JAPANESE BEAUTY
  
 知人の結婚式が、東京・目黒にある『目黒雅叙園』で執り行われることになった。
 『目黒雅叙園』―― 名前は聞いたことがあったが、いったいどんなところなんだろう。その名前からして、何となく豪勢な場所なんだろうなぁ、とは想像出来るんだけど…
 そのことをとある知り合いに何気なく話したら、「あ、私行ったことあるよ、目黒雅叙園♪あそこはねぇ、すごいよ〜。きっとささやんは気に入るはず!」との答えが返ってきた。
 その知り合いの話を聞くと…う〜ん、それは凄そうだ。これはぜひこの目で確かめないと!
 僕は、“知人の結婚式”という本来の目的すら忘れ、“目黒雅叙園巡り”に胸を弾ませた。

 で、初めて乗り込む『目黒雅叙園』。結婚式の2時間前から現地入りして、気合い充分で潜入開始!
 その外観はとくにどうと言うことのない感じで、ちょっとガッカリだったんだけど…一歩エントランスに入ると、いきなり目に飛び込んで来たのが、絢爛豪華な“花魁行列”の日本画だった。
 …近づいてよ〜く見てみると、日本画のように見えた“絵”は、ちょうど“押絵”を模した立体的な“壁画”になっている。でも、なぜ結婚式場で花魁?
 エントランスからフロント(受付?)に向かう廊下に、こんな壁画が何枚も飾られている。浮世絵風な舞台設定に、どこか艶かしささえ湛える美人画の数々…ここ、ホントに結婚式場ですか?(一応、宿泊施設もありますが…)
  

『目黒雅叙園』。
屋根の上にはシャチホコのようなものが…
隣りに聳えるのは“アルコタワー”。

   

エントランスの向こうにいきなり登場。
色鮮やかな花魁行列!
結婚式場に、花魁ねぇ…

  

ズラ〜ッと並ぶ壁画。
もはや美術館を思わせる佇まい。
で、ぜ〜んぶいわゆる“美人画”。

  

“江戸美人・花見の図”(勝手に命名)。
左端の“柱”に注目。
西洋美術との融合?

  

芸者さんの置屋か?
状況がよく分からないんですけど。
とにかくこんな絵がいっぱい!

  

ね?立体でしょ?
漆喰か何かで作られているみたい…
押絵風に仕立てるのも、結構大変です。

  

 そんな“美人画の廊下”を進んで行くと、今度は両側に川と言うか池と言うか、とにかく水が流れている廊下がお目見え。まぁ、こういったホテルはときどき見掛けるので(とは言ってもかなり不思議な光景ではあるが)、「へ〜」なんて調子で歩いていると、ド〜ンと現れるヘンな“門”。門の上には“目黒雅叙園”という金箔で輝く文字が掲げてある。
 …何だか龍宮城みたい。
 
 門をくぐると、そこは一見豪華なホテルちっくな印象で、とくに変わったところはないように見えるんだけど…
 僕がフラフラと窓の外に見える庭園&池&滝や、クリスマスのデコレーションが施されたカフェテリアなどを眺めていると、一組のカップルが通り掛った。
 「あ!ちょっと、ここのトイレ入って行こうよぉ。面白いから♪」
 カップルの女が、そんなことを口走った。え?トイレが面白い?
 カップルの背中を見送っていると、彼らは漆と螺鈿できらびやかに装飾された“化粧室”へと消えて行った。僕もその後に続いて、“化粧室”へと入ってみる。

 …絶句。トイレの中に川が流れているじゃないか。おまけにご丁寧に“太鼓橋”まで掛かってる…
 円筒を中途半端にぶった切ったような斬新なデザインの男性用小便器もさることながら、“個室”のドアにも螺鈿細工が施してあるのにビックリし、さらに天井を見て唖然。金色に輝く天井には、これまた風情溢れる純和風な絵が…!
 たぶん、僕のこれまでの人生において、もっとも豪華なトイレとの遭遇である。僕は尿意さえ忘れ、しばらく天井を口をポカ〜ンと開けたままで鑑賞してしまった。
 用を足した後に手を洗う洗面台は、シックな光沢の漆塗り仕上げ。…この違和感は何だろう。
  

“美人画”が終わると、いきなり“橋”。
ここはジャパニーズ・テーマパーク?
NO!ブライダル・ホールです。

  

“渡来楽人その3”とかいう石像。
“その1”も“その2”も見当たらない。
どこへ行ったんだ?その1&その2は。

  

なぜか神輿。しかも両側に。
こっちは向かって右側の神輿たち。
…使われることがあるんだろうか?

  

『雅叙園』の正門(?)。
何だか凄すぎて笑える。
荘厳な気分に…ならないよ!

  

カフェテリアはクリスマスな雰囲気です。
そのカフェ越しに見える、滝。
ミス・マッチ感爆発!

  

団体の観光客のみなさん。
添乗員の説明を聞いています。
…添乗員、何を解説しているのやら。

  

“化粧室”です。
まるごと調度品、ってな勢いです。
金箔&螺鈿がまぶしい!!

  

化粧室の中の螺鈿細工。
こんな“美術品”がトイレの飾りに…
これぞ、贅沢の極み!

  

禁断の、男性用トイレ内部。
用を足すには橋を渡ることになります。
朱塗りの欄干が一際目に付きます。

  

トイレの天井。キンキラキン。
スゴイなぁ。この豪華さは。
たぶん世界有数の“豪華トイレ”♪

  

灰皿だって、螺鈿細工。
喫煙者にもやさしい雅叙園。
これぞ心のバリアフリー(愛煙家の勝手な言い分)

   

天井パート2。
これだけの絵を集めるのも大変だろうなぁ。
見てる人、少ないかもしれないけど(^_^;)

  

 さて、今度は庭園を見てみようかな。
 …しかし、さっきから気になってたんだけど、生のピアノ伴奏で山下達郎の『クリスマス・イブ』やワム!の『ラスト・クリスマス』がエンドレスで演奏されているんだけど、この空間にぜんぜんマッチしてません。
 庭園に出てみると、中途半端な日本庭園風。で、そこにはいくつかの“滝”まであしらわれていた。
 何人もの人が、この庭園で記念撮影をしていた。中には結婚式とはまったく関係ない人まで居て、はしゃぎながら記念撮影を楽しんでいた。
 …そう、ここって結婚式とは無関係な人がたくさん出入りしているのだ。驚いたことに、団体ツアー旅行の客までもが、この『目黒雅叙園』に訪れている。隠れた観光名所なのか?目黒雅叙園。
 
 庭園の片隅に、“胎内くぐり”と書かれた立て札があった。胎内くぐり?ちょっと行ってみよう♪
 立て札が指し示す順路に従って進んで行くと、何やら洞窟めいたものが。期待が高まる。その洞窟を“くぐって”行くと…
 な〜んだぁ。ただ単に“滝の裏側”に来ただけのことじゃんか。ちぇっ、たいしたことないなぁ。
 

吹き抜けのロビー。
鬱蒼と茂る木の向こうにはレストラン。
値段が高くて…入れませんでした。

  

水路にポインセチア。
クリスマスだねぇ〜。
無理がある!

  

庭園には滝が幾筋も。
まさに庭園!
しかし、どこから引いてるんだ?この水。

   

こういう池にはつきものですね。
丸々と太ってます。栄養たっぷり。
“鯉こく”って、食べたことある?

   

“胎内くぐり”?
大仏or観音像でも建ってるのか?
はたまた深〜い洞窟とか?

  

行く手にはわざとらしい洞窟もどきが…
何かとんでもない仕掛けが?!
期待は膨らむのだが――

   


滝の裏側に出ただけでした。
でも、滝ってマイナス・イオンが多いんでしょ?
健康にはいいのかもしれない。

   

エレベーター。
今日は婚礼関係者専用です。
扉は漆塗りです。ツルツルピカピカです。

     

 まだ僕の知人の結婚式まで、だいぶ時間がある。そこで僕は『目黒雅叙園美術館』にも行ってみることにした。
 正直言って、美術館になんてあまり興味がなかったが、ちょうどいい時間潰しになるだろうし。
 
 再びエントランスに戻り、式場とは反対側にあるエレベーターに乗る。このエレベーターに乗らないと『美術館』に行くことが出来ないのだ。
 エレベーター…これがまた異色。扉は螺鈿細工。で、エレベーターの中にもド派手な螺鈿細工。キョロキョロと螺鈿の輝きを目で追っているうちに、3階の“美術館入り口”へ到着。入場料は\500也。当然、美術館の中は全面写真撮影禁止!
 
 このとき、『目黒雅叙園美術館』では、“全龍福うるし生命展”という特別展示が開催中だった。この金龍福という人、何でも韓国の漆職人だか漆芸術家だかいう人物らしい。となると…当然、美術館の中も螺鈿&漆で溢れ返っている。
 トイレも螺鈿。エレベーターも螺鈿。美術館も螺鈿。螺鈿オン・パレード!めくるめく螺鈿の世界!
 …何だか少し食傷気味。確かに螺鈿はキレイだけど、こうも螺鈿尽くしじゃあなぁ…
 
 美術館を出ると、そのまま自動的に“ミュージアム・ショップ”とかいうところに入ることになる。
 ここではいろいろな小物類が販売されていたのだが、中でも僕の目を奪ったのが、『日本の美』とか何とかいうタイトルのハードカバーの本。
 この本には、ここ『目黒雅叙園』の中にある保存建築“旧目黒雅叙園「百段階段」”の写真がワンサカ収録されている。その“旧目黒雅叙園”っていうのが、想像を絶する豪華絢爛さ加減なのだ。今の雅叙園なんてメじゃないもの凄さ!
 昭和初期の大金持ちが、当時の一流の画家や彫刻家たちを駆使して、贅の限りを尽くして飾り立てた純和風な建築物…およそ庶民とはかけ離れた世界が圧倒的な様式美で具現化している、“旧目黒雅叙園”。すこぶるゴージャスな異空間…
 しかし、この“旧目黒雅叙園”と言うのは、年3回しか一般公開されないらしい。う〜ん、一度は見てみたい!
 ちなみに、一番近いところだと、2001年1月1日〜8日までの間、一般公開されるらしい。都合が合えばぜひ行ってみたいところなんだけど…
   

『美術館』への入り口、エレベーター。
これに乗らないと美術館には辿り着けない。
御影石&螺鈿のシックな輝き…

  


エレベーターの函内は、さらにスゴイことに…
全面螺鈿!キンキラキン!
虹色に包まれて…居心地悪し。

  

美術館の出口。
おお!鹿鳴館チックな階段だ!
天井&梁にも螺鈿細工が…しつこいかも…

   


昭和初期の建物から移築したのもらしい。
その建物『旧目黒雅叙園』、見てェ〜!
「今一番見てみたい建物」にランク・イン!

   


敷地内にある“お七の井戸”。
謂れは…長くなるので省略。
『夜桜お七』は坂本冬美。

  

こんなステージも開催中でした。
“カルーセル麻紀と妖しい仲間たち”。
…妖しい仲間たちって…

  

 ――さて、肝心の結婚式なんだけど、こちらはいたって普通の式場で、正直言って拍子抜けしてしまった。
 聞くところに寄ると、案の定、螺鈿&漆でトリップしそうな式場もあるらしいのだが、かなり料金が高いらしい。この日、この豪華な式場で挙式を挙げていたのは、中国系の一族らしい、という噂だった。中華料理店で一財をなした科挙か、あるいはチャイニーズ・マフィアか…確かにそう言われれば、廊下やロビーで中国語がやたらと飛び交っていた。
 …あ、そうだった。知人よ、結婚おめでとう!(とってつけたような…)
 「二次会はどうする?」と訊かれたのだが、参加するときっと三次会、四次会…と際限なく付き合わされるハメになりそうな予感がしたので、丁重にお断りさせてもらった。

 『目黒雅叙園』を後にして、すぐ目の前に伸びる“行人坂”という急な坂道を上っていくと、途中に『大圓寺』という寺があった。そこには“石像群”という文字が…石像の群れ。何だか凄そうだ。ちょっと寄ってみよう。
 境内に入ると、向かって左手に一瞬ギョッとするほどの石像が、どえ〜っと並んでいる。
 この石像の群れ“五百羅漢”は、何でも江戸時代にこの周辺で起こった大火事で亡くなった犠牲者を供養するためのものらしい。…事情を知ってしまうと、なおさら痛感する威圧感。ちょっと怖い感じ。
 
 行人坂を上り切った辺りで、何やら人だかりが出来ていた。何だろうと思って近づいてみると、そこに集っていたのは、どうやらみんなフィリピンなどの外国人。キャンピング・カーやテントなどで、露天商よろしくいろんなものを絶賛販売中の様子だった。安っぽい玩具、エスニックな屋台料理、怪しい家電製品…
 これもまた、東京らしい光景ではある。なんとも趣き深ひことよ――
 

『大圓寺』。
わりとひっそりとした佇まいですが、
その境内には…

  

石像がびっちり!!
圧倒されちゃう。
供養のためだと言われると、なおのこと…

  

五百羅漢の威圧感。
一体一体微妙に違ってます。
思わず、手を合わせちゃったりして。

   

“行人坂”は、かなり急な坂です。
かつてはこの坂の上から富士山が見えたらしい。
今じゃ、影も形も見えやしませんが。

  

坂の上に、外国人の露店が並んでいました。
集まるお客もみんな外国人。
得体の知れない食べ物、ちょっと興味あり。

  
 
 ついでに、『迎賓館』に行ってみよう。迎賓館…これまた高級感溢れる響き。“和の高級”から“洋の高級”へ。なんて和洋折衷な一日なんだ〜!(意味不明)
 
 で、その『迎賓館』なのだが、どうやら『庭園美術館』と一緒になっているらしい。…また美術館?芸術はも〜エエっちゅう感じなんだけどなぁ。しかも、“ルネ・ラリック展”。…ルネ・ラリックって、何者?
 でもご安心を!(←誰が?)美術館に入るには\1,200の入場料が必要なんだけど、庭園のみなら\100だけでOK!
 僕は迷わず\100のチケットを購入し、庭園に入ってみることにする。

 庭園は…ありゃりゃ、予想に反して純和風なんだけど…しかも、『迎賓館』の敷地内にはしっかりと“立ち入り禁止”の注意書きが…
 考えてみれば、確かに国賓をお迎えする格式高い場所である『迎賓館』。僕のような一介の小市民には立ち入ることなど不可能なのだろうけどさぁ…じゃあ、入り口にあんなどデカい看板出さないで欲しいよなぁ。要らん期待をしてしまうじゃないか。
 
 ところで、この『迎賓館』から恵比寿方面の周辺は、あの“シロガネーゼ”でお馴染み(?)の“白金台”。心なしか街を行く奥様方もワンランク上のハイソな雰囲気…だったかなぁ?よく分からないけど。
 ただ、さすが恵比寿〜広尾だなぁ、と思ったのが、やたらと外人さんが自転車で通りを走り回っている姿。白人・黒人・その他の人、とにかく多くの外国人と擦れ違う。やっぱり大使館がたくさんあるからなのかな?
 とある外国人が、背後から自転車でノロノロと走ってきた。前方には、白金の奥様“シロガネーゼ”たちの一群。
 チリンチリン、とベルを鳴らす外国人。シカトするシロガネーゼ。横一列“Gメン’75”状態で悠然と道を塞いだままだ。
 …おい!シロガネーゼ!道、開けてやれよ!
 

これが『迎賓館』だ!
ラーメン屋ですが。
本物の『迎賓館』の真向かいにありました。

  

で、こっちが本物の『迎賓館』でした。
『庭園美術館』と併設している模様です。
庭園&美術館…まだ続くのか?

  

入り口からズンズン奥へ向かう。
何やら建物が見えて来ました。
あれが“迎賓館”か?!

  

…こっちは『庭園美術館』のほうでした。
何でも皇族の邸宅をそのまま利用したとか。
…こんなところ、僕じゃ一生住めないだろうなぁ…

  

さらに奥に行くと、広場や日本庭園があります。
これは日本庭園風なところ。
カモが悠々と泳いでいました。

  

これ、なんだろう?
庵みたいですけど…閉まってました。
休憩所か何かになってるのかな?

  

『迎賓館』です。たぶん。
食堂しか見えませんでした。
ちょっとぐらい、入れてくれてもいいのになぁ。

  

カモさん。
小さなもみじの浮かぶ水面に漂う。
…これ、カモだよね?…それともガチョウ?