海千山千 〜海の巻
   
 しまぶくろさんの家がある集落から少し下へ降りていくと、昔からある古い集落があって、浜辺に続いている。


辺野古の海。
スカッと抜けていて気分がいい。

  


こっちに見える“キャンプ・シュワーブ”。
気に入らないけど一応撮っておく。
    
 やっぱいいやね〜、海は。気持ちが広々するねぇ。
 「でもね、キャンプ・シュワーブからヘンなものが垂れ流されてるらしいよ」と、しまぶくろさん。
 「ヘンなもの?…それってただの“ウワサ”とかじゃなくて、ホントの話?」
 「うん、ホントの話らしいよ」
 …それ、すげ〜怖いじゃん。なにを流してるんだ?キャンプ・シュワーブ。そもそも“キャンプ・シュワーブ”って、どういう意味の英語なんだ?
 
 しまぶくろさんは、キャンプ・シュワーブとは逆側の、こんもりとした森のようになっている場所を指差して、
 「でね、こっちはガイコツ島」
 「が、骸骨島?!」
 なんか『獄門島』とか『悪霊島』とか、横溝正史モノを彷彿とさせるネーミング。これまた怖い。
 「何で骸骨島なの?」
 「昔、お墓だったみたいで、人骨が出てきたんだって」
 ワオ!まさしく“骸骨島”!鵺(ぬえ)の鳴く夜は恐ろしい…。
 「じゃあ、誰かが見つけたんだ…人骨」
 「うん、外人が荒らしたりしたみたいで、骨とかが出てきたみたい…」
 アメリカン、まったく怖いもの知らずである。
 …なんか、心なしかその辺りから“おどろおどろ線”がモヤモヤっと…怖すぎだろ!!


おどろおどろ線のイメージ画像。
(山岸涼子『わたしの人形は良い人形』より)


誤解のないように、実際の眺め。
さらに右側に“ガイコツ島”が。

    
 しまぶくろさんは、そこから少し車で行った所にある、岬に案内してくれた。
 そこは、本当に静かで、沖縄らしい景色だった。


畑を抜けていくと、この景観に逢える。
ヘリポートが出来るとこの眺めともお別れ。

   
 「ここに来たのは久しぶりだね。昔、飼ってた犬が死んじゃって、それを埋めにきたとき以来かも…」
 「…ここ、土地の持ち主とかいないの?」
 「どうだろ〜?いるんじゃない?」
 「その人、ビックリするだろうね、ある日たまたま所有地を訪れたら、いきなり犬の骨が…」
 「ははは、…でも、ホントに滅多に来ないんだよね、ここ」
 「お墓参りとかに来ないの?」
 「うん、全然来てない(笑)」
 何年か後に、ここもひょっとすると“ガイコツの草原”とか呼ばれるようになるのかもしれない…。

 「じゃあ、“久志”に行ってみますか」
 しまぶくろさんが言った。
 僕らは車で西へ向かい、久志の集落を訪れた。

 久志の小学校の入り口に車を停めて、久志ビーチに行くことにした。
 はじめて来た久志の集落は、のどかにゆったりとした時間のなかにあった。


学校の前にあるガジュマルの樹。
こんなに間近にしげしげ見たのは初めてだ

    


樹の枝で子供が遊んでいる。
…何して遊んでるんだろ?

    


久志のビーチ。
キレイだねー。浜にはゴミがたくさんあったけど…

   


久志集落。
人気がなくて、なんだか時間が止まっているよう。

    


辺野古に戻って、川の下流から骸骨島方面を見る。
白い鳥が魚をついばんでいた。
次にここへ来るとき、この風景は残っているんだろうか…

      
 この日、しまぶくろさんは午後5時から仕事に行かなくてはならなかった。
 なんだかあっちこっち、のんびりとしたペースで案内してもらっていたので、僕は時間が大丈夫なのか非常に心配だった。
 しかし、しまぶくろさんは一旦辺野古に戻ってから、
 「それじゃ、次は“瀬嵩(せだけ)”を廻って、それから“多野嵩(たのだけ)”に行けるようなら行きましょう」と、提案した。
 僕が地図を見せてもらうと、多野嵩というのは、標高396mの山ではないか。
 「こんなとこに行って、時間大丈夫なんですか?」
 「うん、大丈夫大丈夫。…じゃ、行きますか」
 …そう、しまぶくろさんはウチナンチュ。マイペースな人なのかも知れぬ。
 僕は、しまぶくろさんの出勤時間が気になりながらも、お言葉に甘えて多野嵩に連れて行ってもらうことに。