の駅で途中下車してしまった。
 江ノ電・江ノ島駅から江ノ島まで続く道を歩き、江ノ島大橋の手前まで出てみたのだが、はたと「こんな時間に島に渡ってもなぁ…」と思い直し、そのまま小田急の片瀬江ノ島駅に進路変更し、小田急線で藤沢に…って、これじゃあワザワザ江ノ島で途中下車した意味が無いじゃん!
 でも、夜の暗い腰越の海岸に思った以上の人影があったのにはちょっとビックリ。カップルだけじゃなく、家族連れの姿まであって、「一体何してるんだろう?」と訝しむ僕。真っ暗な海に向かってカメラのシャッターを押してみたが、当然撮れたのは黒一色の画像。うっかりフラッシュを焚いちゃったものだから、海岸に居る人たちから鋭い視線を浴びてしまった。ま、暗かったから僕のことはあまりよく分からなかったとは思うけど。
  

激しくピンボケしてますね。
江ノ電の車窓から撮った江ノ島です。
だからピンボケしてるんだよ(←言い訳)

  

江ノ島に続く道にはラーメン屋が増えた。
その分、みやげ物屋は減少傾向。
これもやっぱりラーメンブームの成せるワザ?

  

遊戯場。目が覚めるような極色彩。
射的って意外と燃えるんだよなぁ。
大した景品は無いのにねぇ。

  

小田急の片瀬江ノ島駅。
…いつ来ても、この駅はかなりヘンだと思う。
ライトアップされるとさらにヘン。

  

帰路                  順路