餓鬼ノ集イシ北ノ霊園
  

 “赤羽”と言えば、何と言っても“エレファント・カシマシ”だ。
 彼らが今のようにメジャーな存在になる直前に出された『東京の空』という名盤。このアルバムのライナーノーツを、バンドの要・宮本浩次は、彼の出身地である赤羽のすずらん通りの喫茶店で書いた。

 「あなたは故郷の空をほのかに懐かしく、愛らしく感じる瞬間があるかもしれない。俺の目に写った今日の赤羽の空は恰(あたか)もそんなようなものだったのだろう。」
 
 彼は赤羽を指して“かくもちんけな町”と卑下して語ったが、果たして赤羽は、本当にかくもちんけな町なのか。
 否。赤羽はとっても面白い、なかなか刺激的な街なのだった。
 …とか何とか気取って書いてますけど、僕がこの日赤羽を訪れた最大の目的は、ズバリ“『赤羽霊園』を見る!”という、極めてミーハーなものだったりするわけね。
 『赤羽霊園』のことは…まぁ、とりあえず置いておくことにして、僕は、僕と同様この赤羽に関心を寄せている友人と一緒に、昼下がりの赤羽駅東口界隈をほっつき歩くことにした。

 赤羽駅は、かなり立派な駅だ。駅ビルの中にはユニクロなんかもテナントとして出店しているし。駅周辺も大変活気付いている。商店街や歓楽街がゴチャゴチャとひしめき、「なんか都会って感じじゃんか〜」と思ってしまうほど。
 しかし、その商店街や歓楽街の猥雑とした雰囲気は、赤羽の街に得体の知れない怪しさとパワーを与えているように思う。
 例えば、駅のすぐそばにある“一番街”という商店街。この商店街の中には、生活雑貨や衣料品、食料品などの店はもちろんのこと、なんとも味のある老舗の料理屋や小鳥屋、さらにはハングル語の看板が目を引く韓国食材の店などもある。おまけに呑み屋なんぞもあったりする。だから、商店街を行き交う人々も実にバラエティーに富んでいる。普通の買い物客に混ざって、昼間っからすっかりいい気分でほろ酔いな人や、真っ赤なベルベットのパンタロンで颯爽と歩くフィリピーナ、ついでにこれまた近くに隣接する小学校の児童たちまでもが闊歩する。
 この混沌とした感じが、何とも気持ちイイのだ。
 
 しかし、東京の駅周辺と言うのは、とかくゴチャゴチャと店や道路が乱雑に配置されていて、なんとも迷いやすい。赤羽もご多分に漏れず、駅の周りは雑多に複雑になっていて(僕の方向感覚の弱さ、のせいもあるんだけど)、甘く見ているとエライ目に遭う。
 “一番街”界隈はちょっとヘンなふうに入り組んでいて、フイッと脇の道に曲がると“OK横丁”だとか“赤羽なんとか商店街”とか、まったく別の商店街になってたりする。方向感覚が少し狂っちゃったような、「…ここ、どこですか?」な状態に陥りやすい。
 実際僕と友人は、適当にグルグルと周っているうちに、だんだん自分の居る場所が分からなくなってしまった。
 「頭がウニ」な感じになってしまった僕らは、一旦駅前の広い道路まで出て、その通り沿いにある『ゆうひや』というラーメン屋でラーメンを食べた。結構美味かった。店内には有名人のサインがたくさん貼られていた。…ひょっとして有名な店なのかなぁ?
 「さ、腹も満たされたことだし、それじゃあそろそろ『赤羽霊園』に行ってみようか」
 

赤羽駅東口から“一番街”を見る。
“一番街”はとても賑やかな商店街。
何だか妙な力が漲る場所。

  


食料品や生活雑貨はもちろん、
創業50年を超える老舗も共存するカオス。
呑み屋までもしっかりあります。

  


“1番街シルクロード”。このネーミング、イイねぇ。
何だかいろんな匂いが混じってる。
ちょっと市場チックな感じがしないでもない。

  

いろんな業種の店がひしめく。
仏具屋さんやおでん屋さんも…
かなりディープな印象。

  

ハングル文字もあちこちに。
期せずしてアジアン・テイスト!って感じか?
…僕はキムチって苦手(^_^;)

  


呑み屋が軒を連ねる“OK横丁”。
昼間は閑散としてますけども。
しかし…何がOKなんだろう?
  

飲食店街の裏路地。
狭い通路に生活感が滲みます。
厨房での夫婦喧嘩が聴こえてきたり…

   

一番街のはずれにある小さな公園。
サラリーマンが細い鉄棒の上で爆睡中。
…外回りの休憩?酔っ払い?

  

 『赤羽霊園』…とは言っても、大きな公園墓地があるわけじゃない。
 “一番街”を抜けたところにぽつんと建っている、一目見ただけで「怪し過ぎ!」と思わせる強烈なインパクトを与える、謎めいた居酒屋。それが『赤羽霊園』なのだ。
 
 この居酒屋に入ったことのある人の証言を聞くと…
 「店に入るとフランケンシュタインみたいなのが襲い掛かって来る!」とか、「店の天井から生首やヘビが落ちて来る!」とか、「“髪の毛”だの“ポコチン”だの、ヘンな料理がたくさんある」とか、「BGMはお経」とか、まぁとにかく“かなり特殊な”居酒屋であることは間違いないらしい。
 僕と友人が『赤羽霊園』を訪れたのは昼間だったので、当然店は開店前。僕らは『赤羽霊園』の周りをウロウロと徘徊し、ドアのガラス越しに店内の様子を盗み見たりした。
 店の外装には、残酷絵や幽霊画などが掲げられ、ちょっと笑っちゃうぐらいにチープな人形が「飲み放題」と書かれたのぼりの先からぶら下がっていたりする。…素晴らし過ぎ!!
 「…何か、“手”が見えるね、ドアのところに…これが例の“フランケンシュタイン”なのかな?」
 「上の看板に“天空より生首落下 君は絶えられるか!”って書いてあるよ」
 その看板の脇には、マネキンの頭部を2つ、まるで“アシュラ男爵”のように貼り付けた“生首”が吊り下げられている。
 …これって、お店の人は冗談でやってることなんだろうか?それとも、まさか本気で客を怖がらせようとしているのか?何しろ“お化け屋敷居酒屋”がキャッチコピーみたいだし。それも、かなりショボいオバケ屋敷…学園祭とかでお目に掛かるような類の…
 「でもさ、これって、別の意味でちょっと入るの怖いよねぇ…」 
 「そうだね、お店の人とか、まともな対応をしてくれるんだろうか…?」
 客を怖がらせることに一生懸命で、料理のほうはさっぱり…とか言うんじゃあ、なぁ…。かと言って、お店の人がみょ〜に親切だったりヤケにフレンドリーだったりするのも、何かちょっとイヤかも…
 でも、いつか絶対『赤羽霊園』に入ってやる!で、“飲み放題”しながら“河童の肉”だの“地獄料理”だのを食ってやる!…でもね、“ポコチン”っていうメニューの正体は、大方推測がつく。たぶん、ウインナーか何かでしょ?こういうのは、ワリとありがち。
 

『赤羽霊園』全景。
怪しいオーラがビッグバン!な状態。
店自体は結構狭そう。

  

…だそうです。
気をつけないとね。
店内で心臓止まったら、営業停止になっちゃうし。

  

…耐えられそうですか?
僕は違う意味で耐えられないかもしれません。
爆笑したら、追い出されますか?

  

歌い放題、飲み放題で男\2,500。女\2,000也。
歌うって、何を?まさかお経を?
『ゲゲゲの鬼太郎』とか?

  


プチ幽霊みたいなのがブラ〜ンと。
よ〜く見ると、案外カワイイ人形だったりする。
雨ざらしなのかなぁ?ちょっと気の毒かも…

  

変わってこちらは“LaLaガーデン”というアーケード。
旧・スズラン通り。
エレ・カシのファンだったら憧れの地(?)。

  

『実験キャバレー劇場・ハリウッド』。
“実験”って…?
総面積600坪の巨大キャバレーです。

  

これは赤羽のお隣“王子”の飛鳥山付近。
都電が車と一緒に信号待ちしてます。
飛鳥山界隈もいつか訪問しよう♪

  

 しばらく赤羽の街を彷徨って、そのまま僕らは荒川土手に出てみた。
 荒川土手、と言えば、やっぱり“金八先生”でしょ〜。とは言っても、実際に金八先生の撮影が行われていたのは、もっと東側の足立区の土手だったんだけどね。
 僕らが訪れたのは、赤羽よりもさらに西側にある“浮間”という地区の土手だった。しかし、荒川土手ってかなり立派だ。堤防を兼ねた(?)遊歩道は、地面よりやや高い位置に作られている。かつては暴れ川だったという荒川ならではの光景、って感じ。
 遊歩道には、散歩する人、ランニングやウォーキングしている人、犬の散歩をしてる人、などなど、いろんな人が思い思いの“荒川土手”を楽しんでいた。休日になると、家族連れやカップルの姿も多く見かける。ゴルフや釣りなんかをしに来る人も居るみたいだしね。
 「いやいや、何か桜中学の生徒がドカドカと押し寄せて来るような雰囲気だねぇ…」
 「ちょっと訛ってるお巡りさんとかね。ついでに赤木春恵も。そう言えば、名取裕子と結婚したんだっけ?金八先生って…」
 しばらく“金八っつぁん談義”をしていた僕らだったが、僕も友人も、実は金八先生シリーズがあまり好きじゃない、という事実が判明。ひとしきり「金八先生シリーズのどこが嫌いか」というテーマについて語り合うこととなった。
 「…でもさ、これだけ嫌いだっ、て言ってるのに、なんで俺たちこんなに金八関係に詳しいんだ?」
 「う〜ん、ホントだよなぁ。結局よく観てんじゃん、俺たち…」
 
 静かな荒川土手で、芝生に腰掛けて金八先生について語り合う。う〜ん、青春!って感じ♪肩組んで歌っちゃおうかぁ?
  ♪愛は奇跡を〜信じる力よぉぉぉ〜
 …それは『スクール・ウォーズ』。
 

川越しにぼんやり浮かび上がる埼玉・川口の街。
結構都会なのだろうね、川口市。
行ったことが無いのでよく分からないですけど。

  

♪マラソン人(びと)が〜(『恋人よ』by五輪真弓)
“マラソン人”って、言わないよね、普通。
って、荒川とは何の関係もないです。