Retrospective

 ちょっと野暮用があって上野まで出て来たついでに、久しぶりに浅草にでも寄ってみようかなぁ、と思い立ち、フラッと車を走らせた。…が、この日が三連休の最終日だということをすっかり忘れていた僕。“浅草寺”周辺には人がワサワサと群がり、駐車場という駐車場はほとんど満車状態。結局、浅草寺の近くでは車を停められず、西浅草の100円パーキングまで流浪させられてしまった。
 …西浅草・松が谷といえば、“合羽橋道具街”だ。この際、浅草に向かう前に少し覗いて行くことにしよう。
 
 “合羽橋道具街”――主に業務用の厨房用品や食器、看板などを扱う店舗がズラリと並ぶ、普通の商店街とは一味違う商店街。東京の“下町”と呼ばれる地域には、今もなお“職人の町”を冠する場所がしっかりと残っている。江戸時代から続く物造りへの熱意と拘り…ってまぁ、果たしてここ合羽橋が正統な職人の町と言えるのかどうかは、ちょっと自信が無いんだけど(あくまで“問屋街”だからさぁ)、とにかくこういう商店街が存在している、というのがいかにも下町っぽい。
 たびたび言ってることだが、僕は元来陶器とか漆器とか、そういうものにあまり関心が無い。やれマイセンだ伊万里焼だと言われても「ふ〜ん…」ってな程度の感想しか持てない門外漢である。そんな僕がこの合羽橋で最も興味を惹かれる店、それは…そう、“食品サンプル”の店!食べ物屋のショーウィンドウなんかに置かれている、あの料理の見本品ね。
 この商店街には、僕が知っている限りでも『東京美研』『まいづる』『佐藤サンプル』など、食品サンプルを扱うお店が何軒か在る。どこの店も品揃えや価格にはそれほど差は無いが、一般の人が購入しやすい小物類にオリジナリティを持たせているみたい。たとえば、寿司ネタを時計の文字盤にくっつけてみたり、ピザがパズルになってたり、といった具合。
 それにしても、これらのサンプルはホントに良く出来てる。中にはどう見ても本物にしか見えないものまである。とくに、魚介類のリアルさは感動ものだ。生の魚も焼き魚も、言われなければ絶対本物だと思ってしまうほどに精巧に作られている。その素晴らしさ故に思わず「欲しい!」と値段を見ると…これが気軽に買うような価格じゃないんだよねぇ。ちなみに、真鯛は\28000、牧志の市場でおなじみの青い魚・アオブダイに至っては、なんと\85000!とてもじゃないが手の出せない金額だ。
 それじゃあ手頃なところでキーホルダーでも買おうかなぁ、なんて思うと、これも結構馬鹿にならないお値段。だって、レモンの輪切りが1枚ついてるだけのキーホルダーが1000円強ですよ。手に取ってはみたものの、ちょっと考えちゃうよなぁ。
 …で、結局は何も買わないで店を出てしまうわけだ。とりあえず、見るだけで満足しちゃうしね。
 
 食品サンプルを指を咥えて眺め倒し、僕は浅草へ移動する。寺社があちこちに在る“菊水通り”を抜け、“国際通り”へと出る。
 

“合羽橋道具街”の浅草通り側入り口。
『ニイミ洋食器店』のビル。
…やっぱインパクトあるわ。

  

基本的に日・祝祭日に休みの店が多い。
各店の軒先に女の子のカッパ(?)の店札が…
空飛ぶおかっぱ頭のカッパ、みたいだけど。

  

これはとある店の脇で見つけた味のある古看板。
タバコの“ピース”なんかが描かれてる。
イイねぇ、こういうの。

  

のれん、提灯、看板を扱う店も多い。
食器や漆器、調理用具、家具などを扱う店も多い。
さすがに業務用チックな品揃え。

  


これは食品サンプルを扱うお店。
こういう店も何軒かあって、いずれも大人気!
見てるだけでも面白い。

  

ソフトクリームにパフェなどなど…
ショーウィンドウでよく見かけるヤツだよね。
これらはだいだい1体\6000〜7000ぐらい。

    

どれも実に精巧&リアルに作ってある!
とくに魚介類や肉などは本物と見紛うこと必至。
う〜む、腹が減ってきた。

  


鶏の丸焼きだ〜♪俺は鶏が好きだ〜♪
これはたぶん万単位の価格がついてるだろうなぁ。
ちなみにあの“アオブダイ”は\85000だ!!

  


手頃なキーホルダーや携帯ストラップも売ってますよ。
…でも、やっぱり値段は高め。
しかし、売れてるんだよねぇ。

  

合羽橋だけに、河童。
何だか情けない表情(^_^;)
合羽橋には河童伝説もあるらしいよ。

   

この界隈はちょっとしたラブホテル街だったりもする。
果たして繁盛してるのどうかは知らないけど。
お寺参りがてら、ちょっと寄ってく?みたいな。

  

と同時に小さなお寺や神社もたくさんある。
これも寺。普通の民家っぽいので見落としそうな…
菊水通り界隈にて。

  

 僕はどうして浅草が好きなのか、その理由はかなりハッキリしている。以前、横浜・伊勢佐木町を徘徊したときにも触れたけど、浅草にはまだしっかりと“昭和の匂い”が残っているから。“浅草寺”と“仲見世”が浅草観光のメインなのは当然なんだろうけど、僕はそれよりも、その周辺にあるどこか時代から取り残された(或いは自らそれを選んだ)ような街並みに、心惹かれるのだ。
 何気なく路地裏を歩いていると、不意に『木馬館』の楽屋裏からギョッとするような舞台メイクを施した役者さんが飛び出して来たりする。パチンコ屋の前ではチンドン屋が客寄せをしている。一杯呑み屋では昼間からおじさんやおじいさんが焼酎を呑んで良い気分になっている。何故かチャリンコに乗ったおじさん達が我が物顔で通りを闊歩する。演芸場には出囃子が鳴り、スマートボールを弾く音が聞こえ、猿回しの芸人の呼び込みが響く。…こんな街、他にあるんだろうか。
 決して広くは無い浅草寺を取り巻く一帯が、まるごと昭和にタイムスリップしてしまったような感覚。綺麗で整然とした世界ではなくて、どこか混沌としていて、如何わしい匂いのする場所。
 …でも、こんな浅草の界隈も、ひょっとすると次第に失われていくのかもしれない。平成17年に“つくばエクスプレス”という新しい鉄道路線が開通するのを睨んで、沿線にあたるこの界隈にも整備や再開発の計画が持ち上がっている。例えば“五重塔通り”は近々“奥山おまいりまち”という、酷く媚びた名称になってしまうことが決定したらしい。ひらがな表記が実にいやらしいよねぇ。
 ま、それも仕方無いことなのかも。ここ最近の僕は、こういったことをあまり引き摺らないことにしている。街が変わっていく、というのは宿命みたいなものなんだろう。もちろん寂しいけど、それはそれとして受け入れて行かなくちゃね。
 
 夕闇迫る浅草の街で、僕はチンドン屋が奏でる昭和のヒット曲を聴きながら、ふと考える。残っていくもの、掻き消されていくもの、通り過ぎていくもの…言ってみりゃ、僕だって単なる“通り過ぎていくもの”なわけで、僕がどこへ行き、何を思おうが、それはほんの埃程度に小さいものなんだろう。その程度のことに捕らわれるというのも、実にマヌケな話だ。人の拘りなんて、鼻くそにもなりゃしない。そんな気がする。
 だから、もう少しユラユラと生きてみたい、と思う今日この頃。…べつに後ろ向きな考え方じゃ無くてね。「こうでなくちゃいけない」とか「こうあるべきだ」という独り善がりは捨てて、もっと自然な心で日々を過ごしていけたらイイなぁ、と。
 そう簡単にはいかないだろうけど。
 

“浅草寺”の周辺をフラフラと散策。
「肉まん・シューマイ」は『セキネ』の看板。
ここの肉まん、タマネギ臭いのが個人的にちょっと…(^_^;)

   


“六区ブロードウェイ”。
映画館、演芸場などが何軒か並んでいる。
かつての日本一の繁華街。

  

今年、約30年ぶりに復活した『大勝館』。
ヌード劇場『ロック座』の隣りにあります。
大衆演劇。何とも浅草らしいよね。

   

懐かしの“スマートボール”が楽しめる店。
ガラス玉を弾いて穴に入れる素朴なゲーム。
子供の頃にデパートの屋上とかで遊んだなぁ。

     

『浅草新劇場』は任侠物なんかが中心。
日活・東映・東宝・松竹、会社の枠を越えて上映。
裕次郎・勝新・藤田まこと…濃い面々。

  

都市型(?)遊園地『花やしき』。
僕が子供の頃は入園無料だったんだよねぇ。
今でもそこはかとなくレトロな趣きが…

  


“初音小路飲食街”の藤棚。
昼間から路上で酒を呑むおじさんたちが居る。
でも、何だか人情味溢れる雰囲気。

  

その初音小路の店舗裏。
向こうに聳えるのは『浅草ビューホテル』。
古い街ならではのこのコントラスト。

  

“五重塔通り”には『木馬館』がある!
近々“奥山おまいりまち”と改名&整備されるらしい。
…センス無さ過ぎだろう、それ。

  

それにしても浅草ってディープな一杯呑み屋が多い。
この辺りも昼間から営業する呑み屋が軒を連ねる。
外から店内が丸見えなのも面白かったり。

  

“ロックフラワーロード”から見た『大勝館』のビル。
年季の入ったオブジェがてっぺんに立ってた。
夜になると光ったりするのかなぁ?

  

ハヤシライスが有名な『ヨシカミ』。
何だかいつも満席なんだよねぇ、ここ。
そんなにうまいのか?謝ってるし。

  

“たぬき通り”には12体のたぬきの像がある。
で、毎月それぞれのたぬきの縁日が開催されるらしい。
たぬき通りはご利益通り…

  

で、今月はこの“愛情たぬき”の縁日がある。
このたぬきのご利益は…縁結び?
背中にキューピッド風な羽根が生えてるし。

   

“仲見世通り”はいつも人でいっぱい!
この日は連休最終日だったから余計にスゴイ。
浅草ってホントに人気があるんだねぇ。

  

仲見世を抜けたすぐ脇に鎮座する“二尊仏”。
通称“濡れ仏”ともいうらしい。
高瀬善兵衛さんが江戸時代に建立。

  

“浅草寺”の本殿と境内。
老若男女、外国人も皆さんこぞって参拝してます。
それにしても、おみくじコーナー多すぎじゃないの?

  

そろそろ夕方だというのに引っ切り無しの訪問客。
江戸情緒ってヤツに惹かれるんだろうか。
(僕が浅草が好きな理由はちょっと違うんだけどね)

  

“二天門”から境内を脱出した。
…そういえば“雷門”には行かなかったなぁ。
ま、イイんだけど。

  


その“二天門”のすぐそばにある消防署。
これであなたも即消防士!
…で、隣りの女性は消防署の職員さん?

     

あ〜あ、テントに落書きされちゃって…
と思ったら、これがちゃんとした店名でした(^_^;)
何もスプレーで書くこたぁ無いだろうに。

  

黄昏迫る『花やしき』。
子供たちの歓声と遊具のノイズが響きます。
賑やかな街なのだ、浅草って。

  

ちょうど六区の辺りからチンドン屋の奏でる『銀座カンカン娘』が聴こえて来た。
そんな音色が似合ってしまう浅草。
これからもずっとそうであって欲しいと思うんだけどなぁ。

 

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