アイアン・メイデン
 
 
 さて、九段下から神保町に歩を進めていくと、古本屋が建ち並ぶ“神田古書店街”と呼ばれる一帯に出る。
 僕がはじめて神保町に来たのは、確か高校生の頃だったと思う。都営地下鉄の“神保町駅”のすぐ上に『岩波ホール』というところがあって、そこで上映されていた『パパは、出張中!』という映画を観に来たのだった。
 その映画は、タイトルのイメージとはかなりギャップのあるヘビーな内容で(『岩波ホール』ってこういう映画が上映されていることが多いんだけど…)、観終わった僕は、そのままの重たい気分で家に帰るのは辛かったので、ちょっと神保町界隈を歩いてみようとフラフラ彷徨ってみると…何か楽しいじゃん、ここ!古本がいっぱいあってさぁ、と。
 で、それ以来ちょくちょく足を運ぶようになった。
 古本以外にも、『三省堂書店』だとか『書泉グランデ』なんていう普通に新書刊を扱う本屋もあって、本好きな人なら間違いなく一日ホクホク気分で過ごせる場所なのだ。
 …でもね、僕は最近あまり本を読まなくなった。学生の頃は本を読むのがかなり好きだったはずなんだけどなぁ…
 
 久しぶりに来た古書店街は、それほど昔と変わっていなかった。ただ、料理屋さんが増えてるなぁ、と思うぐらい。
 僕は通りを歩きながら、店頭でワゴンに積まれた古本をパラパラめくってみたり、店内に入って興味の引かれた本を斜め読みしたり、かなりゆっくりと本屋巡りをして周った。
 “あのねのね”とか“ツービート”とかのタレント本とか、もう名前さえ記憶から消え去っていたアイドルの写真集とか、かなり恥ずかしい本が大量に発見できたりするのも、何だかワケもなく楽しい。しかし、どうしてこの手の本って、時間が経つとこんなにトホホな感じが際立っちゃうんだろう?鈴木健二の『気くばりのススメ』とかさ、ダン池田の芸能界暴露本とかさ。その後の著者たちの末路を知っているだけに、トホホ感炸裂しちゃうよなぁ。
 …って、べつに僕はタレント本を見に来たわけじゃないんだけどね。
 
 靖国通りに面したこの“古書店街”から一歩裏の道に出ると、そこは“すずらん通り”。
 この通りには、本屋ばかりじゃなく、学生やサラリーマンを対象にした低料金の料理屋さんが何軒かある。
 ここで僕が一番好きなのが『キッチン南海』という定食屋だ。このお店は、たぶん結構有名な店だと思う。いつも店内はお客さんでいっぱいだし。
 『キッチン南海』の名物(?)は、“カツカレー”。ここのカツカレー、僕は大好き♪
 ちょっと辛目の黒っぽいルーと、サクサクに揚がったカツの相性がバツグン♪\650という価格も魅力♪おまけにボリューム満点♪
 で、この店は“生姜焼きセット”というのが得意技。“生姜焼きとカツカレーセット”とか、“生姜焼きとクリームコロッケとライスのセット”など、何かと生姜焼きが付いてくる。で、値段はほとんど\700。これはかなりお得♪
 …でも、この生姜焼きって、タマネギが入ってるんだよなぁ。なので僕はちょっと…
 とにかく、値段も安いし味も良いしの人気店なので、相席はまず確実。お世辞にもキレイでオシャレな店、とは程遠いけど、ここは個人的にかなりオススメ!

 カツカレーで胃袋を満たし、僕は神保町から“御茶ノ水駅”方面に向かう。
 

歴史を感じさせる建物が。
ちょっと一風変わったテナントも多く入居してる。
“速記”とか“タイピング”とか…

  

いかにも!な古書の数々。
どれも明治時代の書物。ボロボロですけどね。
一冊1000〜2000円也。

  

神保町・古書店街。
140店以上の古本屋さんが軒を連ねる。
本の虫にはまさにパラダイス!

  


店ごとにそれぞれ得意なジャンルがあるみたい。
ここは一般的な文芸書が多いお店。
少し色褪せた本の背がギッシリと。

  


ここは映画・音楽などの芸能ネタに強い店。
若かりし頃の高倉健&富士純子。
どちらの雑誌も1万円以上の高値が!

  

看板さえもアートな世界。
洋書を扱う店もたくさんあります。
ぜ〜んぶ外国語なので読めませ〜ん。

  

『地球の起源(原題:ORIGINS)』から、
『ガンダイジェスト(原題:1998GUN DIGEST)』まで。
バラエティに富んだ洋書の数々。

  

黄色い札が張りまくってある。
これまた古本屋さんならではの味わい。
『現代文学大系』は全102巻セット!買う人いるの?

  

1本裏に入ると“すずらん通り”。
喫茶店や軽食屋などが多い場所です。
値段が安くて重宝しますよ。

  

“ロザリオ”だけに、純喫茶です(^_^;)
『さぼうる』とか『蔵』とか、
独特の雰囲気を持った店があちこちに。

  

ここは個人的に一番のオススメ!
安くてボリューム満点の『キッチン南海』♪
いつも混雑してます。超人気店(?)。

  

神保町から御茶ノ水駅にかけては楽器屋も多い。
バンド野郎御用達か?
♪リッケン620頂戴〜♪と歌うは椎名林檎。

  

 神保町方面から御茶ノ水へ抜ける途中に、全国的に有名なかの『明治大学』がある。
 以前、高校生だった僕がこの大学の前(横?)を通り掛かると、校舎の門に大きな手書きの看板なんかがバ〜ンと立ててあって、「何だか安保闘争そのまんまみたい…大学って、どこもこんな感じなんだろうか?」と少々不安な気持ちになったりした。
 しかし!明治大学は何だかビックリするぐらい様変わりしていた。“リバティータワー”なんていう「これが校舎なの?!」と開いた口が塞がらなくなるような、バカでかい高層ビルディングが聳え立っていた。
 
 その“リバティータワー”の隣りの隣り辺りにある“大学会館”という建物の中に、3つの博物館がある。
 『刑事博物館』、『商品陳列館』、『考古学博物館』。いずれの博物館も入場無料らしい。
 『商品陳列館』は、日本各地の工芸品などが陳列してある比較的小さな展示室。
 『考古学博物館』は、土器や石器、埴輪や土偶などを展示している。無料でこれだけの展示物を観覧できるのはちょっとスゴイ。ボランティアの人たちが説明と案内をしてくれるので、考古学に疎い人でも安心。
 …でも、ここで一番スゴイのは、なんと言っても『刑事博物館』だろう。

 『刑事博物館』は、主に江戸時代の捕物関連の小物―― 十手とか呼子とか、時代劇でおなじみの品などが展示してあるのだが… 
 それ以上にここの目玉になっているのは、“拷問&処刑装置”だと思う。

 博物館に入ると、いきなり江戸時代の捕物を描いた浮世絵タッチの絵がお出迎え。切断した首を小脇に抱えた賊が、屋根の上で捕まらんとする場面を描いた絵など、のっけから怖さ大爆発!
 BGMなど一切ない静まり返った館内には、この類の残酷絵がいくつもある。何だかひどく禍々しい雰囲気に包まれる。
 でも、そんなの比にならないぐらいに強烈なのが、なんと言っても“ギロチン”や“磔(はりつけ)台”などの怖〜い器具を復元した展示物。
 …よくもまぁ、こんなものを復元しようなんて気になったもんだ、と呆れるやら感心するやら。
 でもさ、犯罪抑止力という観点から言えば、こういう拷問&処刑のやり方ってのも、それはそれで効果的なものなのかもしれないねぇ。
 “無期懲役”とか“死刑”とか、何となくピンと来ない(僕らの日常とは遠い)気がする言葉で指し示されるよりも、「人を殺したら火あぶり!」とか「汚職事件を起こしたら石抱かせ!」などと宣告されたほうが分かりやすくて説得力があるように思うんだけど…
 もしも、計画的に何かあくどいことをしでかそうとしている人の脳裏を、一瞬『鉄の処女』の姿がよぎったりしたら…ひょっとすると思い留まる人も居るんじゃないか?なんて考えたりして。
 本来、処刑ってある意味“見せしめ”だもんなぁ。今みたいに、僕らの知らないうちにいつの間にか刑が執行されていて、夕方のニュースか何かで「今日、○件の死刑が執行されました」なんて事後報告されても、「ふ〜ん…」と思う程度で終わっちゃいかねないし。
 
 し〜んと静まり返った館内に、一組のカップルが入ってきた。
 「…ねぇ、ここ、怖いところなんじゃないの?」とひそひそ声で訊ねる女の子。
 「…うん、そうかもね」と答える男の子。
 そうだね、ここは確かに怖い。こんな拷問装置や処刑装置を考案しそれを実践した人も怖いし、こんな酷い仕打ちを受けなければならないほどの犯行を犯した人も怖い。
 …結局、怖いのは人間だ、ってこと?
     

明治大学の“リバティータワー”。
僕が昔来てた頃にはこんなの建ってなかった。
くすんだレンガの校舎があったはずなんだけど…

  


これが『刑事博物館』だ!
CRIMINALってことは…厳密には“犯罪”では?
でも、展示物はそれ以上に物騒な感じ…

  

右奥にあるのは、切り落とした首を置く台。
長いクギみたいなのが出てて、そこに首を刺して…
手前のは、人を中に入れて土に埋める拷問用。
真ん中から首が出るようになってて、
ノコギリで斬るらしい。…怖い。

  

これは…ご覧の通りです。
ギザギザのついた石板の上に座らせて、
膝には重石を乗せちゃうヤツ。
左には残酷絵風な解説図が…
僕だったら座る前に白状しちゃう。

  

これは、「火あぶりの刑に処す!」ってヤツですね。
すンごく怖い!
何気に足元に薪が積まれてるし…
よくもまぁ、こういう怖いことを思いつくもんだと思う。
しかも、こういうのは万国共通らしくて…

  

ドイツ製の「鉄の処女」。見た目がすでに怖い。
この「処女」の中に人間を閉じ込めます。
内部には串状の突起物がた〜くさんある。
と言うことは、当然中に居る人は…合掌。
…しかし、なんでわざわざこんな形にしたんだろう?
   

これはもはやスタンダードな「ギロチン」。
他の処刑&拷問装置に比べると、むしろ良心的。
一気にスパーン!だもんね。
ここで究極の選択!
あなたは鉄の処女がいい?ギロチンがいい?

  

来館記念スタンプ。
…ずいぶん可愛くなっちゃって。
でも、しっかり“突起物”も描写されております。
顔のところだけ見ると一瞬オランダの少女かと…
これでいいのか?記念スタンプ…